『黙秘』
この学園に来てから溜めていたものを吐き出すように泣いた明莉は目を少し腫らしていたが、ほんの少しだがすっきりしたような表情をしており、落ち着いたと見た龍也は彼女に問いたかったもうひとつの疑問を明莉に聞く。
しかし、先ほどまで弱々しく見えた彼女はどこにも居なく、淡々と龍也の問いに答える気がないとばかりに言葉を返した。
「お前なぁ…」
『龍にぃに言ったら負ける気がするから言わない』
彼女の一言に呆れた顔をしながら言葉を漏らす龍也に明莉はむすっとした顔をして龍也荷言葉を返すと何が何でも言わなさそうな彼女の顔を見た龍也は深いため息を付く。
「もう聞かねーけどな、何かあったらすぐ言えよ」
『過保護だなぁ、龍にぃは…じゃあね、ありがと』
結局龍也が折れ、彼女に何があったかのかは彼の中で分からず仕舞いだが、これ以上問い掛けても埒が明かないと思ったのか小言を言って龍也はこの話を終わらせようとすると明莉は困った顔をしながら心配性な龍也に言葉を返して教員室から出て行った。
(なんて、心配させるようなことしてるのは私か…)
『いっ…!』
「きゃ…」
先ほど龍也に掛けられた言葉を思い出しながら廊下を歩く明莉は自嘲気味に笑いながら心の中で自身が先ほど返した言葉に突っ込みを入れて角を曲がろうとしたらどうやら対面からも誰かが角を曲がろうとしていたらしく誰かとぶつかり明莉は衝撃で後に尻餅ついて倒れた。
『いてて…』
「ご、ごめんさい!!だ、大丈夫ですか!?」
明莉は衝撃に耐えるように目をつぶっており、痛みを感じる部分を手でさすっていると彼女の上から可憐な声が明莉に対して謝罪をすると共に彼女の心配をする。
『あー…大丈夫。私こそ前見てなくてごめん…』
「え、月宮先生?」
『……の声を借りてる者です』
明莉は声を掛けられたことによってぶつかった人物…ピンク色のボブヘアの女の子に言葉を返すと女の子は明莉の声が林檎の声と一緒なことに驚いて目を見開いて林檎の名前を出す。
学園すべての人に知られてると思っていたのに知らない人がいることに明莉は驚いて固まっていたが、何とか女の子の疑問を解くような言葉を返した。
「え、えっと…それってどういう…」
『自分の声が出せない体質なんだよね』
「え…」
『ぶつかってゴメンね、それじゃ』
明莉の言っている言葉の意味が理解できない女の子は戸惑った顔をしながら彼女に問い掛けるといつもならそんな問いかけをされても大抵無視するか誤魔化すはずの明莉はこの時に限って素直に理由を述べる。
明莉の言葉にまた衝撃を受けたのか女の子は固まって明莉の顔を見ると明莉は悲しそうな顔をして女の子にぶつかった時の謝罪をするとその場を後にした。
(…私らしくないな、あんなこといつも言わないのに)
先ほどの自身の言葉を思い返してはいつもの自分らしくない対応に思わず苦笑いしていた。
(…雨に当たりすぎたかな……でも、あの子の目を見てたら思わず出ちゃったんだよねー…)
てこてこ廊下を歩き続ける明莉はピンク色のボブヘアの女の子の瞳を思い出して困った顔をした。
(不思議な子…うちのクラスに居なかったからきっとAクラスかな)
明莉の目的地は自分のクラス…Sクラスだ。
Sクラスの教室へと入りながら珍しく人に興味を持ったのか女の子のことを考えながら自席につく。
「あ、五十嵐!…って、何でジャージなんだよ」
『あ、来栖くん…まあ、色々あって』
教室に戻ってきた明莉を見つけた金髪の少年は明莉に声を掛けながら駆け寄ると制服ではなくジャージで身を包んでいる姿に違和感を覚え、眉を寄せて彼女に問いかける。
金髪の少年…翔に声を掛けたれたことに気が付いた明莉は彼の名前を呼んで反応してはうやむやに誤魔化して言葉を返した。
「いろいろってなぁ…つーか、お前、頬赤くね?」
明莉の言葉に呆れたように言葉を溢すとふと明莉の頬が赤くなっていることに気が付いた翔は自身の頬を指差しながら、明莉に問い掛けた。
その瞬間、ビクっと肩を揺らしている少女たちが明莉の視界に入ると少女たちは困った表情を浮かべ、明莉の顔を見ていた。
(…度胸が無いならやらなきゃいいのに)
『あー…転んで痛かったから雨で冷やしたんだけど、まだダメか』
「だから、お前ジャージなのか!いや、雨に濡れる前にシップだろ!?それ!!」
ビクビクしている少女たちをちらっと明莉は見ると呆れたようにため息を付いて心の中で毒を吐く。
そして、まだ赤みを引いていなかった頬に手を当てながら真実を隠して翔に頬が赤い嘘の理由を答えると翔は雨に濡れたことや濡れる前にするべき処置があるだろとばかりに明莉に説教じみた突っ込みを入れた。
『はいはい…』
「お前なぁ…」
「…大丈夫ですか?」
先程龍也にも小言を聞いていた明莉は翔からも小言を聞くはめになることを避けたかったのか適当に返事をすると翔は眉を下げて彼女に対して呆れた顔をする。
明莉が戻ってきたことに気付いた人物…トキヤもそっと彼女の側に近寄って言葉を掛ける。
『…一ノ瀬さん』
八つ当たりみたいな言葉を投げて逃げた明莉を怒りもせずに心配するトキヤの姿に明莉は少し驚いた顔をして彼の名前を口にした。
「…?」
『ん、大丈夫。さっきはごめん』
「…大丈夫なら結構です」
2人の間に何かがあるのか違和感を感じた翔は首傾げて明莉とトキヤを交互に見ると明莉はトキヤに言葉を返して八つ当たりした時のことを謝罪する。
トキヤは彼女が何に対して謝罪しているのか意図を汲むと淡々と言葉を返して自席へ戻った。
「話が見えねぇんだけど…」
『一ノ瀬さんがいい人だって話』
「はあ??」
二人の会話を黙って見守っていた翔は明莉に声を掛けると彼女は眉を下げて微笑んで返答するだけ。
翔の中で更に疑問が深まったようで困ったような顔をして頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
私の周りには
心配性の人が多いようで