「……」
「よー、戻ったぞ」
「胡蝶!」
奴良組の拠点にしていた洛西―島原へと連れて来られた胡蝶は諦めて黙っているとぬらりひょんは胡蝶を下して組員たちに声を掛ける。その言葉に皆振り返って2人のいる方向を見た珱姫は嬉しそうに胡蝶の名前を呼んで駆け寄った。
「ああ、良かった…まさかこのバカが珱を置いて私を迎えに来たとか言った時はどうしてやろうかと思ったけど、御無事で」
「はい…牛鬼様が話し相手になってくださいましたから」
「…なあ、お前さん。ワシの扱い雑すぎやしないか?」
笑みの姿の珱姫を見て胡蝶は安堵の息を吐いて珱姫に言葉を掛けると彼女は眉を下げてここに来てからどうしていたのかを胡蝶に安心させるように伝える。
胡蝶の言葉選びが気に入らなかったぬらりひょんは眉をぴくぴくさせて不満そうに彼女に問いかけたが、胡蝶は彼の問いかけに答えることはせずに無視を決め込んだ。
「ほう〜、それが生きとし生けるものを引き寄せるような歌声を持ち、舞う姿は天女と噂の月の姫ですかぁ〜〜」
(だから、それ違うっての)
ぬらりひょんが連れて来た胡蝶をまじまじと見た妖怪は噂になっている月の姫だと思って言葉を零すと彼女は冷静に心の中で言葉を発した妖怪に突っ込みを入れる。
「ふーんふーん」
(雪麗さんの生めっちゃ綺麗…!!)
「な、何よ」
じと目で上から下まで品定めをするように気に食わなさそうに胡蝶を見ている雪麗の声を聞いて、胡蝶はそちらを見ては目を見開いて彼女の綺麗さに心の中で称賛しているとそれが気に食わなかったのか雪麗は眉を潜めて彼女に問いかける。
「あ、いや、ごめんなさい。綺麗な雪女だなって思って」
「は!?な、何よ!急に!!褒めたって何も出ないわよ!!」
「わー…ツンデレだ…」
まじまじと見ていたのが気に障ったのかと思った胡蝶は雪麗に謝罪をすると見ていた理由を述べると雪麗は予想外の言葉だったのか顔を真っ赤にしてふんと顔を背けて怒ったように声を上げる。その姿を見た胡蝶は感動したかのように嬉しそうにぽつりと言葉を零した。
「どうだ、カラス天狗」
「まいりました。ただの噂だとばかり」
胡蝶と雪麗がそんなやり取りをしている横でぬらりひょんはどや顔でカラス天狗に言葉を掛けると姿を捕らえられたものがいないと噂の月の姫を捕らえたぬらりひょんにカラス天狗は称賛の声を上げた。
「彼女〜〜箱入り娘なんだって!?」
「オレが遊びおしえてやるよ〜〜」
胡蝶の隣にいた珱姫に小妖怪が近寄って彼女に言葉を掛けるとワイワイしながら珱姫を遊びに誘う。
「あの……あの……妖様……胡蝶……」
「楽しんでらっしゃい、珱」
戸惑いながら珱姫は助けを求めようとぬらりひょんと胡蝶に声を掛けるとふっと笑って胡蝶に手を振られて見送られてしまい、珱姫は小妖怪に遊び場に連れて行かれた。
「お前さんはあの中に入らないのか?」
「私は珱の笑顔が見れると渋々ついてきただけ…遊びには入らない」
「お前さんは珱姫命じゃの…」
戸惑いながら連れて行かれている姿を見ていた胡蝶にぬらりひょんはちらっと眼を向けて問いかけると彼女は珱姫を見つめたまま彼の問いかけに答える。ため息を付いて彼女の言葉に嘆くように言葉をぬらりひょんは零した。
「当たり前でしょ。珱がいなければ…私は生きてない」
「は…」
「あの子は私の命の恩人なの」
「……」
胡蝶はふっと笑ってぬらりひょんの方を見て彼の言葉に返すとぬらりひょんは目を見開いて言葉を詰まらせていると胡蝶は珱姫のいる方へ目線を戻して言葉を続ける。
そんな彼女のことをぬらりひょんは何とも言えない顔でじっと見つめていた。
「ど…どーやって遊ぶのですか?私…こういうのは初めてで」
「え〜〜〜〜」
扇子を持たされた珱姫は小妖怪たちに遊び方を聞くと納豆小僧がわざとらしい声を出すとわいわいと遊び方を教える。
「どう?楽しいでしょ?」
「……あの……外は…楽しゅう…ございます」
遊び方を教えてもらった珱姫はその通りに扇子を投げて遊んでみると小妖怪は彼女に問いかける。そして、少し柔らかく嬉しそうに微笑みながら小妖怪の問いかけに答えた。
「あんな笑顔、初めて見た…ありがとね、妖」
「…ふっ……」
(お前さんもそんな顔するところは初めてじゃな)
少し離れたところで見ていた胡蝶はこの世界に来て初めて見た珱姫の表情に嬉しそうに微笑んでぬらりひょんの方を向いてお礼を言う。
ぬらりひょんはその彼女の表情に目を見開いてはふっと微笑んでは胡蝶をまたじっと見つめていた。
――嬉しそうな笑顔を
やっと見れることが出来た喜び