#13




「………」

 私がライブハウスから出るとそこに居たのは徹だった。
 待ち伏せされていたんだろうけどまさかされてるなんて思わなくて私は呆然と彼を見てしまった。

「お疲れ様、一緒に帰ろ?」
「………」
 
 ぎこちない笑顔を見せながら徹は私に労わりの言葉を掛けると一緒に帰ろうと言ってきた。
 夜も遅いから送ってくとかそう言った意味合いで待ち伏せしてたんだろう、どこまでいい奴なんだろう。

 喧嘩…をしてひどい言葉を言って仲直りしてない中、よく分からない企画の勝利品という名の罰ゲームをやった手前、平然とする彼に言葉を返す余裕はなくて私は無視して彼の目の前を通り過ぎた。
 
「え、待って待って!」
「……んで、」
「え…?」
「何で、そんな平然としてられるの?」

 まさか私が無視すると思ってなかったのか徹は慌てて私を追いかけながら声を掛けるから何であんなに冷たくしたのに…企画であんなこともしたのにいつもと変わらないんだろうと不思議に思った私は思った言葉をそのまま口から出していた。
 
「え、あ、や…そんなこと…」
「何で居たの」
「岩ちゃんに誘われて…」

 徹は言葉に詰まっていたけど、その意図が私には分からないし、何でこのライブに来ていたのかも分からない私はいつもより低くて冷たい声で彼の顔を見ずに問い詰めるような言葉を紡ぐと彼はすぐに白状した。

 …やっぱりはじめちゃんが元凶ね。
 そうだよね、だと思ってた。

「ていうか、何勝ってんの?」
「それは…ていうか仕方ないでしょ」
 
 私はあんな羞恥をすることになった原因は中島君だということは理解してるけれど、それでも徹に当たらずにはいられなくて冷たい言い方をすると拗ねたような口調で言葉が返って来た。

 そりゃそうだよね、あんなの運だし。分からないもん。
 でも、ごめん。恥ずかしくて八つ当たり。
 好きな人相手に公衆の面前であれをやるのは公開処刑だもん。

「……私、まだ怒ってる」
「………」
「でも、言っちゃいけないこと言った」

 私はぴたりと足を止めて言った言葉はもちろん信じてもらえなかった日のことを言っていて私の言葉に徹はただ黙っていた。

 怒ってるよ。
 だってあんなに信じてもらえないなんてショックだったもん。

 でも、言っちゃいけない言葉…傷つける言葉を言ったのは私も一緒。

「ごめんね、だいっきらいなんて言って…あと話したくもないって避けて」

 私ははくるっと彼のほうを向いてあの日のこととか次の日のこととか謝った。

「俺の方こそ、くるみの言葉信じなくてごめん……中島から電話あったのってバンド練習だったんだね」
「うん…徹にバレたくなくて言いたくなくて隠してたんだよね…こんなに早くバレちゃうなら隠してたのが阿呆みたいだね」

  徹は私が謝ったことに驚いては困った顔をしながら申し訳なさそうに謝ってくるとあの時の電話はなんだったのか予測してたのかそのことにも触れてきて私は苦笑しながら彼女が隠していたことを話した。

「何でバレたくなかったの?」
「私、歌うと曲に合わせて変わっちゃうんだ。それを普段の私を知ってる人に知られるのが恥ずかしかったから…はじめちゃんにはすぐバレたけど徹にバレてなかったから口止めしてもらってたの」

ここまでバレてるならもういいやと思った私は彼の問いに丁寧に答えていく。

「あの企画ってこれからもやってくの?」
「や、やらない…っ!今回限り!!というか忘れて!!」
 
 バレてしまった今となっては聞かれたことは何でも答えようと思ってたけど、まさかそこも掘り出されると思わなくて驚きながら否定した。あの時のことを思い出して顔が熱くなりながら今日のことを忘れてほしいというと不服そうな顔をした。
 
「えー…ヤダ」
「ヤダじゃない!!」

 徹は拗ねた顔をして“NO”の返事をしてくるから私は思わず声を上げて必死になった。

 本当にやめて、あれは黒歴史…!!!

「そういえば…分かったよ」
「な、何が…?」
「好きの反対は嫌いで、愛してるの反対は?ってやつ」

 怒ってる…というか止めたくて必死な私を見て徹は笑っていた。
 こんな感じも久しぶりな気がすると思ってたら彼は話を変えて私を見つめてくるから私は戸惑いながら徹に問い掛けた。
 そして、彼は私が出した問題の件だというと私は目を見開いて驚いていた。

「そっか…」
「俺、ひどい奴だったんだね」
「うん、ひどい奴だったよ」

 私は思ってたより早く分かったんだなって思ったらそんな言葉が出た。
 徹は申し訳なさそうに自分の今までの行動の悪い部分を認める様な言葉を言うから私はそれに同調した。

「…好きでも嫌いでもないって“どうでもいい”って言ってるようなものだもんね」
「ん…でも、分かったならもう大丈夫じゃない?」

 彼は自嘲しながら彼が私にフラれたと言ってきた日に私が言いたかったことに納得すると私は首を縦に振りながら前向きな言葉を掛けてみる。

「……くるみ」
「バレーのプレーだとちゃんと選手のこと観察して把握してるくせに彼女のことになると出来ないとかおバカだよね……次の彼女は大切にしなさいよね」

 徹は私の名前を呼ぶけど、私は呆れた声を出しながら彼のことをバカにするような言葉を紡ぐ。

 これから徹に彼女が出来たとしたらきっと私の元にもう来る回数は減る。
 大切なことに気づけたから…今までのようにもうフラれないと思う。

 そう思ったら寂しくなってきたけど悟られないように私は笑いながら彼を励ます言葉を口にした。

「……うん、そうする」

 彼は私の顔を見て首を縦に振って肯定すると優しく微笑んだ。
 私たちはこれで仲直りをして仲のいい幼馴染の位置に戻れた。

 あとは、今まで通り。
 私の想いは気付かれないように。
 そっと奥に閉まっておくだけ。


仲直りをして

―貴方への想いは閉じ込めて―


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