関銀屏

今日こそ彼女から一本取ってみせる。そう意気込んで得物を振るう。しかし渾身の一撃はいとも容易く塞がれてしまった。剣戟を弾いて距離を開ける。一方的に仕掛けているせいか、息が乱れてきた。動きが鈍り始め、自覚するほど俊敏さが衰える。でもまだだ。こんな簡単に膝を折るわけにはいかない。家族に誓ったんだ、彼らを守れるよう強くなると。だから私は今より強く、もっと強くならないと。

「―――今日はここまでだよ、銀屏」

落ち着き払った声が私の名前を呼ばう。構えていた穂先を下ろしたのを見て、慌てて止めた。

「まだやれます!大丈夫です!」

「駄目だ」

ゆるりとかぶりを振る。尚も食い下がる自分に、彼女は非難の眼差しを向けた。

「……私、もっと強くなりたいんです。父上や兄上たちについていけるように、守れるように。だから今のままじゃ駄目なんです」

数多の友人知人、果ては同志までが戦場で散っていった。みんなが互いを守るために剣を取って、戦へ赴いている。指南役の名前殿だってそうだ。父上の旧友だという彼女も、父上たちと肩を並べて戦ってきた。今も尚変わらず戦線に立つ彼女自ら指導しているのに、甘えてなどいられない。

「少しでも早くみんなの役に立ちたいんです」

得物を握る手が力む。

「だから優しくしないでください」

言うと、名前殿の目元が緩んだ気がした。穂先を下ろしたまま歩み寄り、持ち上げた手のひらが自分の頭部を撫でる。その突飛な行動に瞠目すると、彼女は言った。

「もうこんなに大きくなってたんだね、銀屏」

「あの……?」

「私はね、この時間が好きだよ。友人の子供に指南して、たまに町へ行く。死体ばかり見て荒んだ心が癒えるんだ」

「あなたほどの方でも嫌になることがあるんですか?」

「勿論。だからこの穏やかな時間が長く続けばと思っている。でもそれには弊害が多すぎる」

「私もいずれは一緒に戦地へ―――!」

「うん、その時は来るだろうね。銀屏の腕なら確実だ。でもそれは今じゃない」

ぴしゃりと言われ、閉口する。

きたる時にできていたらいいんだ、焦ることないよ。私がきみを手放すことはありえないから」

そう言って笑った彼女は、何処か鬱々とした翳りを含んでいた。





優しくしないで

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