#14




「へ〜、七海はもう会ってたんだね」
「はい…まさかまたこんなに早く会えると思ってませんでした」

 結局立っていた真斗、那月、女の子二人は同じテーブルに座って昼食を取ることになり、ボブヘアの女の子…七海春歌と明莉がどこで出会ったのか話になる。
 出会った時のことを話し終えると音也は納得したように春歌に声を掛けると春歌はそわそわしながら彼に言葉を返した。

「…にしても、お前天使ちゃんはねぇだろ」
『だって、名前知らないし。純粋無垢〜って感じじゃん』
「あ、それ分かるかも」

 ご飯を頬張りながら眉間に皺を寄せて明莉の発言に否定をすると彼女はしれっとした顔をして翔に言葉を返すと紅色の髪の女の子明莉の言葉に同意した。

『ほら…っていうか、来栖くんと一十木くん以外の名前を教えて欲しいんだけど…』
「あ、自己紹介まだでしたねぇ〜」

 同意を得られた明莉は翔をちらっとみてふっと笑っては話を変えて先ほどから一緒に昼食を取ってる男2人女2人を見て困った顔をして言葉を掛けると那月は納得したように微笑んで言葉を返す。

「確かにそうだったな…俺は聖川真斗だ。よろしく」
「僕は四ノ宮那月です。なっちゃんって呼んで下さい」

  那月の言葉に頷き同意した真斗は明莉の方を向いて自己紹介をすると続いて那月が優しく微笑みながら同じように自己紹介をした。

「わ、私は七海春歌です、よろしくお願いします」
「で、あたしが渋谷友千香。気軽に下の名前で呼んで。よろしくっ」
『えーっと…聖川さんに四ノ宮さんに七海さん、渋谷さんね。私は五十嵐明莉。よろしく』

  少し緊張気味に春歌が那月に続き挨拶をすると春歌の隣にいた紅色の髪の女の子…友千香がウインクして全員の挨拶を終えた。
 明莉は自己紹介された順に目を追って名前を確認するように4人の名前を呼び、納得したように頷くと彼女も自己紹介をする。

「かたっくるしいなぁ…気軽に友千香って呼んでよ、ほらほらっ」
『と、友千香…』
「うんうん…あ、あたし明莉って呼んでいい?」
『お好きにどうぞ…』

 困った顔をした友千香は明莉に下の名前で呼ぶよう催促すると彼女は戸惑いながら彼女の名前を呼ぶ。
友千香は名前を呼ばれたことに満足そうに頷いて明莉に下の名前で呼んでいいかを確認すると彼女は抵抗せずに判断を友千香に任せた。
 
「明莉ちゃん、明莉ちゃん。僕のことはなっちゃんって呼んで下さい」
『わ、分かった…』
「あ、あの…私も下の名前で気軽に呼んで下さい」
『あー…分かった。私のことも気軽に呼んで』

 那月もニコニコしながらあだ名で呼ぶように催促すると急に“ちゃん付け”で名前を呼ばれて戸惑ってはいたが断るのが面倒になったのか明莉は彼の言葉にも頷いて返答する。
 流れに乗るように春歌も少し恥ずかしそうに明莉にお願いするとこの会話の流れが慣れてきたのか明莉は春歌にも頷いて言葉を返したのだった。

「おお、五十嵐が女子と話してるところ初めて見た…」
「そんなレアなの!?」

 物珍しそうに翔が明莉のことを見てはぼそりと呟くとその言葉に隣にいた音也が驚いて突っ込みを入れる。

「なんつーか、Sクラスの女子に毛嫌いされるよな」
『まあ、イケメンにちやほやされてるからむかつくらしいよ』
「されてなくね?」

 翔は眉間に皺を寄せて爆弾発言をするとその爆弾発言を華麗に受け入れる明莉は自分がされている噂を淡々と答えると翔は首をかしげて不思議そうに言葉を零す。

『真実はそうでも乙女フィルターが掛かった目にはそう見えるらしい』
「乙女フィルターとはなんだ?」
「あー…マサやん、面倒臭そうなことに突っ込んじゃう?」

 明莉はコップに刺さっているストローをぐるぐる回して口つけると冷静にまるで他人事のように翔の疑問に答える。
彼女の発した“乙女フィルター”という言葉が聞き慣れていないのか不思議そうに真斗は問い掛けると友千香は困った顔をして真斗に突っ込みを入れた。

『コホンッ……キャー!かっこいい!イケメン!!目の保養〜!!…っていう女のお眼鏡に適った人物をよりかっこよく見えてしまう幻のフィルターのこと』
「おい、その説明で本当にいいのか!?」
「不思議なメガネがあるんですね〜」
「多分、そういう意味じゃないと思う…」

 明莉がコホンっとわざとらしい咳きをひとつすると林檎の声を可愛らしくして乙女フィルターに掛かった人物のまねをしてはすぐ冷静に説明をするが、翔から突込みが入る。
 那月は明莉の説明に納得したようでのん気な言葉を紡ぐとそれに対して音也が頬を人差し指でポリっと掻いて困った顔をしてポソリと突っ込みを入れていた。

「ずっと気になってたけど…明莉ちゃん、リンちゃん先生の声と似てますよね?」
「あ、そっかお前らは知らないんだよな」
『え、リンちゃん先生??』

 那月は思い出したように明莉に問い掛けるとその疑問はAクラス5人は同じ疑問を持っていたようでそれに気が付いた翔は納得した顔をして言葉を零したが、明莉はそれよりもなによりも“リンちゃん先生”という言葉に疑問を持ってしまったため、首をかしげて誰なのかを問い掛けた。

 「月宮先生のことです」
『あーなるほど、そうそう月宮先生から声借りてる』
「それはどういうことだ?」

明莉の問い掛けに春歌が答えると誰なのかが理解した明莉は納得して疑問を持った5人に彼らの待っている答えを教えると更に疑問を持った真斗が突っ込んで問い掛ける。

『…私、自分の声出せないから他人の声を真似て話してるってだけ』
「そんなことできるのか…」
「すっげー!俺にも出来る??」
「すごいですねぇ〜!」

 明莉は一瞬暗い表情をしたが、いつも通りの表情に戻して淡々と簡潔に真斗の問い掛けに答えると真斗は納得したような声を出した。それに続き、音也と那月は明莉をキラキラした目で見ては明莉を褒めるような言葉を紡ぐ。
音也にいたっては自分にも出来るのかとやる気満々な言葉まで言い出す始末だ。

『……アンタたち変わってるね』
「え、何で?」
『気味悪くないの…?』

 今まで他人の声しか出せないと言うと蔑まれる目をされてきた明莉にとって彼らの反応は意外なものだった為、ぽそりと言葉を零すとその言葉に不思議そうに音也首を傾げると明莉は戸惑った顔をしながら今まで言われてきた言葉を紡いで問い掛けた。

「出せない事情があるんですよね?」
『そうなんだけど』
「それを気味悪く言うって人として問題がある思うんだけどっ」

 明莉の問い掛けに不思議そうな顔をして春歌は彼女に自分の声が出せない理由があると踏んだのかそう問い掛けると彼女は困った顔をして肯定の言葉を口にすると友千香は彼女自身の考えを言い切った。
 
「ねえねえ!俺の声真似も出来るの?」
『…やろうと思えばね』
「うっわー!マジで!?やってやって!!」

 音也がわくわくした顔をして明莉に彼自身の声を出すことが出来るのかと問い掛けると色々と予想外の言葉を掛けられている彼女は処理できず、少しテンポが遅れながらも音也の問い掛けに答えると音也は更に目をキラキラさせて明莉に催促をする。

『そう言われるとやりづらいからヤダ』
「えー!!」
 
 明莉はキラキラした目で催促する音也を見ては少し恥ずかしそうにそっぽ向いて断ると彼は残念そうな顔をして声を上げた。
 その二人のやり取りを見ていた翔たちは声をあげた笑った。

(変な目で見られるって思ってたのにな…それにいつの間にか…人の輪の中にいるのが不思議)

 明莉は自分の思ってた反応と違うAクラスの5人を見つめては困ったように笑っていたが、皆で笑いながら食事を囲んでいる事実に自然と嬉しそうに笑った。


温かい人たちに

囲まれての食事は美味しかった




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