夏侯覇

兄妹設定




―――大丈夫だって。俺がいつでもついててやるからさ。絶対お前を一人にしねえって約束する。だから戦に出るなんて言わず、哥哥あにの帰りを待ってくれないか?

自分とそう大差ない身躯なのに、身の丈を優に超す大剣を振り回す哥哥が言った。哥哥はいつだってそうだ。私を何も知らない妹と扱ってすべて一人で抱える。一人で解決しようとする。でも面倒見良くて面白い話をしてくれる哥哥が大好きだったから、父が守った魏から離れると言われた時も黙って従った。哥哥は、魏では裏切り者、蜀では間者と呼ばれ、私に向ける笑みはいつも辛そうだった。私が戦功を上げれば助かるだろうかと打診した時、血相を変えてやめてくれと懇願された。あまりに必死だったから痛々しくて頷いたけど、今は後悔しかない。無理を通してでも哥哥についていけばよかったと思っている。哥哥は私を「お前はいつでも可愛い」と言って可愛がってくれたけど、そんなことないのは知ってたよ。賢いのも縫い物が上手なのも全部嘘ってこと、わかってた。私を傷つけないための嘘なんだって気づいてた。でもそれを指摘したら兄様は必ず頑固に否定するって知ってたから、言わなかったの。いつもいつも兄様を喜ばせたくて言うこと聞いてたけど、それじゃ何も残らないんだってことを気づくべきだった。

「どうしてこうなったんだろうね。私は兄様と居られれば、それだけでよかったのに」

抱きしめた鎧兜は輝きを失っていた。





喪失

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指先