苗字 名前、本日四番隊へ入隊。
 護廷十三隊では其々の隊で、この小さな、だが其れでいて奇妙な事の揺らぎに対し反応を示していた。


 十一番隊では

 この隊での個別運営の道場には、鍛錬に励む隊士で溢れかえっていた。木刀を振り上げ、怒号を上げて対する相手とぶち当たっていた。
 そこから少々離れた庭では、二人の男が刀を交え戦っていた。真剣に、という表現よりも楽しんでいると言った方がしっくりくるが、他人から見れば殺伐としている上に殺気立ち、声を掛けられる空気ではなかった。
 一人は坊主頭、もう片方もこれまた際立つ赤毛に刺青。二人とも相当な腕利だが、若干赤毛の方が押され気味である。
 「おらおらどうしたぁ恋次ぃ!!それで攻撃しているつもりか?!」
 「………っぐ、はい!」
 勢いのある一撃を歯を食いしばり何とか避ける男の名は、阿散井 恋次。相手と一定の距離を保ち対峙する。
 坊主頭___班目 一角は、戦いを存分に楽しんでいるのか嬉々とした顔を崩しもしないで破顔する。
 「おいおいもうへばっちまったのか?この調子じゃ何時になっても強くなれねぇぞ!」
 「誰がばてたなんていいました?まだまだこれからっすよぉ!!」
 阿散井もまた好戦的な目をぎらつかせ上官である班目を見、刀を構えなおした。
 「はっ、上等。………少しは楽しませてもらわねぇとこっちもつまんねぇからな!」
 再びぶつかり合う刀。
 地面は二人の踏み込んだ跡で荒れ果て、至る所が抉られている有様である。

 「………よくまあ飽きずにやるよねぇ、君たちも」
 その様子を、縁側で退屈そうに見ている綾瀬川。阿散井は入隊してくるなり強くなりたいといい、その志しに関心を持った班目が鍛錬をしてやり戦い方を伝授しているのだ。教える班目も満更でもないようで、進んで相手役を買って出ているようだ。
 「そういえばさ。例の子、今日入隊したんだってね」
 「はぁ?」
 不快そうな顔をするものの、刀を素早く動かし猛攻を仕掛けつつ耳は綾瀬川の言葉に傾ける班目。
 「興味ねぇな、んな弱ぇ奴。相手する価値もねえ」
 「………まあ、隊長もまるで関心がないみたいだったしね。僕が聞いても腐れ刀の腰抜けの一言さ」
 「隊長がそう言うんならそうなんだろーさ。霊圧を感じないだの、変な術を使うだのしったこっちゃねぇ。そんな奴は只の臆病者か腰抜けと相場が決まっているからな」
 「でも元は妖花と呼ばれていた芸妓なんだろう?どんな顔なのか気になるな………」
 「………てめぇはその点にしか興味がねぇのか」
 半ば呆れながら返す。
 やっとここで班目が刀を下すと、阿散井は乱れた呼吸を整えるため刀で体を支えた。
 「僕よりは美しくないだろうけど、ね」
 あしらう様に鼻で笑い髪を撫で上げる仕草は、何ともきざったらしい。だがその仕草さえも絵になってしまうのは、彼が其れだけ美形だからだろう。
 「一角さん!」
 さっきまでへばっていた阿散井の声に班目が振り返ると、白い手拭いを投げて寄こしてきた。
 「もう一勝負、お願いしますっ!」
 班目は一度手拭いに視線を落とし、阿散井をまじまじと見返した。
 「………お前って変なところで常識人だよな」
 「………は?何すか?」
 
 食堂での騒動は、この更に後の出来事である。


 十番隊では

 「や〜だ、またお腹周り太っちゃった?今度ダイエットしなきゃ」
 「働け」
 「あそうだ、今度の休日あいつらと酒屋行くんだった。七緒とか修兵とかも連れてー………」
 「働け」
 「………あ、隊長誘うの忘れてました」
 「働けぇええ!!」
 隊長の激怒した怒鳴り声に、壁一枚隔てた向こう側の部下はまた始まったと苦笑い。この隊では今のような光景は日常茶飯事だ。
 「いきなり怒鳴らないで下さいよぉ。あ、もしかして誘ってもらえないからいじけちゃいました?」
 「誰がいじけるか。その前に溜まった書類さっさと片付けやがれ!」
 早口で捲し立てる日番谷に対し、耳を覆い顔を顰める松本。日番谷が眉間に皺を寄せながら再び書類と向き合ってしまうと、松本もブーブー不満を言いつつも机に突っ伏しながら筆を進めていった。
 ふと一枚の書類に行き着くと、松本は思い出したかのように急に筆を止めた。不審に思い、日番谷も副官の方を見やる。
 「どうかしたのか?」
 「いえ、只………」
 曖昧に答えると、松本は目を伏せた。
「あの子、今日入隊するんでしたよね」
 物思いに耽るその横顔にあの時同様疑問を募らせる日番谷だったが、気の無い素振りで尋ねた。
 「そいつとは、知り合いなのか?」
 「いえ、知らない子ですよ」
 ふと顔を上げると、松本は曖昧に笑い、矢張り物思いに耽った顔で窓の方を向いた。
 「昔の事を、少し思い出しただけです」
 日番谷は一言も追及することはせず、黙って部下の言葉に耳を傾ける。
 「でも、絶対、あの子の訳ない」


 「_____もう、あの子はこの世にいないから」


 九番隊では
 
 「隊長、三番隊からの原稿届きましたよ」
 副隊長である檜佐木修兵が原稿を持ち入ると、せわしなく動き回っていた他の部下らがやっと間に合ったと安堵の溜息を吐いた。
 その中にいた東仙 要は彼の存在に気づくと、穏やかな顔を向けた。
 「あぁ、其処に置いといておいてくれ」
 この九番隊の隊長である東仙は、瀞霊廷通信の編集・発行を担当しているため、任務の他に色々と労力を伴っている。
 「隊長、大丈夫っすか?少し休まれては……」
 「いいや、気にしなくていい。慣れたものだ」
 少しは疲れていてもおかしくないのに、疲労をおくびにも見せていない。 
 「其れに、今月中はあの事もあって只でさえ瀞霊廷は慌ただしくなっているからな」
 「ええ、そうですよねぇ」
 心なしか何かに気を取られたまま呟くと、途端に顔を顰めた。
 「いやですが、三番隊の原稿が遅れたのは……」
 疑惑の目で三番隊隊舎の方を睨む檜佐木に対し、東仙は苦笑を洩らした。
 「………それが原因ではないだろうな。またあそこの隊長が失踪したか、部下に悪戯でもしたのだろう」
 「あれは悪戯なんていう甘っちょろいものじゃありませんよ。この前顔面蒼白な奴いましたから。………俺、三番隊は苦手っすね」
 目が見えずとも、東仙は部下の気持ちを敏感に感じ取っていた。
 「そう言う者は私も何人か知っているが、滅多な事で言ってはいけない。………ギンは性格はああだが稀に見る天才だからね。それに副官の彼女とは同期だったんじゃないのか?」
 東仙の言葉に、檜佐木は更に苦い顔になる。その感情は、嫌悪と言ってもいい。
 「彼女は、更に苦手です。部下とも馬が合わないそうですよ。市丸隊長とはどうだか知りませんけど。陰湿な噂がありましたからね」
 「そうか……。友というわけではなかったのか」
 呟く東仙に対し、檜佐木は押し黙ってしまう。
 その話題は、檜佐木にとっては居心地の良いものではなかったらしく、別の話題に話を変えようとわざとらしく声を上げた。
 「そ、そう言えば、その話題の四番隊に入隊したという子供は、隊長から見てどうでしたか?」
 「………ああ、あの少女のことか?」
 「しょ、少女?!あれ、女子なんですか?!!」
 素っ頓狂な声を上げ驚く檜佐木。目をひん剥き口をあんぐりとさせているところからして相当驚いた様子だ。
 「知らなかったのか?確かに、性別については余り深く言及されていなかったが」
 「俺、只の女装変人かと思ってました……」
 未だ衝撃から立ち直れないのか茫然と呟く部下に、思わず笑みが浮かぶ。
 「変人、か。確かに、少々変わった子だったな」
 不可解な点が多いものの、何処か飄々とし、警戒する必要などないようにみえた。
 そう、至って普通に。
 変わっている、と思ったとしても、決して興味など抱かない位に。

 だのに…………

 「………、隊長?どうかしましたか」
 手を止めてしまった隊長に、視線を送る檜佐木。帰ってきたのは、いつもと変わらない隊長の笑みだった。
 「いいや、何でもない。早く仕上げてしまおうか。まだ書類整理も残っているからな」

 ───だのに、
 何故あの方は、あの少女を必要以上に気に掛けられるのか。



 苗字が山田と共に十一番隊から帰ってくると、お出迎えに現れたのは卯ノ花隊長であった。嵐の前の静けさと言うべきか、既に騒動の事は耳に入っているにもかかわらず穏やかな笑みを崩そうともしない。
 山田は顔面蒼白で一目散に逃げ、隊長の横を素通りしようとしていた苗字は縛道の鎖条鎖縛によって捕縛された。
 「いやん」
 「いやんじゃありません」
 苗字の真顔の冗談も笑顔で一蹴されてしまった。
 そして現在、縛道で動きを封じられたままお座敷に正座させられ、卯ノ花と向かい合っていた。
 「他隊との騒動は軋轢に繋がるので控えなさいと言ったのに、どうして約束を守らなかったのですか?」
 「体裁を加える事はいいのかと思った」
 「其れは屁理屈です」
 「言葉のあやともいう」
 「………縛道ではなく破道にしましょうか?」
 「ははは、御茶目ですなー」
 卯ノ花隊長の霊圧が上がり、苗字を締め上げる力が強くなる。微笑を張り付けた卯ノ花の顔に、影が堕ちる。
 「………騒動も、喧嘩も、してはいけませんよ?」
 是非を許さない物言いに、苗字は素直に頷かざるを得ない。
 卯ノ花によるお説教が、穏やかな微笑みのもと再開された。
 「例え相手に絡まれ、せざるを得ない状況であったとしても、今後は自制しなければなりません。分かりましたね?」
 頷く苗字。
 「また、仲間が危険な状況下に置かれれば、無視をせず視界に入っていなくとも素通りをしてはなりません」
 苗字がここで口を挟もうとするので、すかさず卯ノ花に制止される。
 「ましてやどうでもいいなんてことは無い、ですよね?」
 間を空けた後頷く苗字。
 「当然口調を荒げる事もしてはいけませんよ?相手を煽る気が無く、只相手が激怒したなんていう言い訳はさせません」
 頷く苗字。
 「それと目上の人や上官には敬語で話しましょうね?」
 「地位など表向きの役職でしょう。それでは人ではなく地位に対し低頭していると同義でそれこそ無礼だ」
 「………敬語で話しましょうね」
 「御尤もなご意見で」
 本日の教育は此処まで、というように満足げに卯ノ花はほほ笑むと、やっと苗字を縛っていた縛道が解かれた。
 苗字は硬直しきった体を解きほぐそうと座ったまま足を伸ばしたり曲げたりしていると、再び卯ノ花の目線が苗字の方を向いた。また別の話題のようだが、今のお説教が心底堪えている苗字にとっては何であれ望ましくなかった。
 「他にも、貴女に伺いたいことがあります」
 特に反応を示さない苗字に向き直ると、話を続けた。
 「貴女が涅隊長の調査を受けられた後、隊首会で私たちが初めて対面した時の事を覚えておりますか?」
 無造作な動作で頷く。
 「では、その時貴女が何と言っていたかも覚えておりますか?」
 苗字は回思するものの、思い当たる節はなかったのか小首を傾げた。
 「はて、あの時は爆睡まで秒読みだったので」
 「………そうですか。残念です」
 困り顔で俯いてしまう卯ノ花に対し、苗字はあえて何も言わず、静かに彼女の仕草を目で追いかけた。建前と本音をうまく使う人だ、苗字は淡々と思った。


 ◇


 あの卯ノ花隊長による説教を受けても尚、苗字に関する騒動はその後も後を絶たなかった。というのも、苗字が理不尽に所構わずぶん殴っているのではなく、周りが苗字をほっとかないのだ。
 あの出来事を切っ掛けに、四番隊を痛めつける口実ができたと殺意を苗字に向け、最悪な時には修羅場になることもあった。
 当事者である苗字が被害者の様に振舞えば相手の隊を咎めることができるのだが、苗字も苗字でこの状況を楽しんでか喧嘩となれば臆することは無く更に被害と規模を拡大させるため、片方の否だけを咎めるわけにもいかない。これには四番隊も困惑するばかりで、扱いきれないこの隊士に手を焼いている。他隊の反応もまたかと免疫がついていき、少女の印象は稀有な、不気味な存在から、暴動をもたらす無骨者と何時しか変わっていっていた。


 四番隊隊舎

 苗字が目覚め、自室から出てきたところからもう既に、四番隊隊士らの苦労は始まる。
 今日もまた、勤務時間から一時間ほど過ぎてもやってこない苗字を迎えに山田第七席が廊下を歩いていた。山田は別に苗字の世話役を強制されているわけではないのだが、いつの間にかそんな役回りとなっていた。だが其れを山田自身嫌がる訳でもなく、逆に本心からあの少女の事を心配しての行動であった。
 苗字の事を疫病神やら持余し者として扱う者の居る中、山田にとってはとても接しやすい相手だった。先輩からも仕事に関して時たま叱られるし、自分の事を鈍くさいと自覚しているものの、苗字は山田を貶すことをしなかった。だからと言って、多くは言わない。否定をしない代わりに肯定もしない。だが、そんな苗字の性質を心地よくも感じるのであった。
 山田は隊士らの自室のある詰所へと向かっていると、フードを被った子供がフラフラと歩いて来るのが見えた。山田は困り顔に笑顔を浮かべ呼ぼうとしたが、その有様がはっきり見えると硬直してしまった。慌てて苗字の処まで駆けていく。
 「苗字さんんんっ?!なんて恰好しているんですか?!」
 山田が慌ててすっ飛んで来た理由は明らかであった。山田の存在に気づき顔を上げた苗字の恰好は、死覇装が大きくはだけ胸元がもうすぐで見えそうである。然も袴を履いていないせいで片足が丸見えであった。これには山田も顔を赤らめて視線を反らした。
 「ちゃんと袴履かないと駄目です!後髪の毛はちゃんと洗ってくださいぃ!」
 俄に臭ってきた異臭に、思わず鼻をつまむ。
 起きたばかりなのだろうか、苗字は大きく欠伸をすると後頭部を掻いた。
 「………今なんどき」
 「もうとっくに出勤時間過ぎてますよ……。其れはもういいですから、その格好で出歩くのは良くないですよ」
 毎度の事になった会話。
 恰好を気にしない少女は普通にこのまま出勤しようとするため、山田が自室へと引っ張っていく羽目になる。
 「あぁ!また手から血、出てますよ?後で治療しますね」
 低血圧の苗字はこっくりと頷くと、山田はその倦怠感の残ったままの身体の背を押して行く。腕まで至る傷が何故出来、何故抉られているのか、山田はまだ聞けずにいる。聞けば応えてくれるのかもしれないが、そこは踏み入れてはならない領域のように感じられていた。
 だがそれ以外の、山田は少女に対する恐怖感はすっかり消えていた。苗字の性格は明らかに、四番隊には不釣合いなものであった。最初は何時キレるか分からずその拳が自分に飛んでくるのではないかと随分怯えたりもしたが、苗字の口調が凶悪になるのは相手からの乱暴や横暴があるときのみで、何時もは拍子抜けするほど気怠げであって寧ろ放任主義者だ。今では、山田も少女に対し臆せずに接している。逆に、言い聞かせたり、戒める立場になっていた。

 やっと身支度を終わらせ隊舎に着いたのは其れから更に四半時後。着くなり、先輩であり第三席でもある伊江村から長々と説教をくらった。すいませんと連呼し九十度礼を繰り返す山田に対し苗字はフードの奥で爆睡したまま立っているだけなのだが、最後は「すいませんでした」と深々と礼をしてやっと解放された。


 山田は仕事に入る前に腕を洗って其の儘活動しようとする苗字をまずとっ捕まえると、回道で傷を治していき真新しい包帯で巻いていった。すると突然苗字は頭をぽんと書類の束で叩かれた。視線だけ上を向けると、吉良 イヅルが苦笑を浮かべて立っていた。
 「こら、また喧嘩をしちゃ駄目じゃないか」
 彼が今何席なのかは苗字は定かでないが、近い内何処かの隊の副隊長の席が用意されているらしい。他隊への勧誘があったという事は戦闘力もそこそこのようだが、自信が足らない風貌に人の好さそうな顔からは想像がつかない。
 「ち、違うんですよっ。これは………」
 山田は慌てて弁護しようにも自分も知らないのだから弁護しようもなくどもらせてしまう。そんな山田を怪訝な目で吉良は見た後、直ぐに苗字に視線を戻す。
 「兎に角、卯ノ花隊長が来る前に仕事に取り掛かった方がいい。あんまり呑気にしてると仕事増やすからね」
 「陰険ですな、やる事が」
 再び書類で叩かれる。他隊からも人柄はいいと評判は良いものの、上に立つ者がこうも舐められそうなのもどうかとも思うが、不幸中の幸いか四番隊にそんな隊士はいない。
 そんな山田らの会話を聞いていた数人の隊士らが、此方を横目で見ながらこそこそと陰口をたたき出した。
 「………ほら、また乱闘してきたみたいだよ」
 「山田君も人がいいわよね。あの子のせいで卯ノ花隊長の築いてきた四番隊のイメージに泥がついているのに……」
 「もう四番隊じゃあお手上げだよ。全然隊柄と合ってない。………やっぱり、五番隊に任せた方が……」
 「そこ!」
 吉良の突然の叱咤に肩を竦ませる隊士達。まさか聞かれているとは思っていなかったようだ。
 「そんなところで話している暇があるのなら、早く仕事に取り掛かるように」
 「は、はいっ!」
 ぴんと背筋を伸ばして返事をすると、逃げる様に走り去っていった。その背を見ていた苗字は傍らにいる気まずげな山田の方を見上げた。
 「五番隊って、どういう事」 
 苗字の問いにどうしようかと狼狽える山田は、助け舟を求めて吉良の方に視線を向けた。吉良はその山田の意図をくんで溜息を洩らす。吉良もまた、余り苗字にはこのことを話したくないようだ。
 躊躇いがちに吉良は重い口を開いた。
 「君は知らないだろうが、四番隊の他に入隊させる候補の隊があったんだ」
 「それが、五番隊?」
 肯定するように、頷く吉良。
 「そう。………候補というか、藍染隊長直々の申し出で五番隊へ勧めていたんだよ。君の事をとても気の毒がっていたからね」
 山田はちらっと苗字の反応を覗ったが、心底どうでもよさそうであった。山田が危惧していた反応でなかったので、思わず安心した。