6話






「くー!!終わった〜…」


 刹那はPCに向ってカチカチとキーボードを打つ。
 メールを打っているようで打ち終わると圧縮させたファイルを添付してメールを送信すると彼女は手を上にあげて伸びをすると背もたれに寄り掛かり力を抜いた。

 
(最近あっちの手伝いないし…落ち着いてんかな……まあ、その方がいいけどっ)


 ふうとため息をついてはここ最近は本業のみの作業が多くなっているようで彼女はふと依頼人である降谷の顔を思い浮かべるが仕事が増えないことに越したことは無いと思ったのか考えるのをやめてPCの電源を切った。


「よし!今日は金曜!新・商・品・の・ビ・イ・ル〜♪」


 電源が切れたことを確認すると刹那は立ち上がって地下の防音室から出てテンポ良く跳ねるように冷蔵庫の中で待っているビールを求めて階段を登りながらスマホをチェックするとそこには烏間から元E組生徒全員宛の連絡が入っていた。


「……ん?何これ…緊急事態…」


 刹那はメールを開くとそこには簡潔な言葉で用件のみが記載されているが、そこに書かれた文字は緊急性を伴っているように感じた。


――しかし…


 メールの文を読み終えると彼女は以前呼び出されたときに聞いた一瞬暗い目をして言葉を紡ぐか悩んで辞めた烏間を思い出した。
 

「あの時の言葉と何か関係あるのかな…」
「あー、お疲れ〜」
「あー…うん…おつか…って、んん?」


 刹那はリビングの扉を開けながらあの時の烏間の言葉に引っ掛かって考えて言葉を呟くとリビングからひらひらと手を振りながら刹那を労わる声が聞こえてくる。
 彼女は生返事で言葉を返すが誰もいないはずの家の中から男の声が聞こえて眉間に皺を寄せて違和感を感じていた。


「あ、刹那…お、お邪魔してます」
「なーにビクビクしてんの?渚」
「カルマ…普通にこんなことしてたら怒られるって」


ガバっと顔を上げた刹那の前には縮こまっている水色の髪の中性的な男と堂々とビールを飲んでいる赤髪の高身長の男がいた。
 水色髪の男…潮田渚は困った顔をしながら刹那に言葉を掛けると赤髪の男…赤羽業はヘラヘラしながら渚に問い掛ける。
 カルマの言葉に渚はなんとも言えない顔をしながら常識的な言葉を彼に投げた。


「大丈夫大丈夫、いつものことだから」
「いつもなの!?」


 カルマは飄々としながら渚に問題ないとばかりに言葉を返すが、その言葉は渚にとって驚きの言葉で思わず彼は突っ込みを入れた。


「…で、またこじ開けたの。カルマ」
「こじ開けたんじゃなくてピッキング」
「同じよ!!も〜…これで何回目よ!?つぅか、人の酒勝手に飲むな!!」


 刹那はリビングの扉を閉めて腕を組み、扉に寄り掛かりながら眉をピクピクさせながら冷静にカルマに問い掛けると彼は彼女の言葉を否定して別の言葉を口にするがどちらにしろ同じことなので刹那に突っ込みを入れられる。
 彼女は声を荒げてカルマを怒った。
 どうやら彼女が楽しみにしていた新商品のビールだったようだ。

 
「いーじゃん、買ってきてるんだし」
「だったらそっち飲みなさいよ!何で冷蔵庫から取るのよ!!」
「冷えてる方が美味しいじゃん」
 

 彼女の怒りを物ともしないカルマは彼女の言葉を流すように言葉を返し、自分たちが買ってきたお酒を冷蔵庫に入れたのか冷蔵庫を指差した。
 しかし、刹那の怒りは納まらずカルマに文句を言い続けるがケロっとした表情で簡潔に彼女の文句の問いにカルマは答える。


「もー!私の楽しみが〜…!!」
「あははは」
「笑い事じゃなーい!!」


 刹那はいじけながら楽しみにしていた新商品なくなったことを文句を言うとカルマは声をあげて笑う。
 そのカルマの笑い声に刹那はキッと彼を睨みながら悔しそうに文句を言った。


「お、落ち着いて…刹那」
「…ほら」
「……勝手に家に上がった挙句、勝手に冷蔵庫開けて飲んでる輩に偉そうに渡されてもぜーんぜん許せません」


 二人のやり取りに戸惑いながらも、渚はどうどうというように彼女の目の前に両手の掌を見せるように刹那を制止する声を掛けるとカルマは勝手に冷蔵庫を開けて自分で買ってきたのだろうかカルマが飲んでいる新商品のビールを刹那に差し出す。
 彼女は怒りは収まっていないながらもカルマからビールを奪い取って文句を言った。

 
「ご、ごもっとも…」
「全く…で、渚まで来てどーしたの?」
「カルマとばったり会って飲もうってなったんだ」
 

 彼女の文句は正論だった為、渚は刹那の言葉に同意してしょんぼりしていると彼女はため息を付いて珍しく渚を連れて刹那の家に来ていることについて問い掛けると渚が彼女の問いに答えた。


「それで、私の家が会場ってわけね」
「そーそー…で、磯貝と前原も来るって」
「………サラリと言う前に私の許可は得ないのかしら?」
 

 渚の言葉に納得してちろっと横目でその主犯であるカルマを見るとカルマは刹那の言葉に否定することもせずに言葉を返しながらスマホを確認している。
 そして、追加で人数が増えることをサラリと告げるカルマに刹那は眉をピクピクさせながらカルマに問い掛けた。


「ないね」
「はあ…もういい……つまり、ここは男子会の会場にさせられるってことね。もう勝手にして」
 

 カルマは一口ビールを口にするとはっきりと"No"の言葉を刹那に告げるとその態度に諦めた彼女は深いため息を付いて現状把握をすると彼女は渚の隣の席に座る。


「あはは…刹那も会うの久しぶりなんだから一緒に飲もうよ」
「こうなったらあんたたちが買ってきた酒のみ尽くしてやる」
「あははは…」


 困った顔をして苦笑いしながら渚は気を利かせて刹那に一緒に飲もうと誘うと彼女はむっとした顔をして恐ろしい言葉を吐き出し、その言葉にまた渚は頬を引きつかせて笑った。


「お邪魔します」
「色々買ってきたぞー」


 玄関がガチャと開くと家にいる者へ声を掛けるように男二人の声が聞こえてくるとそのまま内鍵を閉めて中へ入ってくる足音がする。

 
「あ、来た来た」
「本郷、悪いな。お前の家借りることになって…」
「人が仕事してる中、勝手に家に上がって勝手に始めてた問題児のせいだから磯貝君は謝らなくていいよ」
「お前も良くやるよなぁ、カルマ」


 ガチャとリビングのドアを開ける音がするとカルマはドアの方を見て声を掛けるとそこには先ほど話に上がっていた磯貝と前原が酒やらつまみの入った袋を持って現れると磯貝が刹那に申し訳なさそうに言葉を掛ける。
 刹那はにっこり微笑みながら缶のプルタブを開けて彼女がどう状況把握をしたのかを簡潔に分かりやすく磯貝に伝えては磯貝ではなくカルマが謝罪すべきだとばかりのオーラをまとって言葉を返すと彼女の笑みに冷や汗かきながら前原がカルマを見て呆れたように呟いて二人は空いている席に座った。
 

「…そういえばさ、烏間先生からのメール見た?」
「ああ、来てたな」


 カルマはビールを一口飲むと思い出したかのようにこの場にいる全員が着ているであろうメールについて問い掛けると磯貝はつまみや酒を袋から出しながらカルマの問い掛けに答える。


「“君達に頼みたいことがある。日曜、夜22時に来られる者だけ構わないから集合してくれ。場所はE組教室”…ってなんか緊急事態ぽいよね」
「だよな…何かあったのか?」


 渚はスマホを持って届いたメールの内容を読むと眉下げて事態が多きのではないかと推測するとするめを食べながら前原は渚の言葉に同意すると何かあったのかと考えながら言葉を漏らした。


「…何かあったのかもね、10年前に関わる何か、とか…」
「本郷、お前何か知ってるのか?」
「いーや、知らないけど…そんな感じがしただけ」


 刹那はビールをごくごくと飲むと目を細めて意味深な言葉をぽつりと呟くように発すると磯貝は首をかしげながら彼女に問い掛けるが、刹那は首を横に振って彼に言葉を返した。


「怖いこと言うなよなぁ」
「でも、嫌な予感しかしないのは確かね」
「…女の勘ってヤツ?」
「ああ、それかも」

 刹那の言葉に眉を下げてやめろとばかりに前原が言葉を掛けると刹那は前原達が買ってきた柿の種を食べながら直感的な言葉を言う。
 その彼女の言葉にカルマは思い当たる言葉があったのか刹那に問い掛けると彼女もそれだとばかりにカルマを指差して同意した。
 

(…それは僕もどこか感じてた……大きな影が僕らを巻き込むような不安を)
「まー、今考えてもしょーがないから飲むべ」
「…飲むとどっかの方言出てくるのは変わらないのな、本郷」


 二人のやり取りを見ていた渚は少し暗い表情をしてこれから何かがあるような予感に落ち着かない様子を見せていた。
 刹那は渚の暗い表情をチラッと見ては自分の持っていたビールの缶を渚の頬に当てて気を紛れさせるように言葉を掛ける。
 彼女の発音がどこか訛りがあったため、困った顔をしながら磯貝が刹那に突っ込みを入れると5人は笑って飲み続けたのだった。




仕事終わりの
 
 ―仲間と飲む酒は最高―




ALICE+