#9




 
「…岩ちゃん」
「なんだ」
「何であそこにくるみがいるの!?」

 俺は部活が終わった後岩ちゃんに誘われて小さなライブハウスに来ている。
 雰囲気がよく客は皆まだかまだかと今日主役のバンドを心待ちにしていた。

 へぇ、岩ちゃんってこんな趣味あったんだ。
 くらいの気持ちで付いてきて辺りを観察してた。
 照明が暗くなってくるとライブが始まるんだと思った俺は舞台へと目を向けるとバンドメンバーたちがぞろぞろと袖から出てくる。

 そして、その中に良く見知ってる人物がいたんだ。
 そう、くるみだった。
 いつもより化粧をして雰囲気も違うけど絶対彼女だという確信があった。

 一体どういうこと!?

「やっぱ分かったか」
「いや、分かるでしょ!!ていうか、何であそこにいんの!?」
「あいつ、あのバンドのボーカルなんだってよ」
「何でそんなこと岩ちゃん知ってるの!?俺初耳だよ!?…ていうか、何あの格好!?露出高すぎでしょ!!」

 岩ちゃんは俺の反応が分かってたのか平然と前を見ながら言葉を返してくると俺は意味が良く分からなくて岩ちゃんの肩を掴んで揺らしながら質問をすると俺の質問に答えながら揺らすなと俺の頭を叩いてきた。
 痛いと思いながらも俺はそれどころじゃなくて更に岩ちゃんに声を上げて問い掛けていた。

「前にダチに連れられてきたときに見つけた。で、くるみに口止めされた」
「何で!?」
「バンドは色々あって入ったらしい。あいつ、目立つの苦手だろ?で、結構演出とか凝ってるから知り合いに…特に俺らにバレたくなかったんだと…毎回テーマがあるらしいくらいしか俺は知らん」

 岩ちゃんは実に冷静に簡潔に俺の問いかけに答えてくれたけど、俺はその答えに解せなくて問い詰めると面倒くさそうに詳しく話してくれた。けれど、くるみの衣装については想定外だったらしくて困った顔をしていた。

「でも、岩ちゃんには早速バレたから口止めしたってこと?」
「そういうこと…あと、あそこに中島も居るぞ」
「あ、ホントだ」

 岩ちゃんの回答に俺はやっと理解する気になって俺の解釈があってるか聞いてみると岩ちゃんは首を縦に振って肯定した。
 そして、岩ちゃんは舞台の右側を指差して中島敦が居ることを教えてくれた。

 同じバンドメンバーってことは…夜呼び出されたのは練習ってこと?
 なんて考えると今までわけが分からないけど突如現れた中島敦の謎が解けたような気がした。

「ようこそ、おいでなんした。主さまがた。今宵はわっちたちと素敵な一夜を過ごしておくんなまし」
「「ヒュー!!Rui−!!」」
 
 中央に立ったくるみはゆっくりと口を開いて言葉を紡ぎ出すけど、俺の知ってるいつもの彼女の声ではなくて…あの優しい癒し声とは真逆で妖艶で色気100%の声で俺は驚きを隠せずに口を開けてぼーっと彼女を眺めていた。
 周りからはノリノリの声でくるみを呼ぶ声が聞こえていた。
 ……何、あんな声出るの!?初めて聞いたよ!?
 くるみは自分だとバレるのが相当嫌だったらしくRuiは偽名だとさっき岩ちゃんに教えてもらった。

「雨が降る夜、店でお待ちしておりんす…」

 彼女はとても艶のある声でそうマイク越しに呟けば持っていた三味線を弾き始めるとドラムやベース、ギターは彼女のリズムに合わせて音楽を奏で始めた。

 いつもそばに居た幼馴染は今、舞台の上で歌ってる。
 この事実は変わらないのに全く知らない人に見えた。


俺の幼馴染は

―バンドのボーカルだった―


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