#10




(平和だなぁ…黄色いタコが授業していることと三日月が見えることを除いて)


 ルナはボーっとしながら黄色いタコ…マッハ20の超生物の授業を聞きながらそんな呑気のことを思っていた。


(3年の始め、私たちは2つの事件に同時に逢った)

 
 ルナは窓から壊された三日月を見て、マッハ20の超生物がこの教室に来た時のことを思い出す。



◇◇◇



「初めまして、私が月をった犯人です。来年には地球をる予定です」


 教壇に立った謎の黄色いタコのような生物は口角を上げて突然とんでもないことを口にした。


「君達の担任になったのでどうぞよろしく」


 黒いスーツを着た大人たちが黄色いタコに銃を向けている中、超生物は飄々と挨拶をする。


(まず5,6か所突っ込ませて…!!)


 ルナ含むE組生徒達は冷や汗を掻いて黙って聞いていたが心の中では突っ込みを入れている。


「防衛省の烏間という者だ。まずここからの話は国家機密だと理解頂きたい…単刀直入に言う。この怪物を君達に殺して欲しい!!」
(な、何なの!?)
「…え、何スか?そいつ攻めて来た宇宙人か何かスか?」
「失礼な!生まれも育ちも地球ですよ」

 
 黒いスーツを着た烏間は教壇に立ち、生徒達に衝撃的な依頼をしてくる。

 彼のその言葉に生徒達は目を見開いて驚き、ルナも物騒な言葉に手を握りしめて聞いていた。

 クラスを代表して疑問を三村が烏間に問いかけるが、その問いかけは黄色いタコ本人が返答するとプンプンと顔を赤くして怒っていた。


「詳しいことを話せないのは申し訳ないが、こいつが言った事は事実だ。月を壊したこの生物は来年の3月…地球をも破壊する」


 また淡々と説明をする烏間に生徒達はつばを飲み込んで耳を傾けていた。


「この事を知っているのは各国首脳だけ。世界がパニックになる前に…秘密裏にこいつを殺す努力をしている…つまり、暗殺だ」


 烏間はすっと懐からナイフを取り出して超生物に当てようと殺す気で振るうが余裕で躱されてしまう。


「だが、こいつはとにかく速い!!殺すどころか眉毛の手入れをされてる始末だ!!丁寧にな!!」

 
 何度も殺そうとナイフを振るう烏間にからかうように避けて何故か烏間の眉を手入れする超生物に生徒達は冷や汗を掻いて見守る。


「つまり、こいつが本気で逃げれば満月を三日月に帰るほどのパワーを持つ超生物だ。最高速度は実にマッハ20!!我々は破滅の時まで手も足も出ない」
「ま、それでは面白くないのでね。私から国に提案したのです。殺されるのはゴメンですが…椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならやってもいいと」


 烏間は生徒達の方へ体を向けて更に説明を続けると超生物はポンと烏間の肩を叩いて烏間の言葉に続いて補足をする。

 
((何で!?))


 超生物の言葉に更に疑問を持った生徒達は心の中で問いかけるが、誰も口に出そうとする者はいなかった。


「こいつの狙いはわからん。だが政府はやむなく承諾した。君たち生徒に絶対に危害を加えない事が条件だ」
(承諾しちゃったの!?)
 

 さらりと更に爆弾発言する烏間にルナは心の中で突っ込みを入れる。

 
「理由は2つ。教師として毎日教室に来るなら監視ができるし…何よりも30人もの人間が……至近距離からこいつを殺すチャンスを得る!!」
(わ、分からなくないけど…でも…)


 あり得ない承諾をした理由を烏間はもっともらしく述べると納得しそうになるルナだが、そんな荷の重いことをさせられる重圧に戸惑った顔を見せた。


「成功報酬は百億円!当然の額だ。暗殺の成功は冗談抜きで地球を救う事なのだから」
「¥!?」
(……みんな、目の色変わっちゃった…あはは)


 烏間は更に続けて中学生には…いや、大人でも聞いたら驚くような金額を提示するものだから色んな思いを持っていた生徒達はその思いをふっ飛ばして金に目がくらむ。

 その様子を後ろの席から見ていたルナは困った顔をしながらクラスメイトを観察していた。


「幸いなことにこいつは君達をナメ切っている。見ろ、緑のしましまになった時はナメてる顔だ」
((どんな皮膚だよ!?))


 烏間は眉間に皺を寄せ冷や汗を掻きながら超生物を親指で指して言葉を生徒達に掛けると超生物は黄色と緑のしましま模様になっており、その事実を目の当たりにした生徒達は心の中で突っ込みを入れる。

 
「当然でしょう、国がれない私を君達がれるわけがない。最新鋭の戦闘機に襲われた時も…逆に空中でワックスをかけてやりましたよ」
((だから、なぜ手入れする!?))


 口角を上げた超生物は中学生に殺れるわけがないと断言するとその理由もちゃんと言葉にするが、生徒達はそんなことよりも手入れをすることに気になって仕方なかった。


「そのスキをあわよくば君達に突いて欲しい。君達には無害でこいつには効く弾とナイフを支給する。君達の家族や友人には絶対に秘密だ。とにかく時間がない。地球が消えれば逃げる場所などどこにも無い!」
「そういう事です。さあ、皆さん…残された一年を有意義に過ごしましょう!」


 防衛省の女性がナイフや銃を生徒達に見せると烏間は女性が見せている武器を指差して説明を終えた。

 超生物はにやりと笑ってE組生徒たちに教師らしい言葉を投げかけたのだ。



◇◇◇



「ルナ!今日のお菓子は何!?」
「じゃーん!今日はマカロン作ってみました♪」
「わぁ、美味しそー!」
 

 授業が終わり、昼休み…弁当とお菓子を持って茅野の机に移動したルナに茅野は目を輝かして彼女に問うとルナは嬉しそうな顔をしてラッピングされたお菓子を見せて何を作ったのかを答えると茅野はテンションを上げる。

 
「藤原さん、本当にすごいよね」
「これしか取り柄ないから…えへへ」
「十分!十分だよ!」


 隣から渚が声を掛けてくるとルナに讃嘆の声をあげると照れくさそうにルナは自分を卑下する言葉を言うが、茅野は顔を近づけて力説するように言葉をルナに投げかける。

 
「あはは…ありがとう、カエデちゃん」
「なあなあ、俺にもくれよ」
「私のは渡さなーい!」
「ま、まだあるから食べて」

 
 ルナは力説する茅野に眉を下げてお礼を言うと渚とご飯を食べていた杉野が会話に加わると茅野は貰った自分のお菓子を死守するように声を上げるとその必死な姿にルナは眉下げて笑いながら杉野にマカロンを渡す。


(とびきりおいしいお菓子作って待ってるよ…だから、)

 
 ルナは自分の隣の席…今は誰も座ってない席をちらっと見て少し寂しそうな顔をしていた。



―ねえ 残さないで―



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