徐庶

「―――元直」

落ち着き払った低い声に振り返れば、そこには見知った二人が立っていた。

「孔明!士元!」

旧友との邂逅に喜び勇んで駆け寄る。

「どうしたんだい?二人して店を見に来るなんて珍しいね」

「毎日毎日つくえと睨んでいちゃ思索もままならないからね。無理言って連れて来たんだよ」

「そうか……。あ、今ちょうど旅人があそこで芸を披露しているんだ。二人もよければ見てみてくれ」

「お前さんは来ないのかい?」

「俺はこの後用事があるんだ。一緒できないのは残念だけど、感想聞かせてほしい」

「……彼女の家に行くのですか」

それまで静かだった孔明が口を開く。均一に伸ばされた目は内情を語らない。けれど長い付き合いゆえに、言わんとすることは察せた。

「名前ならきっと許してくれるさ。ほら、好物の饅頭も買ったことだし」

木箱を持ち上げてみせる。

「っと、そろそろ行くよ。いくら優しいと言えど、甘えすぎると怒らせてしまうからね」

「…………そうですか」

「二人に会ったこと伝えておく。ああ、そうだ。なんなら今度家においでよ。名前もきみたちと会うの久しぶりだから、喜ぶと思う」

「機会があればいずれ伺いましょう」

「ああ、待ってる」

言って、彼らと別れる。帰路を進む最中にも思い浮かぶのは家で帰りを待つ彼女のこと。怪我をしてしまった名前は、療養のために長く家にこもっている。飛び回るのが好きな彼女のことだ、きっと悶々としているに違いない。二人に会ったことも旅人の芸も土産にしよう。退屈している彼女は喜ぶだろう。いくらでも聞かせよう。何日も、何年でも。傍に居て、ずっとずっと。たとえ彼女が応えてくれなかったとしても。





独り占め

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