「―――今日はここまでだよ、銀屏」
落ち着き払った声が私の名前を呼ばう。構えていた穂先を下ろしたのを見て、慌てて止めた。
「まだやれます!大丈夫です!」
「駄目だ」
ゆるりとかぶりを振る。尚も食い下がる自分に、彼女は非難の眼差しを向けた。
「……私、もっと強くなりたいんです。父上や兄上たちについていけるように、守れるように。だから今のままじゃ駄目なんです」
数多の友人知人、果ては同志までが戦場で散っていった。みんなが互いを守るために剣を取って、戦へ赴いている。指南役の名前殿だってそうだ。父上の旧友だという彼女も、父上たちと肩を並べて戦ってきた。今も尚変わらず戦線に立つ彼女自ら指導しているのに、甘えてなどいられない。
「少しでも早くみんなの役に立ちたいんです」
得物を握る手が力む。
「だから優しくしないでください」
言うと、名前殿の目元が緩んだ気がした。穂先を下ろしたまま歩み寄り、持ち上げた手のひらが自分の頭部を撫でる。その突飛な行動に瞠目すると、彼女は言った。
「もうこんなに大きくなってたんだね、銀屏」
「あの……?」
「私はね、この時間が好きだよ。友人の子供に指南して、たまに町へ行く。死体ばかり見て荒んだ心が癒えるんだ」
「あなたほどの方でも嫌になることがあるんですか?」
「勿論。だからこの穏やかな時間が長く続けばと思っている。でもそれには弊害が多すぎる」
「私もいずれは一緒に戦地へ―――!」
「うん、その時は来るだろうね。銀屏の腕なら確実だ。でもそれは今じゃない」
ぴしゃりと言われ、閉口する。
「来る時にできていたらいいんだ、焦ることないよ。私がきみを手放すことはありえないから」
そう言って笑った彼女は、何処か鬱々とした翳りを含んでいた。
優しくしないで