「誰か捕まえてやー!!」
ここは京の都。盛んな街。この世界に来てからだいぶこういう騒動に慣れてきた頃。
胡蝶は団子を咥えながら珱姫に言われたように土産話を探していた所、騒がしくも食い逃げが発生したようだ。彼女はドラマの撮影化のように呑気に眺めていた。
(運が悪い奴と言うか何というか…)
「よっと、待ちな。おにーさん」
たまたま胡蝶の目の前に食い逃げ野郎が逃げてきたので彼女は躊躇いもせずに足を引っ掛けた。前を見ていなかった食い逃げ野郎はどうなるかと言うと…盛大にこけた。
「てめぇー!何しやがるんだ!!」
「いや、アンタこそ何してるんだよ。犯罪だろ」
食い逃げは八つ当たりのように…いや、これは完全に八つ当たりだ。突っかかって来る食い逃げは胡蝶の胸ぐらをつかみ怒りをぶつけてくるが、彼女は飄々とした顔して正論を言うと頭の血管がはち切れそうなほど浮かんでいた。
(……高血圧なら、脳梗塞とか気を付けなよ。って、分からないか、この時代)
強面の食い逃げが文句を言ってるにも関わらず能天気なことを胡蝶は考えていた。
「くそ…へへ、にーちゃんよ、悪く思うなよ」
(うわー今時その台詞ないわー…って、今時じゃなかった)
食い逃げは悪役常套文句を言っては短刀を懐から抜いて胡蝶に攻撃しようとするが、彼女は食い逃げの常套文句にげんなりしていたので全然恐れたりしていたなかった。
「こんのやろっ!いけすかねえ顔しやがって!!」
「遅い」
「ぐはっ!!」
あまりにも恐れたりしていない胡蝶の様子に食い逃げはバカにされているのだろうと自覚したのか額に青筋を浮かせてもはや完全なる八つ当たりのセリフを言って胡蝶に襲い掛かった。
しかし、冷静に状況把握をしていた胡蝶に襲われても引くことはなかった。彼女は呆れた顔して短刀を持っていた手を思い切り蹴りを食らわせ、短刀を捨てさせるとすかさず急所を蹴り上げた。
彼女はある意味、非情だ。男の急所。それはおそらく一つしかないからお分かりだろう。
「う、わぁ…あのにーちゃん、綺麗な顔して容赦ないわぁ。あそこに入れるか?蹴り…同じ男としてどうなんあれ?」
「ほんまやなぁ、食い逃げが可哀想になってきたなぁ」
(え、私悪人デスカ??)
彼女は倒れ込んだ食い逃げの首根っこ掴んで引きずりながら被害にあった店に犯人を引き渡すとさっと去っていくが、周りの目は彼女が非情の人間だとばかりに見ていた。悪人をとっ捕まえた善人なのになぜか周りから悪人のように見られているような気がした胡蝶は内心冷や汗をかく。
先程から胡蝶は男に間違われているのは当然。彼女は男装をしているため、全く女性だと気付かれていないのだ。
(スンマセンネ、男じゃないから気持ちわかりません)
「さって…、目当ての団子も買ったし、帰るか」
ひそひそ話の内容を聞き取っていた彼女は心の中でしらっとしながら謝った。目的の物は既に購入していた為、これ以上好奇の目に晒されたくないと思った彼女はさっさとその場を立ち去ったのだった。
◇◇◇
胡蝶は屋敷へ帰るといそいそと男物から女者の着物へと着替えてとある部屋へと歩き始めた。
「珱姫、只今戻りました」
「胡蝶さん!お帰りなさいませ」
彼女はある部屋の前で立ち止まると扉を開けて最高礼をして自身の主(自称)である珱姫に声をかけると満面の笑顔で出迎えた珱姫だった。
(くそ…可愛すぎる。私が嫁に欲しい…って、駄目だそれは)
胡蝶は珱姫の笑みに惚れ惚れしながらも自身のボケに突っ込みを心の中でいれて首を振ると手土産を持って姫に近づいた。
「今日も京の都はにぎやかでしたよ」
「そうだったのですか?」
「ええ、食い逃げが出ました。あ、これお団子買ってきましたので食べましょう?お茶も入れてきました」
「え、…食い逃げ…あ、ありがとうございます!」
彼女は珱姫の近くに座って笑顔で都の様子を話すと不思議そうに首を傾げながら珱姫は胡蝶に問いかけると彼女は何でもなさそうに淡々とお土産の団子の包みを開けながら先程起きた出来事を答えながら団子を姫に進めると姫は彼女から出た言葉に戸惑いながらもお土産の団子が嬉しかったらしく嬉しそうに胡蝶にお礼を言った。
「その、食い逃げはどうなされたのですか?」
「ああ、何だか慌てたやつでして私の目の前に来たので転ばせました」
「ええ!?」
団子を一口味わいながら食べてお茶を啜った珱姫は先程の彼女の言葉が気になったようで突っ込んで話を聞いていく。胡蝶は口に団子を頬張りながら淡々と簡潔に答えると珱姫はそんなことに関わってきたのかと驚いて目を見開き、声を上げた。
「それで喧嘩を売ってきたので沈めて食い逃げに合った店に引き渡してきましたよ」
「もうっ!何でいつもいつも胡蝶さんは危ないことするんですか!!」
「いや…相手の力量見てやってますから、大丈夫、ですよ?」
胡蝶は呑気にお茶を啜って食い逃げ犯をどうしたのかを語っている姿に珱姫はむっとした顔をして胡蝶に詰め寄ると小言を言い始める。
まさか彼女は珱姫にそんなことを言われると思っていなかったのか戸惑いながら問題ないとばかりに珱姫を落ち着かせようとしていた。
「そう言う問題じゃありません!!それに女の子なのですよ!?」
「す、すみません…」
しかし、それは敵わず更に珱姫は胡蝶に説教をし始めるものだから彼女はただ謝るしかなく縮こまらせていた。
「珱姫様…花開院十三代目・秀元様がお出でになられております」
「あら…、お通ししてください」
「珱姫様、私は下がらせて頂きま−−」
「駄目です」
「……え」
珱姫のお説教をうんうんと聞いていた胡蝶だが、女中が珱姫を尋ねに来て声をかけると珱姫に客人が現れたことを申しだすと彼女は思い出したかのように現在珱姫がいる部屋へと案内するよう女中に言うと女中はかしこまって返事をすると部屋から退席した。
いいタイミングで説教が終わったと思った胡蝶はほっとしてさっさとずら過労と言う魂胆なのか客人来たので下がろうとした彼女は珱姫に一声かけると食い気味に拒否の言葉を珱姫からいただくことになった胡蝶は予想外だったのか声を漏らした。
「貴女も一緒に聞いて頂きたいと先方から伺っていますので、ここに居て下さい」
「は、はい…」
(秀元が私に何の用だよ…)
珱姫は真面目な顔を胡蝶に向けると凛とした声で秀元が来る理由は胡蝶にあることを述べると胡蝶は戸惑いながら返事をせざるおえなかった。胡蝶は頭の後ろをガシガシと掻きながら存在は知っているけれど未だ会ったことない秀元に悪態を付いた。
◇◇◇
「おお、胡蝶ちゃーん!元気になったよーやね。うんうん」
「はあ…おかげさまで」
「それで早速聞きたいねんけど…君はどうしてここにおったん?」
「…それは私も分からないというか説明が難しいというか…」
部屋へ案内された秀元はぶんぶんと胡蝶に向かってフレンドリーに手を振ると勝手に納得する姿に胡蝶は口角を引き攣らせながら返事を返した。
そんな胡蝶を見ながら珱姫たちの近くに寄って腰を落とした秀元は珍しく真剣な表情になり、核心をついてくる。この屋敷の警備体制は厳重だ。そんな中、潜り抜けて庭にいた彼女に問いかける秀元に胡蝶は目を逸らして困ったように言葉をぼかしていた。
「分からへんの?」
「青い蝶を見かけたんです。それで友人に声を掛けたら隣にいなくて…後ろを振り向くとここの庭園にいました。」
「ん〜〜、後ろを向いたらぁ…ね?」
(顔、近い。やめれ)
眉を潜めて再度問いかける秀元に胡蝶は見たまま起きたことをそのまま簡潔に言葉にすると秀元は胡蝶の顔に近づいてじーっと見ながら彼女の説明した言葉を口にしていて、顔の距離が近いことに胡蝶は顔を引き攣らせながら心の中で悪態を付く。
「成程なぁ…、自分あれやであれ」
「あれって何ですか」
「時渡人や…せやろ?」
嘘を付いてないと思ったのかうんうんと頷きながら秀元は胡蝶の顔から離れて手元に持っていた扇子を口に当てながら指示語ばかり出すものだから具体的な言葉を言わない秀元に胡蝶は眉を潜めて淡々と問いかけるが後ろにクエスチョンマークはない。目で催促するように彼女は秀元の言葉を待つと彼は“時渡人”と彼女に言うと答え合わせをするように問いかける。
「えっ、な、何ですか…それは…?」
「あー…なるほど、そうですね……時渡人っていうのかこの時代は」
「珱姫、時渡人と言うのはな?時を超えて過去に来たり未来に行ったりする人のことや。で、彼女はその時渡人なんや」
2人の会話について黙って聞いていた珱姫だが、秀元の言っている言葉が理解できずに戸惑いながら問いかけると##NAME2##は秀元の言った言葉が自分に当てはまると思ったのか納得しては肯定する。
秀元は納得した胡蝶の様子を見てから珱姫に“時渡人”の説明をする。
「そう…だったのですか?」
「隠していたわけではないのですが…説明しにくくて…どの言葉が適切か考えてました」
「で、自分はどこから来たん?未来??」
秀元の信じられない説明に困惑しながら珱姫は胡蝶の顔を見て恐る恐る問いかけると胡蝶は困ったように笑いながら答えた。彼女が説明に困っていたのはトリップという現実では信じられない夢物語なのだ。
それをこの時代に合わせて説明する言葉を選んでいた胡蝶はやっと秀元の言葉にしっくりすることが出来たようだ。秀元は更にその先を知りたいようで首を傾げて胡蝶に問いかけを続けた。
「あー…未来っちゃ未来ですけど…異世界と言うのもまたしかり」
「ってことはーなに、自分…異世界の未来から来たっちゅーことか?」
「まあ、そんな感じですね」
「えええ!!??」
秀元の言葉に胡蝶は言葉を選びながら発言をすると秀元は驚きもせずに簡潔な答えを導き出すと胡蝶はうんうんと首を縦に振って肯定すると傍にいた珱姫が自身の頬に両手を添えて目を見開いて驚きの声を上げた。
「そかそかー、なんや納得したわ」
「納得しちゃいます?」
「あの時の珱姫大変だったんやで?女の子が急に目の前に現れて倒れたーっててんやわんやして」
軽々しく納得する秀元に胡蝶は、あははと笑いながら言葉を返すと彼はケラケラと笑いながらがここに胡蝶が突如現れた時の話を始める。
「ひ、秀元様!!」
「それはすみません」
「で、次元を越えた君は…この世界で月の姫を呼ばれてるちゅー話やなあ、団子もらうでー」
それを話されたことが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にさせて珱姫は秀元に声をかけると胡蝶は申し訳なさそうな顔をして珱姫に謝罪の言葉を述べると珱姫は問題ないとばかりにぶんぶん首を横に振った。大体のことを理解した秀元は軽口を叩きながら胡蝶も珱姫も知らないような話をサラッとして出ていた団子を口に含んだ。
「…………は、なにそれ」
「自分のことなのに知らへんのー?最近、歌ってたりせーへん?」
「何であんたが知ってるんだ」
秀元の発言に言葉を失った胡蝶は何秒か固まっていたがはっと現実に帰った彼女はぼそりと言葉をこぼしていた。団子を頬張りながら秀元が団子が刺さった串を胡蝶に向けて問いかけると胡蝶は間髪入れずに突っ込みを入れた。
「ボクの耳にはいろいろ情報が入ってくんねん。生きとし生けるものを引き寄せるような歌声が聞こえ、時には舞を踊る天女がいるって話や。そやつは突如現れた美しい女やから月の姫と呼ばれてるらしいで」
「何…それ、それ、多分私じゃないですよ。月の姫なんですよね。ありえない……」
(そりゃ、夜中屋敷抜け出して歌ってたり踊ってるけど…いや、でも、なあ…)
また団子を頬張ると詳しく説明を始める秀元に胡蝶は暗い表情を見せながらまるで現実逃避するように否定の言葉を述べると目を逸らして夜な夜な歌ったり踊ったりしていることを思い出してまさかなんて思ったりしてでも、信じたくない彼女はあり得ないと決め込んでは目を閉じてうんうんと頷く。
「何言ってるんですか!胡蝶さん!もっと自分の容姿を見るべきです!!」
「え、ちょ、よ、珱姫…?」
「まあ、自分も気ぃ付けたほうがいいってことや」
「は、はあ…気を付けます」
頷いていた胡蝶に顔を近寄らせて説得させるように力説する珱姫に胡蝶は驚きながら、戸惑って言葉を詰まらせていると呑気な秀元は忠告を胡蝶にすると彼女は素直に肯定の言葉を述べて首を縦に振った。
「そや、自分にこれ上げとくわ」
「これは…?」
「これは妖刀−
秀元は思い出したかのように懐をごそごそと探っては一本の刀を取り出して胡蝶に渡す。
渡された胡蝶は戸惑いながら受け取ると秀元は笑っているのにも関わらず鋭い目をして刀の名を明かして持っているように進める。
「うわぁ…物騒な名前。と言うより私より珱姫に渡してください」
「珱姫には渡してるんや。祢々切丸をな」
「え、そう…なんですか。じゃ、頂きます」
(
渡された名前を聞いた胡蝶は怪訝そうな顔をするが、彼女は自分なんかよりとばかりに珱姫に進めるが既に別の刀を渡されていたことを秀元に明かされると戸惑いながらも貰うことにした。
そして、自分のいた世界との違和感を覚えてまじまじと
「ま、貰えるもんは貰っておこう」
「そうそう、素直に受け取っておきぃ……ほな、またな」
考えてもらちが明かないものだからなのか気楽に考えることにしたのか先程と顔つきが打って変わって呑気に笑うと秀元もケラケラと笑いながら胡蝶の言葉に同意して別れの挨拶をしてひらひらと手を振りながら去っていった。
「良かったですね、胡蝶さん」
「あの、珱姫。お願いがあるんですが…」
「はい、何でしょうか」
「呼び捨てしてもらえませんか?さん付けはどうも慣れなくて…」
柔らかい笑顔で胡蝶を呼ぶ珱姫に胡蝶は違和感を覚えていたらしく恐る恐るお願いを彼女にしようとすると嬉しそうに珱姫は返事をする。
頭の後ろをかきながら困った顔をしながらお願いする胡蝶を見ては珱姫はきょとんとした顔をしていた。
「それでしたら私のことも珱と呼んで下さい!」
「え、な、なぜそうなるのですか?」
「私だけではずるいです。お互いならずるくないでしょう?」
(ずるいのは珱姫のその可愛い笑顔…!)
珱姫は胡蝶の言葉ににっこりと微笑んで姫自身のことを呼び捨てにするならばと条件を出す。胡蝶にとっては予想外の返答で困惑した顔で問いかけると珱姫はむっとした顔をして理由を述べて首を傾げる。
知ってか知らずか珱姫のやっている行動は##NAME2##のハートを掴むようで彼女は胸を押さえてときめきを覚えながらも心の中で呟いていた。
「はぁ…姫には勝てる気がしません。では…2人の時はそう呼びます、珱」
「はい、胡蝶。ありがとうございます」
「それはこちらのセリフですよ」
珱姫の表情を見る限り引く気のない様子だったのは一目瞭然だったためか胡蝶はため息を付いて降参とばかりに両手を上げるとふっと笑いながら珱姫を呼び捨てすると満足そうに笑いながら珱姫も胡蝶を呼ぶ捨てにしてお礼を言う。
そんな姫を見ては眉を下げて微笑みながら言葉を返す胡蝶だった。
――初めまして
そーいうや、秀元に自己紹介して…まあ、いいか。