#9




「ひぇ〜…や、やっぱり山登りきついなぁ」


 E組宣告されてあっという間に3年生になったルナ。

 本校舎を通り過ぎて山道を歩くが急な坂道にポツリと言葉を漏らした。


(E組に来てだいぶ経って…仲良くしてくれる子も出来た)


 2年の時、自身のクラスで大半の女子にハブられた記憶からその事実は知れ渡っていたが、そんな彼女にも友と呼べる人が出来て少しの安堵を覚える。

 ルナは坂道を何とか登り切ると古びた校舎に入っていき、E組の教室へと入ると席替えもされていない変わらない自席…廊下側から4列目の一番後ろの席へと座った。


「あ、藤原さん。おはよう」


 名前を呼ばれて声のする方へ顔を向けるとそこには水色の髪をした男の子が立っていた。
 

「おはよー、渚くん…あ、あれ?イメチェンしたの?」
「え、ああ…茅野にやってもらったんだ」


 2年の頃も同じクラスだった潮田渚が立っており、彼だと分かると挨拶を返す。

 そして、いつもと違う見た目をする彼に違和感を覚えたルナはその事について渚に問いかけると彼は眉を下げて彼女の問いに答えた。


「茅野…?」
「あ、私のこと!転校してきてすぐE組に来たんだ…」
「そうなんだ…これからよろしくね」
「うん…よろしく!」


 茅野というルナに聞き覚えのないルナは首を傾げて鸚鵡返しすると渚の後ろからひょこりと現れた緑のツインテールの女の子が手を上げてルナに転校早々E組へ来てしまったことに困った顔をしながら声を掛ける。

 このクラスはレッテルを張られてる事で有名だ。

 だから、ルナは眉を下げて彼女の複雑な思いを察したつもりなんだろう。

 ルナは当たり障りのない言葉を茅野に掛けて微笑んだ。

 そんな彼女の微笑みにつられてか茅野も微笑んで言葉を返す。


「茅野さん上手だね!渚くん似合ってるよ〜」
「ありがとう!」
「あ、ありがとう…」
 

 渚の髪を結んだことを茅野に褒め言葉を投げると渚の方を向いて似合ってると褒め言葉を掛ける。

 褒められた茅野は嬉しそうに笑ってお礼を言うと隣にいた渚は少し照れくさそうに笑ってお礼を言った。


「あ…また懲りずに持ってきちゃった…2人とも良かったら貰ってくれる?」
 

 2人の笑顔を見ていたらふと思い出すように鞄からラッピングされたものを取り出す。

 カルマに渡す為、友人に渡す為に作って今や、習慣になっているお菓子作り。

 友人だと思ってた人たちに捨てられてしまってから渡すことが少し怖くなって未だE組のクラスメイトに渡すことが出来なかったお菓子を少しためらいながら2人に手作りお菓子を見せて問いかけた。


「え、いいの?」
「もしかして、手作り!?」


 少し驚いた顔をして渚はルナに問い掛けると彼の隣にいた茅野は目を輝かして彼とは別の問い掛けを彼女にする。
 

「ふふ、うん…いつも持ってきてるんだけど誰にも渡せてなくて…作るのが習慣になってるから毎日余ってしょうがないの…食べてくれると嬉しいなぁ」
「ありがとう、頂くね」
「私も!ありがとう!」


 2人の反応が今まで見てきた人たちと違う反応にルナは思わず笑みが零れた。

 少し困った顔をして2人に食べて欲しいと伝えるとふわっと渚が微笑んでお礼を言い、茅野も明るい笑顔を見せてお礼を言って二人はルナからお菓子を受け取った。


「あの…おこがましんだけど、作るの本当に習慣で…良かったらこれからも渡してもいいかな…?気付いたら一人で食べられない量になってるの」
「もちろん!むしろwelcome!お菓子は人類の味方だよ!!」
「あはは…茅野は甘いの好きなんだね…僕も貰えたら嬉しいな」
「2人とも…ありがと!」


 ルナは勇気を振り絞って2人にお菓子をこれからも渡していいかと言う問いかけをする。

 彼女にとって友人だと思ってた人たちに擦れられたお菓子のことがあり、大分勇気を振り絞った言葉だ。

 不安そうに2人をルナは見ると嬉しそうにルナに声を掛ける茅野。

 そして、そんな茅野に突っ込みを入れては渚も彼女の言葉を受け入れた。

 その2人の言葉がルナにとっては掬いの言葉だろう…彼女は嬉しそうに微笑んでお礼を言った。


(…いつでも、渡せるように1つは持っておこうっと)


 2人が自席に戻っていく姿を見た後、自分のカバンの中に入ってる1つのお菓子を見つめてある人物のことを思い浮かべる。


(…また同じクラスになれるんだから…待ってるからね、赤羽くん)


 E組という差別対象のクラスに入っても彼女は他のみんなより落ち込んでいなくてむしろポジティブにとある人物…カルマと同じクラスになれることを喜んでいた。


(これは私だけのヒミツ…信じてるから)


 お菓子を大事そうに見つめてルナはカルマのことを想った。



―一人だけのヒミツにしちゃえ…―



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