「名族ならば当然のこと。お前には何かと融通してもらっているからな、今宵は存分に楽しんでいくといい。河北で二つとない宴なのだから」
「おおっ!これはもしや牛の肉だろうか?噂には聞いておりましたが、ほんとうに瑞々しい……。まるで紅玉のようですぞ。このようなものをほんとうに戴いてもよろしいので?」
「無論だ。働きには対価を以て報いてやらねばな。これを与えるのは、お前がそれほどの働きをしたゆえ。遠慮せず受け取るといい」
「なんと慈悲深い……。私は感服いたしましたぞ袁紹殿。これより先、いかなる苦難にもどうぞ私めをお使いくだされよ。たとえ千里も離れていようと駆けつけますぞ!」
「うむ。頼りにしておる」
「そうだ、今度は我が居邸にお越しください。袁紹殿には到底及びませぬが、注力して歓待いたします。一度聴いたら思考を奪われると噂される歌声を持つ妓女を呼び、燕楽に長けた伶人を揃え、家の料理人に言って河北のありとあらゆる料理を作らせましょう」
「う、うむ……。それは実に楽しそうだな……」
「袁紹殿?顔色が優れないようですが、何処か悪いところでも?」
「いや、そんなことはない。お前の誘いは実に心躍るものだ。―――だが、饗宴に女は呼ぶな」
「しかしそれだと華がないのでは?」
「それは同意するが、とにかく呼ぶな。呼ばないでくれ。でないと取り返しのつかないことになる」
「…………ご令閨の悋気に触れるからですか?」
「そうだ。名前を怒らせると、この私でも手を焼く。それは極力避けたいのだ」
「一人の女性に深く慕われておりますな、袁紹殿は。羨ましい限りだ」
「いや、あれはそんな可愛らしいものではない」
「袁紹殿が危ぶまれるほどにですか」
「お前とて血の池地獄は見たくはないだろう」
「それは…………。かしこまりました。女抜きでも満足できるような宴を開いてみせますとも!」
「うむ、楽しみにしておるぞ」
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