跪き、裾に秘された脚を掬う。傷一つない足首が現れ、それを掴む己の手が容易く一周する。もう片方の手は湯に浸した巾を握っており、それを彼女の脚に宛てがって上下に動かす。黙々と、しかし最大限の注意を払って動かす己の頭上から、揶揄するような笑い声が降ってくる。
「誰も想像できないでしょうね。関羽様が女の脚を自ら拭いてくださるなんて」
つい、と滑らせた視線は彼女を捉える。目を細めて笑みを象るその顔貌は気性も相まって艶やかに映った。色鮮やかな衣をまとい、真珠を垂らす簪で飾り立て、酒にも似た香りをまとわせる。敗死した敵将の妻であることを忘れてしまうほど、名前という人間は何処までも酒毒であった。ふくふくと笑ってみせるその様にさえ何も言えず、出るは声なき声。
「―――ねえ関羽様」
嫣然と微笑んだまま上体を折り、袖から突き出た細い指が頬に宛てがわれ、さわさわとくすぐるように動く。羽の先で遊ばれているようであった。
「ほんとうにわたくしを願うのですか?」
兄者や翼徳には到底聞かせられない心中。本来の目的は兄者を輔けるための戦であった。敵将を討ち取ったのもそのため。だが己が今していることとこれからすることは、誰の耳にも下卑たものとして聞こえよう。それでも願わずにはいられなかった。酒毒に犯された頭を占めるは、彼女の甘やかな言葉と扇情的な仕草。律さんとした戒めは瞬く間に壊れてしまった。しなやかに伸びる指を掻き抱き、ぶつけるようにして腕へ閉じ込める。抵抗も見せずに落ちてきた花びらは、耳元で軽やかに笑みを転がした。
その花、毒につき