昼休みになり、明莉はぼーっとひなたぼっこをするために湖の方へと歩いていた。
『……何してんの、二人とも』
「明莉!楽譜が風に飛ばされたんだって」
湖に辿り着くとそこには湖付近で楽譜を拾い集めている良く見知った顔が居て不思議に思った明莉は首を傾げて紅色髪のロングの女の子と薄桃色のボブの女の子に問い掛ける。彼女の声に2人は顔を上げて紅色髪の女の子…友千香は彼女の名前を呼んで明莉の問い掛けに答えた。
『へぇ……』
「……ドジしちゃって…」
明莉は散らばっている楽譜を見た後に薄桃色のボブの女の子…春歌をじっと見つめると彼女は眉を下げて力なく笑いながら言葉を零す。
「あんな遠くまで飛んじゃったら流石に取れないわよね…って、アンタ何してんの!?」
『何って、見れば分かるでしょ』
楽譜はどうやら湖の方まで飛んでしまっており、友千香は湖に浮かんでいる楽譜を困った顔をして眺めては諦めたように言葉を紡いでいると隣でバサっとブレザーを脱ぐ明莉に突っ込みを入れる。彼女#は表情も変えずにブレザーを芝生に落とすとリボンを解き、靴、靴下を次々と脱ぎながら友千香の突っ込みに淡々と答えた。
「いやいやいや、何脱いでんのよ!」
『そんなの簡単でしょ…取りに行くの』
友千香は更に突っ込みを入れながら彼女に言葉を掛けると明莉は簡潔に彼女の言葉に返すとそのまま走って湖にダイブした。
「あ、ちょ、明莉!?」
「明莉ちゃん!?」
水しぶきを浴びながら顔を手で防ぐようにして友千香が彼女の名前を呼び、春歌も顔を少し青くしては同じように彼女の名前を呼ぶ…というより叫んだの方が近いだろう。
『ぷはっ、あー…まだ冷たいかも〜…取ってくるね』
「無理しないでよー!」
水面から顔を出した明莉は息を思い切り吸っては水温の低さに眉間に皺を寄せる。彼女はそのまま2人に声を掛けて泳ぎ始めると友千香ははぁとため息を付いては彼女を気遣う言葉を投げかけた。
『ねー!…こっちにどれくらい飛んでったー!!?』
明莉はピタッと泳ぎを止めて二人のいるほうを向くと大声で足りない楽譜の枚数を問い掛ける。
「えっと……4枚です!!」
明莉に問い掛けられた春歌は手元に集まった楽譜を数えては彼女にしては大きい声で枚数を叫ぶ。
『4枚ねー!!』
春歌の声が明莉の耳に届いたようで明莉は彼女の入った枚数を復唱するとまた泳ぎ始めた。
「1………2、………さ……ん……っと」
(3枚は見つかったけど…もう1枚は沈んだのかな……つーか……広すぎ)
目の前に広がっている楽譜たちを丁寧に拾い上げては自身の頭の上に乗せていく明莉は拾うごとに枚数を数えるように口にしたが、あと一枚足りない事実に困った顔をした。周りを見渡してもただただ広い水面が広がっているだけでげんなりした顔をしながら湖の広さに文句を付けていた。
『……あ、あった……』
明莉はとりあえず奥へと進むと奥側の湖と地面の境界線。芝生に楽譜が少し身を乗り出すように流れ着いていたのを見つけてそちらの方へと泳ぎを進めた。
『もー制服重すぎ………あ、』
「……君は今度は何をしているのかな?」
最後の一枚を拾って頭の上に乗せるとブレザーを脱いでいるとは言っても服を着て泳いでいることは相当な負荷が体にかかっているという証拠だ。彼女は疲れたのか芝生に両腕を乗せてほっと一息を付いていると近くにまたもや見知った人物が目に入り、小さく声を上げる。湖の中から現れた明莉に困惑の表情を見せながら低音ボイスの青い瞳の垂れ目を持ち、オレンジ色の髪をした男が彼女へ問い掛けた。
『……見ての通りですけど』
「まるで河童のようだよ」
『否定出来ないけど…頭の上にあるのは楽譜だから』
明莉は少し考えてから不思議そうな顔をしては彼の問いかけに答えると彼は眉を下げて笑いながら言葉を紡ぐ。
明莉は自身の頭に楽譜を乗せていることは事実なので彼の言葉にむっとした顔をしては頭の上の楽譜を指差しては河童の皿ではないとばかりに事実ではあるが言い訳のように言葉を返した。
「……誰かに何かされたのかい?」
『みたい……まあ、私じゃないけど』
彼は笑いもせずに眉をピクッと動かしては彼女に問い掛けると明莉#は淡々と他人事のように答えた。
「君のじゃないのか?」
『Aクラスの七海春歌っていう子の楽譜が風に飛ばされたらしい』
彼は明莉の言葉にきょとんとした顔をしては更に問い掛けると明莉は芝生に楽譜たちを置いては彼の問いに簡潔に答える。
「それで君がわざわざ泳いで取りに来たんだね」
『あの子、ほっとけないから』
感心したように彼は彼女をじっと見つめながら言葉を紡ぐと明莉はふっと笑いながら彼に言葉を返した。
「………。」
『あの、…何か?』
彼女が笑みを浮かべているところを初めて見た彼は目を見開いて彼女をじっと見つめていると明莉はその視線に居心地が悪くなり眉を下げて彼へ問い掛ける。
「いや、……笑うんだね」
『人間なんだから笑うよ、失礼な』
彼はただ思った言葉が勝手に口から零れ落ちたかのように言葉を紡ぐと明莉はその言葉に眉下げて困った顔をしながら言葉を返した。
「笑っている方が似合うよ」
『それはどーも…サックスさんはこんなところで何してんの?』
彼はふっと笑いながら口説くかのように明莉を褒める言葉を掛けるが彼女は何も感じていないようであっさりとしたお礼を言うとこんな場所に何故いるのかという疑問が生じ、それをそのまま口に出しては芝生に両手を乗せて力を入れて芝生に座り込んだ。
「さあ…何してるんだろうね」
『女の子に愛想を振りまくのも疲れた?』
「……そんなことないさ」
サックスさん…明莉がそう呼ぶのはただ1人、神宮寺レンだ。レンは彼女の問い掛けに太陽に当てられて輝いている湖の水面をぼーっと見つめながら曖昧な言葉を返す。その言葉に明莉は同じように湖の水面を見つめながら思いついた理由を口に出すと彼は目を閉じてふっと笑いながら彼女の問い掛けを否定した。
『ふーん、1人が嫌だけど1人になりたがる時もあるよね』
「そんなことは言ってないだろう?」
レンの横顔を見た明莉は目を細めてサラリと流すように言葉を零すとその言葉に彼は眉間に皺を寄せて彼女に突っかかるように言葉を返す。
『うん、だからこれは私の独り言』
「……。」
明莉はレンに向けていた視線を湖の方へ向けて口角を上げて彼の苛立った言葉をサラリと受け流すとレンはそれが気に食わないのか黙ったまま彼女を見つめる。
『サックスさんは…なんだか勿体ないよね』
「………。」
明莉は唐突に湖を見つめたままぽつりと言葉を零すとレンはその言葉にピクッと反応する。
『私はサックスさんのことあまり知らないけど…神宮寺さんのサックスの音は好きだな』
「……!」
彼女はくるっと顔だけレンの方へ向けて言葉を紡ぐと彼女はふわりと微笑んでは湖の中へとまた入っていった。彼女の言葉に驚いたのかそれとも又湖の中へ入っていたことに驚いたのか定かではないがレンは眼を見開く。
『それじゃ、私行くね』
明莉は芝生に少しの間乾かしていた楽譜を頭の上へと乗せるとレンに手を振って春歌と友千香の待っている反対側へと泳いで戻っていった。
「……キミは変わった子だね」
そんな彼女の泳いでいる姿を見てレンは困ったような表情をしてぼそっと言葉を落とす。
◇◇◇
『ただいまー!あったよー』
「明莉ちゃん、ありがとうございます…!!」
「お帰りって…長かったじゃない、心配させないでよ」
『あー、ちょっと立ち話を』
スイスイ泳いで春歌と友千香に近づく明莉はのん気に言葉を掛けて頭の上に置いてあった楽譜を春歌に渡すと春歌が涙目になりながらお礼を言う。戻ってくるのが遅かった明莉に対して友千香は眉下げて母親のように心配をしており、明莉は言葉を濁して友千香に返答しては芝生に両手を置いて湖の中から上がった。
「おーい、お前ら!五十嵐知らねぇ……って、五十嵐!?」
「な、何で濡れてるの!?」
遠くから金髪の小柄の少年が明莉たちの方へ声を掛ける。どうやら明莉を探していたようだが、そのお目当ての人物がずぶぬれの状態なのを見た少年は目を見開いて彼女の名前を叫ぶ。小柄な少年の隣にいた赤髪の少年も目を見開いて濡れている理由を明莉に問いた。
『んー…あー…制服でどれだけ早く湖往復出来るか水泳してた』
「お前、適当に言ってるだろ」
明莉は説明が面倒になったのか面倒臭そうな顔をしながら適当な理由を述べるが、ありえないと思ったのか小柄な少年はじと目で彼女を見つめられながら言葉を返す。
『春歌、なんか楽譜少しにじんちゃってごめん…一応、4枚拾ってきたけど…』
「無視すんな!」
明莉は小柄な少年の言葉が図星だからなのか華麗にスルーをして春歌に先ほど渡していた楽譜が水で滲んでしまったことを謝罪すると華麗にスルーされた少年は彼女に突っ込みを入れた。
「ううん、私が行かないといけないのに…取りに行ってくれてありがとう」
『ふふ、どーいたしまして』
春歌は彼女の言葉に首を振って眉を下げて申し訳なさそうにお礼を言うと明莉は満足そうに微笑んで彼女の言葉を受け取る。
「あんたさっさと着替えてきなさいよ…ビショビショじゃない」
『あー…うん、行く行く。友千香は春歌と楽譜一緒に乾かしてあげて』
「分かったわ」
友千香は腰に手を当てながら眉下げて明莉の体を労わるように言葉を掛けると明莉は髪を手で絞って髪が吸い込んだ水分を取り出しながら彼女の言葉に大人しく言うことを聞く。そして、代わりにとばかりに友千香に春歌の手伝いをお願いすると友千香は首を縦に振って承諾しては春歌を連れて楽譜を乾かしにその場を去った。
『……一十木くん』
「え、何?」
2人の後姿を見ながら明莉は唐突に一十木…音也の名前を呼ぶと彼はまさか名前を呼ばれると思っていなかったようできょとんとした顔をしながら彼女に問い掛ける。
『…春歌のこと、見ててあげてね』
「うぇ!?お、俺!?」
『…まあ、聖川さんと四ノ宮さんと友千香と、ね』
明莉はちらっと音也の方を向いて真剣な声音でお願いをするとそのお願いに対して音也は頬を赤くしてどもり始めた。明莉は1人でアワアワしている音也に呆れたように見ては言葉を付け足した。
「え、あ、ああ!う、うん!」
(これ、分かってるのかな……)
その言葉で理解したのか音也は頬を赤くさせたまま明莉の言葉に元気よく頷くが彼女は彼が自分の言っている意味を理解しているのか不安そうにしていた。
「さっきから無視すんなー!お前は早く着替えに行け!風邪引くぞ!!」
『今日天気いいから風邪引かないよ』
小柄の少年は先ほどから存在を無視されてワナワナとしてるとまた一段と大きな声を上げて明莉に声を掛けると彼女の体を心配なのかまるで母親のようにがみがみ言い始める。彼の言葉に面倒臭そうに言葉を返して起き上がると彼女は制服のスカートを絞り始めた。
「わわっ!」
「おまっ!!男の前でスカート絞るな!!」
『はあ…純情かよ、めんどくさいね。来栖くん』
音也は明莉がスカートを絞り始めるものだから先ほどとは別の意味で頬を赤くして両手で顔を隠すと小柄な少年は顔を赤くして明莉に注意をする。明莉はどうでも良さそうに少年…翔の純情さに呆れたように言葉を零した。
「お前はもう少し恥じらいを知れ!!」
翔は頬を赤くさせてまま眉間に皺を寄せて全力で明莉に説教じみた言葉を叫んだ。
楽譜と湖と
濡れた制服