急に訪ねてきて断りなく牀に上がり、第一声がこれ。彼の気性に一種の諦観すら抱く私は「なんですか」と先を促した。有能な部下とはまさに私のことである。
「右腕は賈充、左腕は元姫、頭は兄上。じゃあ名前はどれだ、ってなった時、お前は脚だ、って」
「はあ?」
怠惰極まりまったく敬することができぬ人物といえど、彼は仮にも上官。口の利き方には日頃気を払う方だと自負しているが、呼ばれもしないのに人の牀を勝手に使って駄弁る彼と接すると、ふいに肩の力が抜けてしまう。首を巡らせた私に、彼はさも妙案だろといわんばかりに得意顔を見せる。いや、わからん。
「考えてもみろよ、そうだろ?」
「まっっったく考えつかないのですが」
「そうか?」
「そーですね。思考の乖離が著しいので脚を務めるのは私じゃないのでは」
「いいや、お前だね。それははっきり言える」
「なんでそこだけ譲らないんですか」
「お前ほどの適任者は居ないからな」
「……じゃあケ艾殿はどうです?彼は地図作成が趣味でしたので脚にぴったりかと」
「あいつは目だな。脚じゃない」
「ますます子上殿のお考えが理解できないのですが」
「つまりだな。お前と俺は考え方が似通っていて、これからもよろしく頼むなってことだ」
「ここまで噛み合わないのに……?」
当の本人の困惑など蚊帳の外なのか、上官殿はすっきりした顔で再び上体を横たえる。更なる説明を、と口にしようとしてやめた。面倒くさがり屋の口数少ないこの人のことだ、本心なんて求めたら言いやしない。求めない時に打ち明けるくせして肝心な時はだんまり。そういうお人だ。だから結局周りの人が意図を汲んで手を回すしかない。かく言う私もそうだ。彼が立ち止まる時こそ、自分が歩かねばならない。
一心同体