龐統

体を冷やすんじゃないよ、と言い残して旅立った老師が雒城らくじょうで流れ矢に射抜かれて倒れたと、帰還早々に劉備殿から教えられた。

「守れなくてすまない」

「そんな。何故殿が謝るんですか。主君のために散るは臣下の鑑。老師だって殿に謝ってほしいとは思ってないですよ」

「……すまない」

尚も沈痛な面持ちで謝罪する劉備殿。こういう時に老師が居てくれたら、と思う。誰かを慰めるなんて自分には荷が勝ちすぎる。

「やめてください。私に謝られても……困ります」

「……知っている。だが謝らずにおれんのだ。お前の師であり我が友でもあった龐統を失ってしまった。孔明にも面目が立たぬ」

滔々と垂れ流される劉備殿の謝意。そんなもの、下っ端に言ったってどうにもならないのに。下っ端の苛評なんて殿が気にすることでもないのに。深く項垂れる彼になんと言ってやればいいか逡巡するが、上手い言葉が見当たらない。それでも何故だか許す気にはなれなかった。ああ、老師に会いたい。





残された時間

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