またわけのわからないこと言い出した、と辟易を露わにした眼差しを送る。けれど彼はそんな白い目にもめげず、尚も意見を主張した。
「前々から思っていたがお前は軟弱すぎる。そんなことではこの乱世では生き残れない!」
と言うものの、邸に閉じ込めてるのお前なんだよな。喉元に差し迫った本意を飲み込む。言ったところで納得してくれそうにないし。
「突然どうしたの」
いくら頭の中戦馬鹿な夫といえど、言い出したからには何かしらの理由があるはずだ。そう思って訊ねたのだが、猪突猛進な彼にしては珍しく悩ましげな顔を見せた。それが意外で、縫い物を進めていた手を止めて向き直る。差し向かいには言葉を選んでいるふうの夫。思えば、こんなふうに向かい合うのなんていつ以来だろう。戦が続くこの時世、猛将と名高い彼は数え切れない出征を行う。妻たる者、夫を無事に送り届けるためにもあらゆる支度をしなければならない。出征資金も務めの一つ。だからこうして話し合うなんて最近なかった。
「…………お前は細い」
「うん?そりゃあ孟起と比べたらね。勝てるのなんて関羽殿や張飛殿くらいじゃない?」
こっちは庄家で生まれ育った女だ。戦に出たことは一度もないのだから、当然といえば当然のこと。
「細いから心配になる」
息を凝らすような、思い詰めた声だった。目を見張り驚く私に彼は続ける。
「お前には強くあってもらわねば困る」
「何が困るの?」
「………………触れられんだろう」
ぽつりと落とした胸中に、とうとう言葉を失った。乱世を切り裂く刃などと謳われる豪傑が、途端可愛らしく見えた。
愛する臆病者