プラチナブランド系の金髪をしている男性の腕に腕を絡ませる露出度の高いドレスを身にまとった女性は店の奥へ続く廊下を歩いている。
(…ここまでシャナの情報が正確だと恐ろしいな)
「ねぇ、安室さんと…いいかしら?」
男性は廊下を歩きながらチラチラと周りを見ながら心の中で思う。
どうやら、ここまでは彼が得ていた情報の通りなようだ。腕を絡ませてる女性は従業員に声を掛けた。
「はぁ…サファイヤ、またお前か。ああ、ダイヤの部屋はアクアマリンが使っているから隣の部屋使え」
「…ありがとう」
「っ、……」
彼女は常習犯なのか。従業員は呆れたように言葉を返すが、それ以上文句を言おうとしない。
稼ぎNo.2となるとそうそう文句も言えないのだろう。
男は仕方ないとばかりに承諾すると裏営業部屋とも言える部屋に別の女性が使っていることを伝えた。そして、空室の鍵を彼女に渡す。
彼女は妖艶に微笑んでは従業員から鍵を受け取り、礼を言った。
プラチナブランドの髪を持つ男性は自身が知りたかった情報をここで知り得ると思っていなかったのか息を呑む。
(彼女が隣に…)
「安室さん…気になる?」
2人の男女は彼女が導くまま例の部屋へと歩んでいくと男性は先程得た情報に考え込んだ。
サファイヤは彼が何を考えているのか彼の肩に頭を寄りかからせながら問いかける。
「ふっ…まさか」
(どうやって助け出すか…)
彼女の仕草に安室は目を閉じ、口角を上げると彼女の問いかけに答えた。
悟られないように彼女の問いに否定するとサファイヤはどこか残念そうに言葉を返す。彼女は前を向き、彼を誘うように歩き続けた。
彼はそんな彼女をチラッと見ては目的だったアクアマリンの救助について思慮する。
(こんなことならシャナを駆り出して店の顧客情報を取らせておけばよかった)
ダイヤの部屋と書かれた部屋の隣に辿り着くとサファイヤは鍵穴に鍵を差し込んだ。そして、ガチャという音が響くと彼女は安室に微笑みかける。
どうやらドアを彼に開けさせるつもりのようだ。
その彼女の意図を理解したの彼はドアノブに手を掛けるとくるっと回してドアを押して部屋の中へと入っていく。
彼は予想外のことを想定して行動すべきだったとばかりに心の中でぼやいた。
「………そう。じゃ、楽しみましょう?」
「ええ…」
部屋に入ると安室はドアから手を離すと重い扉は元の位置に戻ろうとする。
扉がガチャンと音を立てて閉まるとサファイヤは妖艶に微笑んでは安室の首に絡みつくように抱き着いた。
安室は彼女に悟られないように同じように微笑んで同意を示すと彼女は目をそっと閉じて顔を彼に向ける。
彼女の無言のアピールに乗るように彼は彼女はの顔へ近付けた。
『降谷さん!あの店の顧客情報が何者かによって我々の元に届けられました!』
「!」
唇が重なりそうなほどの距離まで距離を縮めた瞬間、安室の耳に装着されたインカムから男性の報告が上がる。
その情報に安室は目を見開かせて驚くと近づけている唇を離した。
「……安室さん?」
なかなか来ない口付けにサファイヤは目を開けて不思議そうな顔をして彼を見上げた。無理もないだろう。
彼は彼女の腰に手を回したまま固まっているのだから。
『マフィアとの癒着の証拠付きです。突入します』
(…シャナか?)
彼は彼女の問いかけに答えることなくインカムから流れる情報に耳を傾ける。
安室は公安が欲しがっていた情報を流した謎の人物に思い当たる人物がいたのかその人物の顔を思い浮かべた。
「さて……芝居はここまでだな」
「あむ、ろさん…?」
しかし、彼は今分からない答えに気を取られることは無いようだ。
彼はふっと笑って先ほどよりも少し低い声音で言葉を紡ぐ。
雰囲気が違う彼にサファイヤは困惑する表情を浮かべた。
「君には大人しくしてもらう…サファイヤ…いや、木下麗華」
「っ!!」
彼は鋭い眼光を彼女に向けて彼女の源氏名で呼ぶと否定し、彼女の本名を口にした。
まさか彼の口から彼女の本名が出ると思わなかったのだろう。
これ以上ないという程に彼女は目を見開いて彼から距離を取ろうとする。
「逃げられらるなんて思うなよ…君にも聞きたいことがあるからな」
「うっ…」
安室は逃げようとする彼女の手首を掴むと捻りあげた。そして、彼は容赦ない言葉を彼女に掛ける。
彼女は苦虫を噛み潰したような顔をしては逃げることを諦めたのか体に入れていた力を抜いた。
「風見、店の奥を左に曲がって手前の部屋に木下麗華がいる。確保しろ」
『はっ…降谷さんはどちらへ…』
安室は彼女の右手に手錠を掛けると空いている左手を入れる上の部分をドアノブにかける。
彼女は大人しく地べたに座り込むと安室はインカム越しに部下へ指示をした。
指示をされた部下が返事をし、安室の次の行動を問う。
「アクアマリンの無事を確認次第、管理室へ向かう」
(頼む…!無事でいてくれ…!)
彼は風見の問いかけに端的に答えると部屋から出て行き、隣の部屋へと向かった。
この店に来て大分日数が過ぎているアクアマリンは何をされてもおかしくない状況だということを彼は理解していたのだろう。
冷や汗をかきながら、彼女の身の安全を願う。
「……アクアマリンさん!」
安室はダイヤの部屋の前に辿り着くと容赦なくバンっと大きな音を立てて乗り込んだ。そして、彼の探している彼女の名前を呼ぶが、彼の探していた人物はどこにもいない。
彼の目の前にいたのは縄に縛られ眠っていた中年太りの男だけしかいなかった。
「………どういう、ことだ…?」
彼は目の前の状況に困惑せずには居られなかったのだろう。
戸惑った表情をしながら歯切れの悪い言葉を紡いだ。
◇◇◇
暗い部屋で女性はポケットの中からUSBを取り出すとハードディスクに取り付けた。そして、カタカタとキーボードを叩き始める。
デスクトップの光で顔だけ照らされている女性は真剣な表情をしながらPCを弄っていた。
『こちら凛として説教、彼女を無事送り届けたよ』
『こちら野球バカと中二半!めしがススム君を放り込んだ』
彼女のインカムからは片岡、岡野コンビと杉野、カルマコンビがミッションを成功させた声が聞こえてくる。
それをBGMに女性は画面をマウスでスクロールさせ、字を追いながらお目当てのデータを探した。
「ちっ…ハズレ」
『性別と女たらしクソ野郎を回収』
なかなかデータは見つからないのだろう。彼女は舌打ちをするとまたカタカタとキーボードを打ち込んだ。
インカムの外線は数分前に切られているので彼女の舌打ちは仲間には聞こえない。
そんな彼女の右耳には冷静で的確な指示を出す磯貝の声とまたそれに返事をする仲間の声。そして、渚と前原の回収が終わったのだろう。
彼の撤退指示の声がPCを弄っている彼女の耳に付いているインカムから流れ込んできた。
「みーつけた」
『刹那さん、例のデータを公安に送り付けました』
またマウスでスクロールをすると彼女の欲しかった情報を見つけたのかスクロールする手をピタリと止める。そして、口角を上げて言葉をぽつりと零した。
そんな彼女の左耳からは彼女の名前を呼ぶ可憐な声が聞こえてくる。
どうやら風見の元に届いたデータの送り主は律のようだ。
「萌え箱…!」
『あ、大丈夫です。あっちとの外線は切ってます』
左耳に付けているインカムから萌え箱…律の声が突然したからなのか彼女は驚いて律のコードネームを口にした。
律は刹那を安心させるためか精鋭部隊とは違う外線を使っていることを伝える。
「うん、左耳だもんね。それとサンキュー」
『ふふ、どういたしまして。データコピー出来ましたか?』
右耳のインカムは精鋭部隊、左耳は個人的なものと元々律と刹那は打ち合わせをしていたのだろう。
刹那は首を縦に振ると彼女の言葉に同意するとお礼を言った。
律は明るい声音で彼女のお礼を受け取ると問いかけた。
「これから…よし、コピー中」
『…データ残しておかなくて良かったんですか?』
刹那は彼女の問いに答えながら左クリックをするとその途端に画面はハードディスクから差し込んだUSBへとコピーされていく。
律はハードディスクにとあるデータが入っていないことに気が付くと彼女へ問いかけた。
「そこは悩みどころだったんだよね」
『刹那さん…』
刹那は、はぁとため息を付くと机に肘を付き、手のひらに顔を乗せながらボソッと呟く。
彼女の悩みも律にはお見通しなのだろう。
律は眉を下げて彼女の名前をぽつりと零した。
「でもまあ、それで判断はあの人に任せる」
『あの人…?』
画面に表示されてるパーセンテージが87%となる所を見ながら刹那は律に言葉をかける。
彼女の意味深な言葉に疑問を持ったのか律は彼女の零した言葉をオウム返しした。
「んー…今、こっちに向かって来てる人」
『それって…』
律の疑問に彼女は93%になった画面を見ながらヒントを出す。
律は聡い人物だ。
ここまで言われたら誰のことを指しているのか分かったのだろう。
その人物の名前を彼女が口に出す前にドアがガチャと勢いよく開き、カチャっという引き金を引く音が部屋中に響く。
「手をあげろ」
「あらら…早い到着で」
刹那に拳銃を向けて低い声で命令する男は鋭い眼光で彼女を睨んだ。
彼女は緊張感のない声ではぁと息を吐いては眉を下げて両手をあげる。
この二人のやり取りの間に画面に表示されていたパーセンテージは100%となり、USBに全て移り終わったことを証明していた。
点と点を結び、交差する
―初めての形の対面―