「“何が”じゃねーだろうが!何、お前初っ端からやらかしてんだ!」
『いだっ!』
どしどし廊下を歩く明莉の顔は鬼の形相をしていた為、廊下にいる生徒は自然と道を開けていた。そして、彼女のたどり着いた場所は職員室。
扉が壊れるのではないかと思わせるほどの勢いで開けては開口一番、龍也を怒鳴っていた。
それに対して龍也はというとため息を付いては怒鳴り返して彼女の頭に手刀を食らわせていた。
「いくら自分のことを離すのが苦手だからってな、あれはないだろう!」
『……だって、人の声借りなきゃ話せないもん。今だってりんちゃんの声借りてるし…』
「だからってな…紙に書くとか他にやり方あるだろう」
龍也の言う通り、“初めての相手”にいきなり手話で話したり声真似事をして自己紹介を始めたら誰だって戸惑うだろう。それについて、呆れながら明莉をしかりつけていたら明莉はしゅんとしながら言い訳を始める。その姿は先ほどの教室での姿とは打って変わって弱々しいものだった。
少し冷静さを取り戻した龍也は頭を抱えながら自己紹介の他の方法を語り出した。
『うう…ごめんなさい。あのちびが突っ込みうるさかったから…』
「言い訳無用。ったく…そんな性格だから敵ばっかり作るんだよ」
「んもう、それくらいにしておきなさいよ。龍也」
だんだん声が弱々しくなる明莉に対して、手加減なして追い詰める龍也だがどうやら明莉を心配しての言葉らしい。
まだ続きそうな小言にストップをかけたのは可愛らしい姿をしたピンク色のロングヘアの人物だった。
『りんちゃーん!救世主!!』
「ん〜…私の声で言われると何だか複雑よね…」
『うう…りんちゃんが声貸してあげるから普段使いなさいって言ったのに』
説教をたらたらしている龍也にストップをかけたのはそう、もう一人の教師・月宮林檎だった。
林檎が姿を現したことにより明莉は目を輝かして助けが来たと嬉しそうに傍に駆け寄った。
林檎はというと自分の声で近寄ってくる彼女に対して眉を潜め複雑な心境を語るとショックを受けた明莉はまたしょんぼりして肩を落としていた。
「な〜んて、冗談よ。じょ・う・だ・んっ」
『知ってた?りんちゃんの冗談って冗談に聞こえないんだよ?』
「ったく、横から入ってくるな、林檎!とにかく!お前はもう少し協調性を持って学園生活を送るよーに!分かったな」
『…はーい』
明莉にウインクしながらくすくす笑い飛ばす林檎に明莉は冷ややかな目で見つめていた。
龍也はまたため息を付いて林檎を制して明莉に指を差し厳重注意とばかりに怖い顔して言葉を紡いだ。
明莉は少し間を空けてから気の抜けた声で返事をし、とぼとぼと職員室を出て行った。
「…もう、2年。時が経っても…声は出ないか…」
「龍也…それでも…前より笑うようになったじゃない」
「まあ…な」
「待ちましょう?…あの子が本当の声を取り戻すのを」
職員室から出ていく明莉の姿を見送った後、悲しそうな顔をして龍也はぽそりと呟き、自席の椅子へと座りこんだ。
そんな龍也の姿を見て林檎も眉を下げたが、龍也を励ますかのように言葉を掛ける。
龍也は林檎のその言葉に重々しく同意した。
林檎は職員室にある窓の外…空を見上げて遠い先を見つめるように願いのようにも聞こえる言葉を紡いだのだった。
呼び出された理由
それはお説教でした