拾話




「ウギャアアァ!スゲェ珱姫!!」
夢浮橋ゆめのうきはし五十点出たー!!」


 小妖怪と珱姫は投扇興とうせんきょうをして遊んでいたようで珱姫が扇子を投げると夢浮橋ゆめのうきはしという珍しい得点を取ったとこにより、小妖怪たちは興奮して彼女を称賛の声を上げた。


「まったく総大将の考えていることは……わからん!」
「人間の女をこんな妖の集団の中に入れて酔狂な……」
(それは私も思う)


 珱姫を…いや、人間の女たちを良く思っていない妖怪幹部たちは酒を飲みながら総大将の意図を理解できないと愚痴をこぼしているとそれは胡蝶の耳にも入り、彼女も心の中で同意する。


「後で肝を喰うのか?」
「さて………どーするつもりだ?」
(…手は出させない)


 総大将の考えを予想する幹部たちの会話はとても物騒な会話になっており、珱姫を喰うなどの単語が聞こえた胡蝶は袴の中に手を入れて背に手を回しては隠していた刀に手を掛ける。ぬらりひょんは妖怪幹部たちの会話が耳に届いているようで盃を口づけながらも鋭い目をして様子を眺めていた。
 

「胡蝶」
「…何」
「お前さんの舞を見せてくれねーか?」
「はぁ??」


 ぬらりひょんは胡蝶に声を掛けると彼女はちらっと横目で彼を見ながら一言言葉を返すとぬらりひょんは胡蝶に唐突にある提案をする。彼女はその提案に怪訝そうな顔をして彼に言葉を返した。


「珱姫も見たいよな?」
「はい!」
「え、ちょ、よ、珱!?」


 ぬらりひょんは彼女の不機嫌そうな顔を見てふっと笑うと珱姫に胡蝶に提案したものを見たいかと問い掛けると彼女は元気いっぱいに首を縦にして振る。
 まさかぬらりひょんが珱姫を味方に付けると思っていなかった胡蝶は驚いた顔をして珱姫を呼んだ。
 

「え、だ、ダメでしたか…?」
(…こいつ、珱を使いやがった……!!)


 胡蝶の反応に珱姫は少ししゅんとして名前を上目遣いで問いかけると彼女は言葉に詰まり、ぬらりひょんをじと目で見るが彼は知れっとした顔をして酒を口にしていた。


「噂の姫だったら、ちゃんと舞って証拠見せなさいよ!!」
「えー……証拠って言われてもねぇ…まあ、ただ歌って舞ってるだけなんだけど」


 雪麗がキッとした目で胡蝶に突っかかると胡蝶は眉下げてやる気のない声で嘆く。


「さっさやりなさいよ!」
「はいはい…珱が見たいと言えば私はやらざるおえないんですよ」
「……」


 やる気のない胡蝶に雪麗は文句を言うと胡蝶は目を閉じて適当に返事をすると彼女に笑い掛けながら言葉を掛けては扇子を懐から取り出しては妖たちの宴の真中へと移動した。


――結ぶには 何はのものか 結ばれぬ
        風の吹くには 何か靡かぬ――


 目を閉じてすぅっと息を吸い込むと先程の無気力な表情から打って変わって妖艶に微笑んで扇子を構えて色気のある声で歌う。まるで妖に怖気づいていないとばかりに堂々とやり切った。
 

「……終わったんだけど」


 歌い切った胡蝶はピタリと舞も止めて周りの反応を待つが皆彼女をじっと見つめたまま動かないものだから、胡蝶はすっと扇子を持った右手を上から下へ下しては茫然とする妖たちに目を向けて言葉を掛けた。


「すっげぇ…めっちゃ綺麗だった」
「うんうん、あれじゃ天女って言われるのも頷ける」
「本当に月の姫なんだ!!」


 ぽつりと小妖怪が胡蝶を称賛する言葉を述べると次々と小妖怪たちは興奮したように彼女を褒める言葉を次々と声を上げていくと彼らは彼女を本物の月の姫だと信じ込む。


「なんでそーなるのよ…」


 胡蝶は小妖怪たちのその言葉に頭を抱えて嘆くようにポツリと言葉を零した。


「……お前さん、前に見た時と違わなかったか?」
「あんたが覗き見してた時は無意識の舞い。見せる相手によって変えるものよ」
「わ、私が聞いた時とも違いました…」


 何度か胡蝶の舞を見ているぬらりひょんも茫然としており、ぼそっと呟くようにまじまじと彼女を見つめながら問いかけると胡蝶はため息を付いては扇子を閉じる。
 珱姫も先程の彼女の舞に戸惑った表情を見せながら言葉を紡いだ。


「珱に見せた時は笑顔になって欲しかったから…」
「胡蝶…」

 
 彼女の言葉を聞いた胡蝶は優しく珱姫を見つめながら言葉を掛けると彼女の気持ちが嬉しかったのか珱姫は目に涙を浮かべて胡蝶の名前を呼ぶ。


「胡蝶」
「…何、妖」
 

 ぬらりひょんは胡蝶と珱姫のやり取りを見てはまた酒に口を付けていると彼は胡蝶の名前を呼んだ。その声に反応して彼女は珱姫から目を離してぬらりひょんをじっと見て言葉を返す。
 

「ワシと夫婦になろう」
「………………………は?」
 

 ぬらりひょんは不敵に微笑んでたったひとこと胡蝶に言葉を掛けるが、彼女は意味が分からず息を止め数秒固まっていると今だ理解できていない胡蝶は眉間に皺を寄せてたった一文字の疑問の言葉を発したが、それは空気に溶けてしまった。



――予想外の
 プロポーズを受けました


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