「おい、クソ及川」
「………」
「お前、何したんだよ」
岩ちゃんに険しい顔で名前を呼ばれた俺は何も返事もできずただぼーっと空を見上げていた。
そして、深いため息をついて岩ちゃんは何をしたと俺に問い掛けてくる。
岩ちゃんが何でこんなことを聞いてくるのかと言うと…
「岩ちゃーん、電子辞書貸して?俺の電池切れちゃって…」
「もう貸しちまったから無理。くるみに借りろよ」
「あー…分かった〜……くるみ〜!」
6限目の授業が現代文だったんだけど俺が持ってる電子辞書が生憎電池切れで岩ちゃんに借りに隣の教室に行ったことが事の始まり。
岩ちゃんは既に他の誰かに貸していてくるみに借りるよう促してくるんだけど…昨日の今日でさすがの俺も気まずい。
と思ってもそれを素直に言えなくてのこのことくるみのところまで行くことにした。
「………」
「あのさ、俺の電子辞書電池切れちゃっててさ〜…貸してくれる?」
「ん。」
くるみは本を読みながらちらっと俺の方を見る。
若干目の淵が赤くなっていて俺が去った後も泣いたんだろうと思うと罪悪感を感じた。
歯切れ悪く電子辞書を貸してもらえるか聞いてみると彼女は机の中から電子辞書を出して俺に渡してくれた。
「ありがとう」
「……返す時ははじめちゃんに渡して」
良かった…!貸してくれるんだ!!
そう思って安堵してお礼を言うと思ってもみなかった言葉が返ってきた。
そして、彼女の声は今まで聞いたことの無い温度を感じない声だった。
え、岩ちゃんに渡すの?
「……え?くるみにじゃダメなの?」
「…………及川くん。私、今貴方と話したくもないの。ごめんなさい。」
思った疑問をそのまま彼女に伝える。
直接くるみに渡せば済む話なのに何で?って思った。
けど、彼女は俺の顔を見てにっこり微笑んでははっきり俺を拒絶する言葉を口にした。
この言葉に俺はどれだけ彼女を傷付けたのかやっと理解した。
彼女との心の距離は近かったはずなのに今はとてつもない亀裂が入ってることを実感した。
それから俺は何となく6限目の授業を受けて部活前に岩ちゃんにくるみに借りた電子辞書を渡したところで冒頭に戻る。
「昨日さ……泣かせちゃったんだよね…」
「はあ??」
俺はかなり落ち込みながら岩ちゃんにポツリと言葉を零すと彼は眉間に皺を寄せて聞き返してきた。
それで昨日のことを岩ちゃんに話すと岩ちゃんはかなり深いため息をついて俺を殴った。
「いった!!何すんの!?」
「お前はホンットにクソ及川だな!!」
「うぐ…」
思い切り殴られると俺は痛みで声を上げて抗議すると岩ちゃんは俺に怒鳴る。
くるみを泣かせた手前何も言えない俺は言葉を飲み込んだ。
「謝って来いって言いたい所だけどどうせ聞く耳持たねぇだろ、あいつ」
「多分ね……"及川くん"って言われたし」
「……………………お前、終わったな」
岩ちゃんは自分の頭をガシガシかきながらどうすんだよとばかりにくるみのことを話す。
俺も岩ちゃんに同意して言われた言葉を思い出してそれを伝える。
他の人に"及川くん"なんて呼ばれるのは普通だし何とも思わないけどくるみに言われると胸が苦しくなると言うか悲しくなった。
俺が言われた言葉を呟くと岩ちゃんは落ち込んでる俺を見て酷いけど本当にその通りだと思う言葉を口にした。
「ねぇ、岩ちゃん」
「…なんだよ」
「好きの反対は嫌いだけど愛してるの反対ってなんだと思う?」
俺は自嘲しながら岩ちゃんに声を掛けると岩ちゃんは反応してくれる。
ふと思い出したくるみに出された問題を岩ちゃんに聞いてみることにした。
「はあ?何だよ、それ」
「くるみが…俺に出した問題。全然分からないんだよねぇ…これが分かれば誰かと付き合っても別れなくなると思うって言われたんだ」
「んなの、自分で考えろ」
岩ちゃんは眉間に皺を寄せて問題の意図がわからないとばかりに俺に言葉を返してくる。
俺は岩ちゃんに彼女に出された問題であることと言われた言葉を伝えると岩ちゃんは俺に丸投げした。
そこは甘えるなってことね…。
大体いつも彼女が問題に出す時は俺が考えないといけない問題だったりする。
ちゃんと考えて答えを出さないと…だよね。
そんなことを考えていたら着替え終わっていていつものようにアップをすることにした。
そろそろ問題と
―向き合わないといけないらしい―