関平

星空がよく見えるという穴場を友人から聞いた。これはぜひ関平と見るしかないと思い、鍛錬中だった関平の下を訪ねれば、意外にも彼は平服姿で出迎えてくれた。珍かな茶葉を入手したんだ、ともてなしたいらしい彼の意図を汲んで馳走に与る。喉を滑り落ちたお茶は臓腑に染み渡り、冬の寒さによって凍った指先をほぐしてくれた。美味しい、と素直に言うと彼は破顔する。その顔に胸がときめいたのは言うまでもない。

「意外だね。いつもは時間があればずっと剣振ってるのに」

「ああ。今日は、その、……用事ができたのだ」

言いづらそうに淀む彼を見て瞠目する。質実剛健でさっぱりした気性を持つ彼が言えないこと。ぴんと閃く。きっと女関係だ。他のことには白黒はっきりしている彼だが、こと女関係になると途端及び腰になる。彼に想いを寄せる者として、それは看過できなかった。とはいえ率直に訊ねて教えてくれるかどうか。うんうん唸る私に彼が訊ねる。

「お前はどうしたんだ?」

「私は関平に用事あって来たんだけど、間が悪かったみたいだし出直すよ」

聞いても答えてくれそうにない、と諦めて榻から腰を持ち上げたと同時に、彼に慌てて呼び止められた。

「拙者なら大丈夫だ!」

「え?でもさっき用事あるって……」

「そ、それは……」

きょとんとする私と黙り込んでしまう関平。長く続く沈黙にどうしようかと所在なさげに視線をやっていると、出し抜けに「拙者は」と言葉を吐き出した。

「練武することに傾注し、女性を楽しませることにおいては未熟だ。……それでもお前と見に行けたらと望むことがある」

「それって?」

「星が満遍なく見れる場所を関索から教えてもらったんだ。名前がよければではあるが、拙者と見に行ってくれるだろうか……?」

不安げに揺れる双眸に胸が穿かれる。想い人に誘われて断る女が居るだろうか。喜び勇んで了承した私に、彼は胸を撫で下ろした様子で笑ってみせた。





どこかで響いた銃声

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