16話






「あーあー…こちら無駄美人。聞こえますか…聞こえてるよね。それじゃ、少人数精鋭で例のプランで雑草伐採作戦開始しますよー」
「……ねぇ、無駄美人」


 暗闇が町を覆って街頭や町の灯りで闇になりきれて居ない夜。
 ビルの物陰に隠れながら無駄美人…刹那は緊張感のない声でインカムに向って話しかけるとあっさりと作戦開始の合図をする。
 彼女の隣に可愛らしい格好をした水色のセミロングの少女は刹那に声を掛ける。


「何かな、性別ちゃん」
「どうして僕はこんな格好を……」


 声を掛けられた刹那は少女の方を向いて口角を上げながら少女のコードネーム…いや、彼のコードネームを呼ぶその姿は彼が何を言いたいのかまるで分かっているようだ。性別…それは潮田渚のコードネームだ。
 渚は自身の女性らしい服装に服を引っ張って困った表情をしながら刹那に言葉を零す。


「何でって私と一緒に潜入するからでしょ」
「だからって……女装しなくてもいいよね!?」


 刹那は当然とばかりに渚の疑問に答えると彼は不服なのか彼女に突っ込みを入れた。


 潜入担当:性別(渚)・無駄美人(刹那)
 

「女には甘いだろうから一応ね…って話それてるし」
『こちら凛として説教、ひまわり・・・・を発見。すごいサルと接近するよ』
「任せた」
 

 刹那はしれっとした顔をしながら敵を欺く為に仕方なくとばかりに言葉を返すと話がそれている事に気が付く。
 そんな2人の会話の中、凛として説教…というコードネームの片岡メグの声がインカムから情報が入ると刹那は片岡に言葉を返す。因みにすごいサルというコードネームは岡野ひなただ。


 ひまわり確保担当:凛として説教(片岡)・すごいサル(岡野)
 

「僕はここで待ってるね」
「うん、流石に教師が顔バレしたら洒落にならないからね……まー、念の為うちらと関った記憶は消して貰うけど」


 片岡からの情報に渚は刹那に物陰に隠れて待っていると言葉を掛けると彼女も首を縦に振って同意する。
 刹那は眉下げて更に言葉を続けるがその言葉の節々に違和感を感じるが慎重に行動を進めているようだ。


「うん……でも、無駄美人。その顔で行くの?」
「私は二ノ宮ひまりになるんだから当然でしょ」
「……彼女、驚かないかなぁ」


 渚も刹那の言葉に眉を下げて頷くと彼女の外見に戸惑いの表情を見せながら問い掛けると刹那は彼の問い掛けが意味が分からないとばかりにきょとんとした顔をして言葉を返す。
 何故、渚がそのような問い掛けをするかというと今の彼女の姿は本来の姿であるこげ茶色の腰まである長髪、赤みを帯びた茶色の瞳を何処かへやってしまっており、金に近い茶色のセミロングに青い瞳をしているからだ。
 彼女の言葉から推測するに二ノ宮ひまりの変装をしているようだ。渚は自分そっくりな人間を目の前に見たときの反応を心配するように眉を下げる。


「まあ、代わりに行くって話をすれば何とかなるって。じゃ、行ってくるねー」
「…………不安だ」


 渚の心配をよそに刹那はさらっと言葉を零すと手を振ってひまわり確保担当の持ち場へと歩み始めるとその彼女の後姿を見ていた渚は肩を脱力させて今の感情を言葉にしていた。



◇◇◇



「……」

 ビクビクオドオドしながら金に近い茶色のセミロングに青い瞳を持つ少女は重そうな足を一歩一歩進めていた。


「すごいサル、行くよ」
「OK」


 建物の影にひっそりと隠れている片岡と岡野はあの懐かしい10年前、E組で支給された時と同じ戦闘服を身に纏い、ターゲットの様子を伺う。
 まるで警戒心のない少女の後姿を確認した片岡は岡野に声を掛けると岡野は頷きながら返事をする。
 そして、2人は俊敏に動き出した。


「……っ!?」
「しっ……あなたを店に向わせるわけには行かないから」


 片岡は少女の背後から叫ばれないよう口を塞ぎ上半身を押さえ込むと少女の耳元で言葉を囁く。
 そして、岡野は少女の足を持って用意されていた車の中へと急いで入っていった。
 

「手荒なマネをしてごめんね」


 車に少女を押し込んだ2人は少女の体を解放して申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする。


「あ、あなたたちは……」
「怯えなくて大丈夫、貴女を助けに来たの」


 不幸続きの彼女は恐怖心から体を震わせて困惑・恐怖を滲ませた表情をしながら、二人に言葉を紡ぐと岡野は真っ直ぐな瞳を少女に向けながら安心させるように言葉を投げかけた。


「ほん、とに……?」
「うん。あと貴女の首にあるGPS外させてもらっていい?」

 
 ずっと欲しかった言葉なのか少女は思わず目から涙を零させながら希望の言葉に言葉を返すと片岡がふっと笑って彼女の言葉を肯定すると少女の首元にあるチョーカーを外していいかと問い掛ける。


「ダメ!」
「大丈夫、貴女はこれからあの店に行くから」
「…どう、いう……こと?」


 片岡が少女の首元にあるチョーカーに手を伸ばそうとすると少女は首元を自分の手で隠して拒否反応を示しては震えていた。
 その姿を見た片岡は安心させるように微笑みながら少女にとって意味の分からない言葉を告げる。
 少女からしてみるとその言葉は地獄の言葉にも聞こえたようで顔を真っ青にさせていた。


「はぁーい、初めまして。二ノ宮ひまりちゃん」
「!?」
「無駄美人……ビビらせてどうするのよ」
 

 車のドアをガラッと開けてはその場に似合わないひょうきんな声で自己紹介をする人物はまさしく先ほど片岡と岡野が車に連れ込んだ少女と瓜二つの顔を持っていた。
 二ノ宮ひまりは車のドアが急に開いたことに驚いているのか自分の名前を知られていることに驚いていたのか目を見開いて息を呑んでいる。
 岡野は腰に手を当ててため息を付いて扉を開けた人物…刹那に注意した。


「あはは…そりゃ失敬」
「私と同じ顔……?」


 岡野から忠告を受けた刹那は眉下げて謝罪の言葉を口にすると二ノ宮ひまりは自分の顔とそっくりな人物に目を丸くして困惑した表情をしていた。


「……これから貴女の代わりにお店に行くんだもの、貴女に変装しちゃった」
「だ、ダメ…!!今日お店に行ったら……」


 刹那は彼女の言葉にふっと笑って安心させるよう言葉を紡いだつもりだったのかその言葉の意味に二ノ宮ひまりは目を見開いて刹那を止めようと彼女の腕を掴んで言葉を口にする。


「店に行ったら薬を投与されるから?」
「……!!」
「尚更貴女に行かせられないよ」


 二ノ宮ひまりが言いたいことが分かっている刹那は彼女の代わりに言葉を紡ぐとそのことを知っていたのかとばかりに二ノ宮ひまりは言葉を詰まらせて驚く。
 そして、岡野が眉を下げて二ノ宮ひまりに言葉を掛けた。


「まだまだ未来のある子供にそんな思いさせられないからね」
「で、でも…そんなことしたらあなたが!」
「だいじょーぶ、ちゃんと逃げてくるから…あなたは今日からあの店に行かなくていいの」
 

 片岡が岡野に続き言葉を掛けるが、二ノ宮ひまりは自分の代わりに犠牲になるという焦りが会ったのか先ほどよりも声を荒げて必死に刹那を止めようとする。
 しかし、刹那は二ノ宮ひまりに顔を近づけて頭を撫でた。


「本当、に……?」
「本当に。……だから、辛いと思うけどこのお姉さん2人にあった事全て教えてくれる?」
「は、い……」


 頭を撫でられた二ノ宮ひまりは瞳を揺るがせながら信じてもいいのかとばかりに言葉を零すと刹那は彼女の言葉を肯定すると二ノ宮ひまりの近くに居る片岡、岡野をに視線を移しながら彼女を説得する。
 二宮ひまりは刹那の言葉に納得したようでゆっくり首を縦に頷いた。


「よし、いい子だね…それじゃ、その鬱陶しい首輪外そうか」
「無駄美人…それ、鍵が掛かってるけど外せるの?」

 頷いた彼女にまた刹那はぽんぽんと頭を撫でて褒めると二宮ひまりの首に付いているチョーカーに手を掛ける。
 刹那が作業している最中、片岡は心配そうな表情をしながら刹那に問いかけた。
 

「まー……中二半のおかげでピッキングは割かし出来る」
「何で」


 刹那は髪に仕込んでいたピン止めを外して二ノ宮ひまりのチョーカーにある鍵穴にピン止めを突っ込んで弄くりながら片岡の問い掛けに言葉を返すと彼女の言葉に更なる疑問が生じ、岡野が眉間に皺を寄せて刹那に問い掛ける。


「あの野郎、我が家をピッキングしまくるから仕方なしにピッキング出来ない構造とか調べてたら何となく出来るようになった」
「………何やってんのよ、あんたたち」


 刹那は眉をピクッと反応させて出来るようになった工程を話すと片岡は深いため息を付いて自身の額に手を当てながら呆れていた。


「よし…っと、外せた外せた……これを付けてっと」
「じゃあ、気をつけてね」
「うん、その子のことよろしく」


 ピッキングし始めてやっとカチャという音が聞こえると二ノ宮ひまりの首元からチョーカーが外れ、刹那の手の中に収まった。
 刹那はふうと息を吐いて安堵しては今度は自身の首にチョーカーを付けてピッキングで鍵を閉める。
 準備が整ったところで片岡は刹那に言葉を掛けると刹那は首を縦に振って車の中から出て行った。


(……第一関門クリア)
「こちら無駄美人、凛として説教とすごいサルがひまわりの接近に成功。これから事情聴取に入ってもらう。私も彼女が付けてたGPSを付けた」


 車から出た刹那はこの作戦の第一関門を終えたことにまた息を吐くとインカムからそれぞれの持ち場についている仲間に状況を説明しながら渚の待っているビルの隙間へと歩き出す。
 前日から“ひまわり”というワードを発言していたのは二宮ひまりの隠語だったようだ。
 

『了解』
「んで、性別と今、合流したから雑草の森に向う」
 

 刹那の言葉にインカム越しに誰かが返事をすると刹那は渚と合流しては渚に指を指して進む先を指示を出すと彼は頷いて刹那が指差した方向へと歩き出す。


『こちら野球バカ……ターゲット…あー、めしがススムくん・・・・・・・・を確認。このまま後を付ける』
「りょーかい、因みにイレギュラーなことが起きて私が指示出せない場合は貧乏委員に司令塔移すよ」
 

 インカム越しで野球バカというコードネームを持つ杉野が最新情報を流すと順調に尾行を進められていることを報告する。
 彼もまたあの戦闘服を身に纏って影に潜んでいた。
 刹那はその言葉に了承するとイレギュラーなことが起こった場合の対処法について言葉を零した。


 めしがススムくん尾行担当:野球バカ(杉野)


『中二半じゃないんだ?』
「今回、中二半は実行部隊だから…まあ、貧乏委員もそうなんだけど恐らくメインで動く中二半と鷹岡もどきになるだろうから……貧乏委員がサブ司令塔。中二半が暴走したら止められるの貧乏委員くらいだろうし」
『あはは……分かった』


 サブ司令塔に指名されたことにふと疑問に思ったようで刹那に問い掛ける磯貝もまた戦闘服を着ている。
 刹那はサブ司令塔を磯貝にした理由を述べると彼は苦笑いしては彼女の言葉に了承した。


 実行部隊:貧乏委員(磯貝)・中二半(カルマ)・鷹岡もどき(寺坂)


『おーい、こちら女たらしクソ野郎。俺はどのタイミングで入ればいいんだ?』
「私達が店に入って……店のオープンして少し経ったらかなー」
『了解』
 

 また別の持ち場から声を発する声…女たらしクソ野郎もといい前原はカジュアルな格好をしながらぶらぶらと町を歩きながら刹那に疑問を投げかける。
 刹那はその問いに曖昧な言葉を返すと彼はそれで理解したようで言葉を返した。


 追加潜入担当:女たらしクソ野郎(前原)


『つーか、何で俺まで変装すんの?』
「何かあった時のためだよ」
(この案件…降谷さんも地味に関ってるから何かあった時に逃げたいし……まあ、乗込んでくるなんてことはないだろうけど……つか、それを皆に言えるわけもないし…あ、めんどくさい)


 怪訝そうな声音で前原は刹那に問い掛けると彼女はさらっと彼の問いに対して答えると心の中で詳しい答えを呟いているが、実際問題降谷零の協力者であることをエンドには知られていない。
 知っているのは烏間と律の2人だけだ。
 その情報を仲間と言えど渡せるもなく悶々と考えているとめんどくさくなったようで考えることを放棄した。


「みんなインカムに最新情報は流し続けて。凛として説教たちは会話を私達に流すように」
『『了解』』


 刹那はピタリと足を止めて最後に少人数精鋭に指示を出すと全員が返事を返す。


「さあて…葵ちゃん」
「うん……」
「雑草の森に入りましょうか」


 目の前にある繁華街に刹那は腰を当てて不敵に微笑みながら女装をしている渚に言葉を掛ける。
 ここからはコードネームなど必要ないようだ。敵の懐に潜入するのだから当然といえば当然だろう。
 刹那は偽名らしい名前で渚を呼ぶ。渚も彼女に名前を呼ばれて返事をすると刹那は口角を上げて言葉を零すと繁華街への入口へと足を踏み入れた。


(誰も口には出さないけど…きっと皆同じことを思ったと思う)


 刹那の隣にいる渚は歩きながら周りを警戒するように気を引き締めた顔をしながら刹那を除いた少人数精鋭たちのことを思った。


(雑草伐採作戦に…雑草の森……)


 カルマは実行部隊が始動するまで車の中で待機しながら刹那の発言した数々を思い出していた。


(ひまわりに……)
 

 また二ノ宮ひまりの言葉を聞きながら片岡は冷や汗をかきながら二ノ宮ひまりの隠語として使っていた言葉を思い出す。
 

(めしがススムくんって……)


 またとあるターゲットを尾行しながら杉野は自身で言っていた言葉…刹那が生み出したのであろう隠語を思い出して彼もまた冷や汗をかく。


((刹那/本郷のネーミングセンスないな……))


 そして、この作戦に携わっている刹那以外の精鋭たちは心を一つにして彼女のネーミングセンスに心の中で文句をつけていた。



 
雑草伐採作戦は

 ―まだ始まったばかり―




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