張郃
彼の周りにはいつも蝶が舞っているように見える。たまにそれが事実の場合もある。無数の青い蝶が彼を取り囲み、足下を彩る花が舞い上がり、その中でくるくる回る姿は、きっと崑崙山の頂から見る光景にも勝るだろう。常思いながら眺めていたが、なんとなく今日は手を伸ばしたくなった。黒く艶やかな長い髪に触れる。あ、と振り向いた彼と視線が絡まった。
「―――ついていた」
指で挟んだ花びらを見せてやれば、一瞬目を丸くした後、ゆるりと相好を崩す。梅の花が咲くような、春の陽光が鈍重な雲の隙間からこぼれるような。神秘的とさえ評する微笑みだった。
「儁乂はいつ見ても美しいな。私は常お前の虜になってしまったよ」
堪らず胸中に留めておいていた本意があふれてしまう。ぱちぱちと目を瞬かせていた彼が、言葉なく静かに目を逸らす。白い顔貌は淡く色づいていた。手に持つこの花のように。
照れ隠しの仕草
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指先