15話






「コナン君!そっちにボール行ったよ!」
「任せとけ!!」


 公園で大きな声で少女。
 歩美はコナンに声を掛けると少年はイキイキとした表情をしながら、パスされたボールを相手チームのゴールへ導く。
 5人の少年少女たちは元気にサッカーをしていた。


「え、あ、うわぁ〜〜〜!!」


 コナンが蹴ったボールを止めようと大柄な少年…元太は構えるが予想外にも顔面へとボールが向かってきた為に声を上げて驚きながらボールを避け、綺麗にゴールが決まった。


「よっしゃ!」
「わーい!」


 ゴールが決まるとコナンはニッと笑いながらガッツポーズを取ると歩美は笑顔を浮かべて両手を上げて喜ぶ。


「また負けちゃいましたね…僕たち」
「まあ、江戸川君相手には良いところまで行ったんじゃない」
 

 この少年少女の中でも2番目に背の高い少年…光彦は頭を垂らして残念そうに言葉を零すとクールという言葉が一番しっくり来る少女…灰原は励ましているのかはたまた冷静にこの場を分析しているのか分からないが彼の方を見て言葉を掛ける。
 

「オレ、喉渇いちまったよ」
「結構サッカーしたしな…ちゃんと水分取らねーと」


 ゴールの近くで尻餅ついて座っていた元太は眉下げて喉が渇いていることをアピールするとコナンは空を見ながら元太の言葉を聞いては一旦休憩とばかりに相手ゴールの方へ近づく。
 まだ夏とは呼ぶには早すぎるが5月半ば…地球温暖化のせいか5月とは思えない気温の高さだった。


「じゃ、じゃんけんで勝った人が飲み物買って来るのはどうでしょう!」
「ええ、そこは負けた奴じゃねぇのかよ」


 光彦は閃いたとばかりに人差し指を立ててその場にいる5人に水分補給もかねた一瞬で決まるゲームを提案すると元太はげんなりした顔をしながら突っ込みを入れた。
 

「どっちでもいいだろー…んじゃ、じゃんけん……」
「「ポン!」」

 2人のやり取りにどうでも良さそうな顔をしてさっさと決めようとばかりにじゃんけんの合図をコナンがするといつの間にか円形に集まっていた5人はそれぞれ手を出し合う。
 元太、光彦、歩美はパーを出し、灰原はチョキを出していた。
 

「哀ちゃんとコナン君の勝ちー!!」
「「……」」


 そう、つまりチョキを出した二人が買ってしまったために買出し組へとなってしまったのだ。
 2人はお互いを横目で見ては何か言いたげな顔をしているが、何も言うことなくため息を付く。


「オレ、コーラ!」
「僕はお茶で!」
「わたし、オレンジジュース!」


 そんな2人に気付いていないのか気にしていないのか負けた3人は次々と飲みたい飲み物を言い始める。
 その様はまるでエサを待っているひな鳥のようだ。


「はいはい…」
「おめぇら大人しくここで待ってろよ」
「「はーい」」


 灰原は3人に適当に返事をすると先に飲み物を買いにいこうと歩き始めるとコナンは3人に保護者のような注意をして灰原の後を追う。
 3人は元気に彼の言うことを聞くとベンチに座る。


「なあなあ、今度のハンデはよ…コナン対俺たち4人でどうだ?」
「えー…それは流石に可哀想だよ」
「でも、コナン君ならそれくらい出来ちゃいそうですよね」


 コナンがあまりにもサッカーが上手すぎるからなのかどうやったら彼に勝てるかとハンデについて元太が提案をするとかなりのハンデに歩美は眉を下げて賛同できないとばかりに言葉を零す。
 光彦はハンデした状況を想像したのかハンデにならないかもしれないとばかりに眉下げて言葉を返した。

 
「おい、ガキンチョ…お前ら誰の許可を取って俺の縄張りにいちゃってんの?」
「え……」


 3人がハンデについて語っていると3人の目の前に学ランを来たいかつい顔をした不良が突然話しかけてくるが、不穏な空気を漂わせており、3人はびっくりして固まる。


「だーかーらー……だーれの許可取って、俺の縄張りにいちゃってんのかなー?」
「きゃっ…」


 言葉を返せない3人に痺れを切らしたのか3人に顔を近づけてもう一度似たようなニュアンスの言葉を問い掛けるといかつい顔が近づいてきたことによって歩美は恐怖からか声を上げた。 


「こ、ここは公共の場です!貴方1人のものではありません!」
「そうだぞ!みんなのものだろ!!」
「うっせなぁ!!痛い目に合う前にさっさと消えろ!」


 震え上がりながらも光彦はキッと不良を睨み付けながら常識的な言葉を返すと元太はその通りだとばかりに追撃の言葉を乗せるが不良には全く効かず、更に暴言を吐かれる。


「おーい、お前ら……またせ、た……」
「あら、タイミングよく帰って来れたのかしら」


 飲み物を買いに行っていたコナンたちが戻ってくると彼は3人に声を掛けるが、怪しい状況に言葉が途切れ途切れに紡ぐと彼の隣に居た灰原は冷静に状況を把握したように言葉を零した。


「こ、コナン君!」
「灰原さん!」


 その二人の言葉に救世主とばかりに歩美と光彦は2人の名前を呼ぶ。

 
「……ねーねー、お兄さん。何してるの?」
「ッチ、ガキが増えやがって…ここは俺の縄張りなんだから出ていきな」


 コナンはふうとため息をついては子供らしく不良に問い掛けると彼は更に機嫌が悪くなったようで舌打ちをしては要件だけコナンに言う。


「………」
「何とか言えや!ガキ!!殺すぞ!!」
「おめぇら、別の場所に…」


 不良の言葉に呆れたのかくだらないと思ったのか目を半目にさせて黙っているとだんまりなコナンに苛立ったようで荒々しい言葉をコナンに投げかける。
 コナンは穏便に済ませようとさっさとこの場を離れるように言葉を紡ぎかけた。
 しかし、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。


「あーら、物騒な言葉吐いちゃって…しかも相手はこーんなに小さな子供に…」
「「!?」」


 何の気配もなく不良の後ろに現れた人物は彼の頚動脈にシャープペンをそっと当てながらゆっくり言葉を紡ぐがその声音は柔らかい女性の声なのにどこかピリピリしていてその場にいた全員が息を呑む。


「もう一度言うよ、高校生が何小学生に喧嘩売っちゃってるのかな?」
「っ、てめぇ…!?」


 彼女はクスっと笑って優しく不良に問い掛けると不良は息をゴクリと呑んでシャーペンを頚動脈に当てている人物に向って振り返ろうとするが当てられていたシャープペンが先ほどより深く刺されて目を見開く。


「し・か・も…最後に何て言った?」
「……っ、」
 

 彼女はまた別の問い掛けをすると柔らかい声音に含まれた殺気を感じたのか首筋に感じるシャープペンに恐怖したのか不良は顔を青くして冷や汗をかいて膝が震え始めていた。


「ダメでしょ……殺すなんて言っちゃ」
「っ、かは……」


 だんだん沈んでいく不良のおかげか彼女の口元に不良の耳が近づくと彼女は彼の耳元で優しく咎める言葉を紡ぐ。
 そして、当てていたシャープペンを外してあげると不良は膝から崩れ落ちて息を吸い込んだ。
 

「あらあら…大丈夫?」
「ひぃ!!……うわぁ〜〜!!」

 崩れ落ちた不良に先ほどまでシャープペンを当てていた女性…刹那は心配そうに声を掛けると不良は先ほど感じた殺気に尻餅ついて後ずさっては大声を上げてその場から立ち去っていった。


「……ひっどいわね、人を化け物みたいに……で、大丈夫?少年探偵団諸君」

 刹那は去っていった不良少年に化け物扱いされたことに不服だったのか眉間に皺を寄せて文句を言うと振り返っては少年探偵団の安否を確認する。


「……っ、刹那お姉さんがスーツ着てる!!」
「そこ!?」


 呆然と少年少女たちが刹那を見ていると歩美は彼女の問いかけに答えることはせずに唐突な言葉を発言する。
 少年少女たちに驚かれるのは無理もない。
 いつもの彼女はカジュアルスタイルが多く、スーツ姿など見られたことがないのだ。しかも、更に珍しく髪を後で纏めているから余計にだろう。
 刹那は少女の発言が予想外だったのか思わず反射的な突込みを入れた。


「刹那さん、助けてくれてありがとう」
「どーいたしまして」


 コナンが探偵団を代表する形でお礼を言うと刹那は少しかがんでふっと笑いながら御礼を受け取る。


「刹那さんって強いんですね!」
「すっげーかっこよかったぜ!」
「あはは…そりゃどーも」


 光彦や元太が尊敬の生ざしを向けて興奮気味に刹那に言葉を掛けると目をキラキラされると思っていなかった刹那は苦笑しながら言葉を返した。


「何か習ってたの?」
「あー……昔、幼馴染に良く巻き込まれてたからちょっとね」


 歩美は素朴な疑問を首をかしげながら刹那にすると彼女は目をそらして過去を思い出しながら苦笑いしながら少女の問いに答える。
 

((……刹那さんって昔不良だったの??))


 刹那の答えがざっくりとした答えだったためか一つの疑問が少年達の頭を過ぎった。


「ねぇ、刹那さん。何でスーツ来てるの?」


 コナンは刹那が珍しくスーツを着ていることに違和感を覚えたのか不思議そうにそのことについて問い掛ける。


「ああ、仕事だったからね」
「「ええー!!」」


 刹那はコナンの問いに当たり前のように答えたがその答えが意外だったのか歩美、元太、光彦の口から大きな声が発せられた。


「……な、何?」
「刹那さんってちゃんと仕事してたんですね」
「オレ、てっきり自宅警備員かと思ってた!」
「わたしも!」
 

 大声に驚いた刹那は頬を引くつかせながら何を言われるのだろうとばかりに3人に問い掛けると悪意のない純粋な感想をそれぞれ言い放つとその言葉が刹那に突き刺さる。


「……そう」
(ははっ……素直にも程があんだろ)


 彼女は困った顔をしながらも笑顔を作っては言葉の痛みに耐えて返答すると傍観していたコナンは呆れた顔をしながら心の中で突っ込みを入れていた。
 

「お仕事って何してたの?」
「打合せだよ」


 悪気がない歩美はそんなことを気にせずに刹那に更に問い掛けをすると彼女は問い掛けに大雑把な言葉で答える。
 

「何のですか?」
「それは答えられないよー」


 詳細を聞こうと思っているのか今度は光彦が彼女に問い掛けると刹那は微笑みながら答えないことを答えた。

 
「またかよー、刹那姉ちゃんの秘密多すぎだろー」
「本当ですよー」
「歩美、知りたーい」


 彼女のその言葉に3人の子供達は拗ねたように刹那にクレームを入れ始めるが彼女はしれっと顔をする。


「全く……知っても特にならないよ〜?」
「それは僕たちが決めることです!」
「「うんうん」」


 呆れたように眉を下げて刹那は3人に言葉を返すが光彦は何故か自信満々に彼女の言葉に自分論を返すと歩美と元太は首を縦に振りながら光彦の言葉に同意をしていた。


「僕も知りたいな、刹那さんのお仕事」
(なーに考えてんだろ……工藤新一くんは……っつても、波長の揺れなーい)


 傍観者になっていたコナンは刹那の職種には興味があるのか口を挟んできて彼女に言葉を紡ぐ。
 コナンの正体を知っている刹那は笑顔を貼り付けながら彼の考えが分からないとばかりに警戒して彼の意識の波長を感じ取ってみるが彼の言った言葉に嘘偽りは感じ取れなかったようでため息を一つ付いた。


「……じゃあ、ヒント!中でも外でも仕事をする職種」
「え」
「……随分範囲が広いわね」


 コナンが何を考えているのか分からないままだが刹那は何を思ったが今まで頑なに教えたがらなかった自分の仕事についてのヒントを出し始める。
 しかし、彼女のヒントはあまりにも範囲が広すぎてコナンは目をきょとんとさせると灰原はボソッと突っ込みを入れた。


「それだけじゃわかんないよー」
「ヒントになってませんよ」
「ずりーぞ」


 彼女のヒントに歩美や元太、光彦もわからないとばかりに眉を下げてクレームを言い始める。


「次に会った時にまたヒントあげるから少しずつヒントを集めて答えを見つけてみて」
「「えー!!」」
「文句言わない、探偵団なんでしょ?」
 

 刹那はふっと笑ってこれから職種を当てるに当たってのルールを勝手に決めて少年少女たちに言葉を紡ぐと更にクレームの声が聞こえてくた。
 しかし、刹那は不敵に微笑みながら文句を受け付けないとばかりに言葉を返しては少年探偵団を埃としている彼らの心理をとってか殺し文句を言うと少年少女たちは押し黙る。
 刹那のスマホからバイブ音が聞こえると彼女はスマホを手にとって画面に表示されている者を確認した。


「……って、ヤバ!!時間!!じゃ、またね!!」


 刹那は一瞬目を見開いて驚いては焦りだして少年探偵団の前から去っていったのだった。



◇◇◇



「……律、ありがとう。それ、本当?」
「…はい、ひまわり・・・・が刈られるのは恐らく明後日です」


 刹那は彼らからだいぶ距離を取ってからスマホを耳に当てて電話しているようなフリをしながら先ほど画面に表示してきた彼女の言葉を確認を取ると律は苦しそうに事実を認めると言葉を更に紡ぐ。


「はあ…予定が狂った……それじゃ、決行は明日だね」
「はい、皆さんにプランの連絡入れますね」


 刹那は髪をまとめていた髪留めを外して髪を下ろすと頭をガシガシとかきながら深いため息を付いて律に言葉を掛けると彼女は刹那の言葉に同意しては彼女が次に指示を出すであろう言葉が理解していたのか先に言葉を紡いだ。


「流石、律。任せた…じゃあね」


 自分の意図を理解している律に刹那はふっと笑っては彼女を賞賛して信頼の篭った言葉を返す。


「ちっ……」
(読みが甘かった…でも、まだ欲しい情報が揃ってない……今日は徹夜だな)


 スマホを耳から話すと刹那は自分の甘さに舌打ちをして今出来る精一杯をやろうとばかりに決意して家路に付いた。




想定内より

 ―想定外の方が日常茶飯事で―




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