13話






「うっは〜〜〜……終わった」
「お疲れ様です!刹那さん!」


 寺坂から受けた依頼を19時ちょっと前に終わらせることが出来た刹那はイスの背もたれに思い切り寄り掛かりながら両腕を上へ挙げ、体を伸ばしながら言葉を零すとPCの中で手伝っていた律は刹那に労いの言葉を掛ける。


「律もお疲れ〜…ありがと〜…そろそろ寺坂来るかなー…」
「………」


 刹那は律にも同じ言葉を返してお礼を言うとこれから来るであろう人物来るかもしれないと言葉を零すとPCの中で広げていたソフトウェアを消していくと律は急に黙り込んでいつの間にか刹那のスマホへと移動していた。
 

「ん?律?」
「……どうやらもう家の中ににいるみたいですよ」


 反応のない律に刹那は首をかしげながら彼女に声を掛けてPCをシャットダウンを押すと律の口から発せられた言葉はなんとも衝撃的な言葉だった。


「GPS確認したの?」
「はい」


 刹那は驚きもせずに淡々と律に問い掛けると彼女もまた冷静に首を縦に振って肯定の言葉を刹那に返す。


「ってことは……あいつもいるのね」
「その通りです」


 PCの画面が暗くなり電源が落ちたことを確認した刹那は家の中に既にいる寺坂理由を考えるとすぐさま理解し、律に言葉を掛けると彼女は刹那の言葉に肯定した。
 

「……はっ!!寺坂に買って来て貰ったお酒全部飲まれちゃう!!」
「そこですか!?」


 疲れた様子で立ち上がった刹那は二人が示す人物がいるということで彼女にとって都合の悪いことが起きるという考えに至り、調べ上げた書類を持って急いで裏家業室から出て鍵を掛けると律はまさか気にしているところはそこだと思っていなかったようで彼女に突っ込みを入れる。


「そこ重要!情報の対価だもの!急がなきゃ!!」
「刹那さん……」


 刹那はキリッとした顔をして律に力説して地下の階段から地上へと駆け上がるとその彼女の必死さに律は呆れたように彼女の名前をポツリと零した。


「わ・た・し・のぉ〜……お酒ー!!」
「…お前な……もっと女らしい登場は出来ねーのかよ」
「寺坂に同意」


 刹那は言葉を発しながらバタバタと走り、情報料の対価であるお酒が無事かを確認するようにリビングの扉をバンッと開ける。
 彼女の目の前には呆れた顔をした寺坂とその隣でビールを飄々とした顔をして飲んでいるカルマ、そしてカルマの目の前の席で悩みますの方を振り返って眉を下げて苦笑いしている渚の3人だった。
 寺坂は刹那の品のない登場にため息を付いて小言を言うとカルマは彼の言葉に同意した。


「カルマが不法侵入してる時点で私の対価が飲まれる可能性を考えたらそんなの気にしてられないわよ」
「カルマ……お前、不法侵っ……!?」
 

 刹那は両手を腰に当てて言葉を返すとまさかカルマが不法侵入しているというワードに寺坂は驚き、言葉を詰まらせる。


「合法的なピッキングしてるだけだよ」
「全然合法じゃないよ!?」


 カルマは表情も変えずにビールを一口飲んではもっともらしいように言葉を返すがその言葉の違和感に渚が突っ込みを入れていた。


「というか、カルマと渚がいるのは予想外なんだけど…どういうこと?」
「刹那にお願いがあって」


 刹那は眉下げてなんで彼女の家にいるのかを問い掛けると渚が眉下げて笑いながら彼女の問いに答える。


「また情報提供依頼ですか…」
「また?」


 彼女へのお願いという言葉を聞くと十中八九“それ”しかないので刹那は気だるそうにぼそっとぼやくと“また”というワードが気になったカルマが彼女へ問い掛けた。


「あーこっちの話。寺坂、例のヤツ話したいんだけど、こいつらいるから日を改める?」
「いや、構わねぇから話してくれ」
 

 刹那はカルマの問いかけに適当に言葉を返すと彼女は依頼人である寺坂に二人がいる前で話すかどうかを問い掛ける。
 彼は問題ないとばかりに調査結果を話して欲しいと言葉を返した。


「んじゃ、カルマと渚。関りたくなかった即刻出て行って。関る覚悟があるならそこで話を聞いてもいいけど、後悔しても知らないよ」
「どういうこと?」


 寺坂の言葉に刹那は頷いて一応とばかりにカルマと渚に忠告をするとカルマは眉間に皺を寄せて彼女に問い掛けるがどうも二人とも席を外すそぶりは見せなかった。


「忠告はしたからね……で、調べた結果……アンタの行った店はマフィアと癒着のある店だった」
「!?」
「…寺坂、お前何しにそんな物騒な店に行ったわけ」


 じっと刹那を見るカルマと渚に彼女はため息を吐いて前置きをしては寺坂の方を向いて書類を机にバサっと置きながら結論を述べる。
 寺坂が調べてもらっていた内容に渚は目を見開き、カルマは目を細めて呆れたように寺坂に言葉を投げかけた。


「世話になってる議員とその知人に連れられて行ったんだ」
「で、どうやら違法商売が盛んみたいだね…そこの従業員も薬に手を出してるし、いう子と聞かない女の子には薬で大人しくさせたりしてるみたいで……正直気分良くないわね」


 刹那が机に置いた書類を手に持って中身を見ながらカルマの言葉に寺坂は答えると刹那は渚の隣の席に座りながらクローバーという店の詳細を話し始めるが、内容が内容の為彼女は不機嫌そうに言葉を吐く。


「酷いね…」
「……」

 刹那は店の防犯カメラの映像を写真にしたものを更に追加でテーブルに乗せるとその写真に映し出されたものを見て渚は暗い表情をして言葉をポツリと零す。
 カルマもビールを飲みながらその写真を見て鋭い目をして黙っていた。

 
「で、アンタの世話になってる議員はシロ……だけど、佐藤進はクロ」
「お、おい…!マジかよ!?」


 刹那は続けて一緒に店に行ったメンバーの招待を明かすと二人とも無関係だと思っていたのか寺坂は驚いた顔をして刹那に声を上げて問い掛ける。


「あのねぇ、こんなことで嘘は付かない」
「佐藤進って誰?」
「設楽議員の知人」


 刹那は呆れた顔をしながら彼の言葉に否定すると黙っていたカルマが聞きなれない人物の名前に刹那に問い掛けると淡々とその問いに答えた。


「へぇ、設楽議員の知人なのに設楽議員はシロなんだ?」
「最近知り合ったばっかりみたいで…設楽議員をカモにしようとしてる途中で寺坂も巻き込まれたみたい…」


 カルマは彼女の答えに疑問を持ったようで更に疑問を刹那にぶつけると彼女は困った表情を見せながら説明をする。


「寺坂は相変わらず間抜けだねー」
「うるせぇ!!」


 彼女の説明に納得したカルマは寺坂を弄るように言葉を掛けると彼はむかついたのかカルマに乱暴に言葉を返した。


「これは私の推測だけどこれから何回か設楽議員を誘って油断するタイミングでパパラッチにスクープを売るつもりなんじゃないかな……この人、その手でも稼いでるみたいだから……一度誘われたから寺坂もターゲットになる可能性はあるけどね」
「……。」


 刹那はテーブルに肘を付いて手を組みながら彼女の推測を話し始めると彼女の推測が当たっていたとしたらと考えたのか寺坂は冷や汗をかいて固唾を飲み込む。


「で、アンタが泣いて助けを求めてた子を見たって言ってたアクアマリンって子……あの子の名前は二ノ宮ひまり」
「「!!」」
「お、おい…どうしたんだよ、二人とも」


 また写真を取り出して人差し指と中指に挟んでピラっと見せ付けるとそこにはカルマと渚にとって良く見かける制服を着た少女が映っており、また彼女の衝撃的な言葉に目を見開いて驚いた。
 二人の反応が今までと違った反応だったためか寺坂は戸惑いながらカルマと渚に声を掛ける。


「二人が反応するのは無理もないよ、帝丹高校の生徒だから」
「って、おいおい…それじゃあの子は……」
「そう、16歳の高校生……どうやら騙されてあの場所に連れられて行ったみたい」


 刹那は二ノ宮ひまりの写真をそっとテーブルに置きながら二人に代わりに代弁すると寺坂は驚いた顔をして言葉を失う。
 刹那は寺坂が何を言いたいのかを察して頷いては二ノ宮ひまりのことを話し始めるが女子高校生のことを思ってか眉を下げて言葉を紡ぐ。


「その子も、薬を打たされてるの……?」
「今は大丈夫だけど……暴力で言うことを聞かされてる。このまま行くと打たれるだろうし……精神も体も壊れるのも時間の問題」


 渚は青い顔をして二ノ宮ひまりの身の安全を確認すると刹那は彼の安心をさせる言葉を紡ぐがいつまで安全とは限らないとばかりに彼の問いかけに答えた。


「はあ……それで、どーすんの」
「どーすんのって助けないと…!」
 

 予想外な展開へと話が繋がってしまったカルマは深いため息をついて渚に言葉を掛けると彼は必死な顔をして答えはひとつしかないとばかりに言葉を返す。


「ちなみに二ノ宮ひまりを店に紹介したのは佐藤進」
「っ!……あの野郎…」


 刹那はまた淡々と二ノ宮ひまりの写真の隣に置いてあった佐藤進の写真を指差して言葉を紡ぐとまさか知り合ったばかりの人間だが身近な人物が犯罪に手を染めていたことに寺坂は憤りを感じていた。


「寺坂、この問題はアンタが持ってきた問題よ。アンタはこの問題をどうしたい?」
「電話でも言っただろ。助けを求める声を聞いたのに動かねーわけにはいかねぇ」


 刹那は寺坂の目をじっと見つめながら数時間前に問い掛けた内容を再度問い掛けると彼の意思は固く、数時間前と同じように言葉を返すと刹那は口角を上げて笑った。


「……だそうですよ、烏間先生」
「「!?」」


 刹那は突然この場にいない人物へ話しかけると3人は驚いた顔をするが一向に烏間の姿は現れない。
 刹那はポケットからスマホを取り出して寺坂たちの方へスマホを見せるとそこには“烏間先生”と表示されて電話が繋がっている画面が出ていた。


『全く君達は……』
「やっぱりメインディッシュ前に前菜と行きましょうよ……私も腸が煮え繰り返そうです」


 スマホから聞こえてくる声は呆れて言うような呟きの烏間の声だに刹那は普段どおりの声音で烏間に提案をするが、彼女の発している言葉は怒りが見え隠れする。


「僕達も手伝うよ……うちの学校の生徒が関ってるって聞いたら余計ほっとけないよ」
「お前ら…」


 渚も刹那の言葉に同意してこの案件について協力をすると口にすると寺坂は少し肩の力を抜いて渚を見た。
 

『……はあ……その店の悪事を暴いて表舞台に引き摺り出すぞ』
「「はい!!」」


 彼らの言葉を聞いた烏間は深いため息をついては覚悟したのかこの案件に手を掛けることを許可する言葉を4人に掛けると4人は返事をする。
 

『そうとなれば、律。この話を生徒達に展開を頼む』
「分かりました!」
 

 動くとなれば烏間の指示は早く、律へ展開をするよう指示をすると刹那のスマホからひょこりと律が現れて烏間に返事をしたのだった。


『本郷さん、また情報があったら連絡を頼む』
「了解です」
『それではまた』


 烏間は刹那に言葉を掛けると電話を切った。


「……暴くなんてなまちょろいこと言ってないで潰す勢いでやりたいよねー…あ、日本酒〜♡」

 刹那は電話が切れたため、寺坂たちのほうへ向けていたスマホをテーブルに置くととても物騒な言葉をさらりと口にする。
 そして、寺坂が持ってきただろう日本酒がテーブルに置いてあることに気が付くとテンションを上げてお猪口を取りに食器棚へと向った。


「……なんか刹那のスイッチ押しちゃったみたいだよ」
「どーすんの、バカ坂」
「俺に振るんじゃねぇ!!」


 彼女の様子を見ていた渚が困った顔をして言葉をぽつりと呟くとカルマが呆れた顔をして寺坂に責任を押し付けるように言葉を掛けると彼は額に筋を浮かせてカルマに言葉を荒々しく返す。


「あ、大丈夫大丈夫。潰す方法んプランはいくらでも考えるけん。安心して。」
((刹那/本郷が言うとしゃれにならない…というか潰す気だ……!!))


 いつの間にか戻ってきた刹那は日本酒を開けて日本酒を飲んでいたようでどこかの方言を使いながらヘラヘラしながら物騒な言葉を更に紡いでいる為、全く安心出来なさそうに男3人は心の中で突っ込みを入れていた。


「ふふ、さーて…どう調理してやろうか」
((目が据わってる……))
 

 楽しそうに潰すプランを考えているのか刹那はお猪口に入っている日本酒をくいっと一気に飲み干すと刹那は表情は笑っているがどう見ても目が笑っていないことに気が付いた男三人は頬を引き尽かさせていた。




メインディッシュの前に

 ―前菜を頂くプランを考えましょう―




ALICE+