♭April Diary




龍にぃに言われるまま倍率200倍とふざけてる早乙女学園に
受験してまんまと受かって行くことになった。

その学校はアイドルや作曲家を目指して
夢を追いかける子達ばかりのところ。

貴方がいないのに行く意味なんてなかった。
歌が好きなわけでもアイドルが好きなわけでもないから。

私には夢なんてない。
音楽なんて不幸の象徴でしかない。
私は音楽を好きになっちゃいけない。

好きになってしまえば
そこにはいつも絶望しか待っていないから。
もう期待するのはやめたの。

それでも行こうと思えたのは……
貴方の母校に行ってみたいと思ったから。
…ただそれだけの理由で入学当初は正直やる気なかった。

そんな私はまあ、見事にSクラスになると……
まあ、浮いた存在だった。

自分の声が出せないから他人の声借りてます、
なんてふざけてると思うだろうしね。

それが嘘のような事実なんだとしても。

それでも来栖くんは普通に接してきてくれて
協調性を持てと龍にぃに怒られた後ってのもあって
友達1号に彼を任命した。

サックスさんはアイドルコースなのに
やる気がないのか一緒に課題をやることもなくて
まさか自分と似たようにやる気のない人が
いると思わなくてびっくりした。

作曲をしても歌ってもらえないという現実にも
衝撃があった。別に彼を責めるつもりはない。

歌いたくなくても歌いたくなる曲を
作れなかった私の落ち度だ。
テスト受ける気ないなら言ってくれれば
作らなかったのに!…って思ったけどね。

あー…あと彼の取り巻きに呼び出されて
忠告を受けるなんてこともあって
初めての経験をした。

雨に降られながら歌を歌ったら
貴方の声が聞こえて思わず泣いちゃって……
タイミング悪く現れる一ノ瀬さんに
心配されて八つ当たりして…酷いな、私。

謝ったけど気にしてないって感じで
許してくれたから一ノ瀬さん、優しい人だよ。

龍にぃにも心配されて…
あの人は本当に心配性だなって思った。

それから春歌に会って……いつのまにか私の周りには
色とりどりの人たちに囲まれていた。

みんな輝いていて楽しそうで
本当に音楽が好きなんだって分かる人たちばかりだった。
今までの人生の中でこんなに人に
接したことはないから正直戸惑った。
私の世界は限られた人しか存在しなかったから。

だから、学校生活が
こんなにも楽しいものだって知らなかった。
友達と呼んでいいのか分からないけど…
そういった存在と食べるご飯が美味しいことも、
勉強することが楽しいって知らなかった。

この1ヶ月、初めてのことだらけで
色鮮やかな毎日にいつの間にかなっていた。

入学当初は人と関るつもりなんてなくて
作曲も適当でやるつもりだったんだ。

でも、みんなに触発されてきたみたいで
作曲するのも人に関るのも悪くないって思えてきたんだ。

まだ音楽を好きだって言えない。言いたくない。
貴方の姿を探しちゃうし、
家族と向き合えなくて過去に囚われたままの迷子。

だから、来栖くんとパートナーになるってなった時、
前よりやる気を出して曲を作ろうって思えたんだ。
彼の信頼に応えてみようって。

貴方は笑うかな…怒るかな……
応援してくれたら嬉しいな。

本当は貴方に会いたい。
でも、会えないから……せめて私を見守っていてね。

April 27 明莉



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