「胡蝶…?」
「あ、す、すみません…珱。どうかしましたか?」
昼餉を食べ終わり、眠くなりそうな日を浴びていたせいなのか胡蝶はぼーっと庭を見ていると不思議に思ったのか珱姫は心配そうな顔をしながら、胡蝶に声を掛ける。 彼女ははっとした顔をして珱姫の方を見て眉下げて謝ると何かあったかと声を掛ける。
「最近ボーっとしている事多いですね、何かありましたか?」
「……何もありませんよ」
珱姫はじっと胡蝶を見つめながら問いかけると胡蝶は少し瞳孔を開くが珱姫にバレないようにポーカーフェイスを保って否定の言葉を返す。
「…元いた世界に戻りたいんですか?」
「それは…少しあります」
珱姫は瞳を揺らして胡蝶に不安そうに問いかけると彼女は言葉に詰まりながらも正直な気持ちを口にした。
「……そう、ですよね。その方が胡蝶の為なのに…何言っているんでしょう…私は」
(もう少ししたらきっと…あいつの迎えが来る…その時私は、立ち向かえるのかな…)
「……胡蝶?」
珱姫は胡蝶の言葉に自分を納得させるように言葉を紡ぐけれど、珱姫自身胡蝶が元の世界に戻ることを考えたら複雑なのか眉下げて言葉を続けていたが、胡蝶は彼女の言葉は耳に入っておらずこれから命がけのやり取りが始めることに怯えているのか若干手が震えており、左手を抑えるように右手で握って震えを止めようとしていると珱姫が何も返事をしない彼女の名前を呼ぶ。
「ふふ…帰れる方法がないんですし、考えるだけ無駄ですね」
「そんなことありません…!!」
胡蝶は気取られないように眉を下げて笑いながら珱姫の言葉に返事を返すと珱姫はキッと眉を吊り上げ手胡蝶の言葉を否定した。
しかし、その否定の言葉はどこか温かみのある言葉だった。
「あなたが帰りたいと望むのなら…私もお手伝いさせて頂きます。秀元様にもお願いしましょう?」
「珱……」
珱姫は胡蝶の手をぎゅっと握って真剣な眼差しで彼女の瞳を覗き込む。その彼女の言葉の優しさに胡蝶は震えていた手が止まり珱姫の名前を呟くように呼んだ。
「…でも、本当は私の素直な気持ちを言うと…初めて出来た友人がいなくなってしまうのは寂しいですけどね……こんなこと言ってごめんなさい」
「いいえ、私も珱と離れてしまうのは寂しいです…帰るのはきっと先のことになると思うから…考えるのをやめましょうか」
寂しそうに微笑む珱姫は素直な気持ちを胡蝶に打ち明けると胡蝶は目を見開いて驚いてはふっと笑いながら自身の気持ちを打ち明けた。
そして、息を吐いて諦めたように笑いながら元いた世界に帰る話を強制的に終わらすような言葉を掛ける。
「…同じ思いでいてくれてるのは嬉しいです」
「当然です、あなたがいなかったら私はこの世界で生きていませんし」
「くすくす…大げさですよ」
複雑そうな笑みを浮かべながらも言葉を返す珱姫に胡蝶は安心させるように微笑んで言葉を紡ぐと珱姫はやっと笑顔になり、微笑みながら彼女の言った言葉を大げさだと返す。
「大げさじゃありません」
「…あ、思い出したのですが…」
「何がですか?」
やっと笑った珱姫にほっとした顔をして彼女の言葉に優しく否定すると珱姫はふと思い出したかのように言葉を紡ぐと胡蝶は首を傾げて問いかけた。
「妖様といつからお知り合いに…?」
「ああ、あいつですか…」
珱姫はただただ不思議そうに問いかけると胡蝶は珱姫に見せる表情としては非常に珍しいほどに気だるそうな顔をして噂の人物のことを思い出す。
「くすくす…はい」
「急に目の前に現れて月の姫かって聞かれたのが最初ですね…」
「あら…妖様は月の姫を探してたのですね」
気だるそうな顔をする胡蝶に思わず珱姫は笑うと胡蝶は眉間に皺を寄せて出会いを簡潔に彼女に答えると珱姫は納得したように言葉を返した。
「違うって言ってるのにしつこいんです」
「ふふ…胡蝶は妖様と仲がいいんですね」
「はい?」
胡蝶は出会った当初のことを思い出してむっとした顔をして珱姫に話すとそんな胡蝶を見て楽しそうに微笑んで彼女にとっては爆弾発言を珱姫はした。
珱姫の投下した言葉は胡蝶を固まらせてしまい、引き攣った顔で問いかける。
「あら…違いましたか?」
「なんでそうなるんですか…?」
胡蝶の反応に不思議そうに珱姫は問いかけると困ったような顔をして逆に##NAME2##が珱姫に問いかける。
「胡蝶があんなに自然に言葉を発している姿を見たら分かりますよ」
「あれはアイツがしつこいからです」
穏やかに微笑みながら胡蝶の問いかけに珱姫は答えると胡蝶はむっと顔をして珍しく反論するように言葉を紡ぐ。
「私には敬語なのに妖様にはそうじゃないじゃないですか」
「それは敬語を使うに値しない奴だからです」
「気を許しているように感じました」
「……今日は珱は意地悪です」
珱姫もむっとした顔をして胡蝶に言葉を返すと胡蝶はしれっともっともらしい言葉を珱姫に返すが、一歩も引かない珱姫の言葉に胡蝶は拗ねたように言葉を返した。
「私もあなたの気を許してもらえる存在になりたいんです」
「…もうなってますよ、十分」
珱姫は胡蝶の顔にずいっと近寄って自身の気持ちを伝えると胡蝶は少し驚いた顔をしてはふっと笑い掛けて言葉を返した。
「…匂い…生肝…生肝寄越せー!!」
「「!!?」」
珱姫と胡蝶が会話をしている中、かすかに聞こえてくる言葉はだんだんと彼女らに近づいていた。
声のする方向を見るとそこには空を飛んで珱姫を狙っているように手を伸ばす妖の姿。
「っ!!」
「ギャー!!!」
胡蝶は咄嗟に珱姫を自身の背に隠すように庇って秀元から受け取っていた
上半身と下半身を真っ二つにされた妖怪は叫び声を上げて息絶える。
「…胡蝶!!」
「……怪我はありませんか、珱」
「私は大丈夫です!あなたは…!」
思い切り切ったことによって返り血を浴びた胡蝶は肩で呼吸していると彼女の後ろにいた珱姫が彼女の名前を呼ぶ。
胡蝶は珱姫の方を向こうとはせずに言葉を自身の後ろにいる珱姫に投げかけた。珱姫は胡蝶の問いかけに肯定すると彼女の身の安否を確認する。
「私は大丈夫です…」
「珱姫!!胡蝶殿!!………!?」
「あ、是光様…丁度良かった。着物が汚れたので着替えます。珱姫のことを頼みます」
覇気のない声で珱姫の問いかけに胡蝶は答えると騒ぎに駆け付けた是光はバンっと戸を開けて2人の名前を呼ぶと真っ二つにされた妖怪と返り血を浴びた胡蝶の姿に驚いて目を見開く。
胡蝶はほっとした顔をして是光に話しかけて珱姫の警護を頼むと彼女はその部屋から立ち去った。
◇◇◇
「思ってたより…キツイ……」
彼女は女中にまず湯を浴びろと説教されて風呂へと通されると一人きりになった空間の中でやっと零れた言葉は彼女の弱音だった。
「珱姫を守るためとは言っても殺したのは変わりないんだよね…」
(血の匂い…切った感触…切った時の断末魔の声…全部が本当で現実…)
桶に湯をすくって桶の中で揺れる水面を見つめて悲しそうな顔をする。
そして、誰の耳にも届かない言葉をポツリと呟くと目を伏せて先程実感した現実に逃げたくなる心境になっていた。
「甘かった…私は」
思い切りお湯を頭からバシャっとかけて自信を責めたてるように言葉を零す彼女は今にも泣きそうな顔をしていた。
――現実は
そんなに甘くないと思い知らされた