董白に華雄

「ちょっとそこの馬鹿二人!お前たち何してるのよ!」

「んあ?」

「あ、董白様じゃないですか。いつもは部屋の中に居るのに町に下りるなんて珍しいですね。こんにちはー」

「人を引きこもりみたいに言わないで。それより聞いたわよ。酒屋で随分はしたないことしてくれたじゃない。これでおじいさまの名声に疵がついたらどうしてくれるのよ」

「疵?」

「はて。私たち何かしましたっけ?華雄様」

「さあな。普通に飯食って帰ってきただけだな」

「ですよね、私もそう思います」

「何処が、普通に飯食ってきた、よ!店の食糧を空にするくらい食べておいて普通気取るんじゃないわよ。お前たちがあんまりにも食べるから、私に苦情が来たのよ」

「なんだそんなことか」

「いやあ、あの店料理人の腕がなかなかよくてついつい食べ過ぎてしまいました。ねー、華雄様」

「そうだな!久々にあんな美味いもん市井で食えたぜ」

「味が薄い、汁気が多い、だいたい冷めてるのが大半ですからねえ。あ、今度は別の料理に挑戦してみませんか?あの料理人のなら味は期待できそうですし」

「そりゃいいな。行く日はお前が決めていいぜ」

「いいんですか!?明日とかにしますよ?」

「食い意地張ってんなあ」

「お互い様でしょうに」

「―――私を置いて二人で話を進めるんじゃないわよ!」

「董白様も行きたいので?いいですよ、三人で行きましょうか」

「そんなこと言ってないじゃないの。お前たちは馬鹿でもおじいさまの配下なのよ?行動一つがおじいさまの世評に直結することくらい理解しなさい。特に名前。お前は私の召使いでしょう。召使いの分際で主人を放って遊び呆けるとはいいご身分ね。そんなに躾直されたいの?」

「いや、だって董白様のお世話しようにもすることないですし……。私一人くらい抜けても支障はないんじゃないかなーと―――いたたたたっ!ふひまへんすみません!」

「それを判断するのは主人である私であって、お前じゃないわ。持ち場を勝手に離れた罰、しっかり受けなさい」

「まあまあ。そんくらいにしておいてやれって。こいつは何も遊び呆けてたんじゃねえんだしよ」

「へえ。私に口答えする気?華雄、おじいさまが信頼してるからっていい気にならないことね」

「なっちゃいねえよ。ただ理由くらい聞いてやってもいいんじゃねえのってこった」

「…………ふん、いいでしょう。主たる者、たまには下の者の言葉にも耳を貸す度量がなければね。許すわ、話しなさい」

「綺麗な簪を見つけたんですよ。でも店一番の大食らいに勝たないと貰えない品だったんで、華雄様に頼んで一緒に参加したんです」

「お前が簪に興味を持つとはね。私があれほど身なりに最低限の気を配りなさいと注意しても間に受けなかったのに」

「いえ。自分のためではなく董白様のためです」

「―――は?」

「簪、董白様の好みに近しい物だったんです。それで華雄様に手伝ってもらったってわけです」

「……それを見せなさい」

「あ、これです。どうぞ」

「…………悪くはないわね。私が持つ物の中でも最も下の出来だけど、気分がいいから貰ってあげる」

「―――さっきまで怒ってたのに急に喜びだしたぞ。よくわかんねえな」

「―――わかってないですねえ華雄様。董白様は素直におっしゃらないだけで嬉しいんですよ」

「―――そういうもんか?」

「―――だって嬉しそうに笑ってますもん」

「そこ!変なこと囁かないでちょうだい」





もしも魔法が使えたならば

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