14話






「で、あんたたちん依頼は何と?」
「……俺達の依頼は二つあったけど、一つ解決した」


 寺坂の依頼話が終わると刹那はカルマと渚に目を向けて問い掛けるとカルマはビールの缶をテーブルに置いて彼女の問い掛けに意味深な答え方をする。


「どういうことだよ?」
「今日、二ノ宮ひまりっていう生徒の話題が上がったんだ」
「!!」

 
 疑問に思った寺坂はカルマの方を向いて問い掛けると今度は渚が話し始める。
 またタイミングの良いと言えなくもない先ほどの依頼の中でも出てきた人物の名前に寺坂は息を呑んで驚いた。


「学校には連絡は入れてきてるけど体調不良でそれ以上のことは一切話してくれないって…彼女の担任の先生が心配してて……それで刹那に調べてもらおうと思ってたんだけど…」
「思いもよらんところから情報が入った…と。しかも、最悪な情報として」
「…うん」


 渚は手元のチューハイを見ながら暗い表情をしながら学校で入手した二ノ宮ひまりの情報を話しつつ、依頼をお願いしようとしていたことを打ち明ける。
 刹那はお猪口に入ったお酒を一口口にしては渚の方を横目で見て言葉を述べると渚は眉を下げてこくりと頷き、肯定した。

「で、もう一つは?」
「世良真純について調べて」
「…誰、それ」


 刹那は依頼のもうひとつは何かと問い掛けるとカルマが“世良真純”の名前を出して彼女を調べるように答えると刹那は聞きなれない名前に眉間に皺を寄せて言葉を零す。


「僕達の生徒だよ」
「何で生徒なんか調ぶるんばい?」
「勘だけどあの子、鋭いから警戒した方がいいと思ってさ」


 刹那の疑問に渚が答えると更になる疑問が浮上した刹那は首を傾げて問い掛けた。彼女の問い掛けに今度はカルマが答える。


「律に頼めば一発やなか?ちゅうか、律に頼みなっせ」
「だって、刹那は極力さぼろーとするじゃん」


 頼んでくるカルマと渚に刹那は目を細めてするめを口にしながら文句を言って依頼を引き受けたくなさそうに言葉を口にすると飄々とした態度でカルマは2本目のビールに手を出しながら彼女に言葉を返した。


「あんたにだけは言われよごたなか」
「ひどくねー?俺、今めっちゃ頑張ってるのに」
「………。」


 カルマの言葉に刹那はむっとした顔をして文句を言ってはするめをもぐもぐと食べているとカルマは余裕そうな顔をしてわざとらしく言葉を返す。
 しかし、彼の言葉をいまいち信じていない刹那はじっと隣にいる渚を見つめた。


「ほ、本トに頑張ってるよ……まあ、色々やらかしてるけど」
「ひっどいなぁ、渚」
「カルマのせいで今日怒られてるしね」


 刹那の視線を感じた渚は眉下げてカルマの言葉を認める刹那の目をそらしてぼそりと小言を言うとカルマはケラケラと笑いながら渚に言葉を掛ける。
 その言葉にはあとため息を付きながら渚は事実だとばかりに言葉を返した。 


「……お前、何したんだよ」
「んー…喧嘩売られてとりあえず買ってあげただけ」
 

 渚がため息を付いてカルマに言葉を返す所を見て寺坂は何があったのか気になったようでカルマの方をチラッと見て疑問をぶつけると彼はビールに口付けながら彼の疑問に答える。

 
「誰に売られたんだよ」
「世良真純」
「おまっ、生徒に売られて買う奴がいるかよ!!」


 更なる寺坂の問い掛けにカルマはビール缶を置いてナッツに手を出しながら喧嘩を売ってきた相手を口にすると寺坂は予想外の回答に驚いて突っ込みを入れた。


「買うつもり無かったけどさー…しつこかったから仕方ないじゃん」
「もっと穏便な終わらせ方あったと思うけど…」
「手を出してないんだからセーフでしょ」


 カルマはナッツを口に入れて咀嚼しながら寺坂の突っ込みに言葉を返す。彼の目の前にいる渚は肩を落としてカルマに言葉を投げかけるが、彼は売られた喧嘩を買ったのはあまり気にしていないらしく事態を重く受け取っていなかった。


「んで、渚もカルマと同意見と?」
「うん」
「分かった分かった。受くるばい……いつまで?」


 反れていた話を戻すように刹那は隣にいる渚に問い掛けると彼は首を縦に振って肯定する。
 刹那はため息ついて面倒くさそうに依頼を受けることを口にすると依頼のリミットを問い掛けた。


「早い方が助かるんだけど」
「はあ……ちょっと待って」
 

 カルマは明確な期限を言わずに最短とばかりに言葉を返すと刹那は又深いため息を付いてスマホを手に持って彼女が今出来る最短を確認するそぶりを見せる。


(明日は依頼ん仕上げして午前中に提出、あと打合しぇ…ばってん、午後は作曲進めなやけん……)


 刹那はスマホのカレンダーで日程を確認しながら最短で情報を渡せる日を考え込みながらするめをモグモグと咀嚼していた。


「明後日の夜はどう?」
「二日もいるの?」


 刹那は考え込んで調整した結果、最短の日程をカルマに提示すると彼は遅くない?と煽るようにと問い掛け返す。


「…情報屋が本業やなかだけど」
「本業みたいなとこあるけどね」
 

 煽り文句に刹那はむっとした顔をして文句を言うとまたもやその文句を挑発の材料に使ってカルマは言葉を返した。


「うちん本業は作曲家ばい〜」
「えー…そうだっけ?」
「んにゃろ…」


 刹那は負けじとお猪口に入っていたお酒をくいっと一気飲みしては彼女の職業を口にするが、知っているはずのカルマは知らないそぶりを見せて彼女をおちょくると刹那は眉間に皺を寄せて口調が悪くなる。


「まあまあ…本業の締めが差し迫ってるから明後日ってことでしょ?」
「そげなこと…調べる期間は1日しかなかばい……情報料は貰えるっちゃんね?」
 

 二人の間に割って入った渚は刹那の言い分を代弁して彼女に問い掛けると彼女はむっとした顔をして一升瓶を持ってお猪口にお酒をとくとくと入れながら肯定しては退化を求める言葉を発した。


「はあ……たまにはさぁ、無しにしてくれてもいいんじゃない?」
「うちはリスクば伴う作業に対価もなかなんてメリットなかことはしぇん主義」
「まあ、それを知ってるから面倒なんだけどね………これでどう?」


 彼女の言葉にカルマがため息を付いて呆れたようにまけろとばかりに言葉を返すと刹那はツーンとした顔をして言葉を返す。
 カルマは彼女の言葉に面倒くさそうに言葉を吐いては足元をごそごそとしては“南部美人 大吟醸 純米仕込み”と書かれた日本酒の一升瓶をテーブルに出した。


「っ、!!」
「刹那が飲みたがってた日本酒」
「さっすがカルマ!!やる気出た!やるやる…やりますとも!!」


 テーブルに出された日本酒に刹那は目の色を変えて驚いているとカルマはニヤリと笑いながら自分の手に持っている日本酒が何であるかを言葉にする。
 彼女は彼の言葉に食い気味でテンションの高い声を上げてあんなに先ほどまでやる気を見せなかった依頼をやる気満々だというように快く引き受けて日本酒を受け取った。


「標準語に戻った」
「流石幼馴染……恐ろしいほどに性格を把握してるね」


 喜びでなのか今まで博多弁を喋っていた刹那がいつの間にか標準語に戻ったことにぽかんとした表情で寺坂が見ていると渚はカルマが刹那の性格を把握していることに眉下げて笑う。


「南部美人ちゃんな今度飲もっと〜」
「今飲まないの?」


 刹那は受け取った日本酒の瓶を頬擦りして大事にしているとカルマは今日飲むと思っていたのか飲まないと言った刹那に驚いて問い掛ける。


「だって、寺坂から貰うた日本酒あるけん開けんばい」
「……また方言になった」


 刹那はふっと笑って南部美人を机に置いては開けている寺坂から貰った日本酒を見せて言葉を返すとまたいつの間にか博多弁に戻っている彼女に渚はぽつりと言葉を零した。
 

「情報渡す時に一緒に飲めば良かばい」
「ちゃんと取っときなよー」
「カルマこそ勝手に飲まんばきなっせー」
「それ、どこにしまうのー」
 

 刹那はカルマも南部美人が飲みたかったと思ったのか明後日飲めばいいと提案すると彼は納得したのか言葉を返す。
 その言葉に勝手に家に上がって勝手に飲まないようにと刹那は忠告しては南部美人を持ってどこかへ仕舞いに行くためか席を外す。
 カルマは仕舞う場所を把握する為か彼女のあとを追って席を外した。


「おい、渚」
「ん?何、寺坂君」


 カルマと刹那のやり取りを聞いていた寺坂は冷や汗かいて眉間に皺を寄せて渚に声を掛けると渚は対角線にいる寺坂に首を傾げて彼の名前を呼ぶ。


「こいつらこれで付き合ってないんだよな」
「……うん、付き合ってないね」


 寺坂の中で疑問に思っていることを口に出すとその言葉に渚は目をぱちくりして暫く黙っているとふっと声に出して眉を下げて笑って彼の疑問に肯定して答えた。


「何でだ」
「何でって僕に言われても分からないよ……」


 更なる疑問に寺坂は疑問に思いながら思った言葉をそのまま口に出すと渚は困った表情をしながら分からないと言葉を返したのだった。




新たな依頼と

 ―南部美人 大吟醸 純米仕込み―




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