#5




(や〜〜と、終わった。なんか色々疲れたなあ)


授業も終わり、明莉は解放溢れる伸びをしていた。


(あ…一応、パートナー出来ちゃったから、曲作りの相談か…だるいなあ)


 帰宅準備をしていると先ほど決めた(決めさせられた)パートナーのことを思い出し、気だるそうに席を立ち、女子に囲まれにこにこと笑っているレンの元へと足を運んだ。


「…ん?どうかしたのかい?」
【曲、どんなのがいいの】


 レンを囲む女を何とか潜り抜け、レンの元へと近づいては肩を叩く明莉。肩を叩かれたレンは明莉に気づき、振り向いては笑顔を向けて問いかけてきた。
 少女はというとずいっと彼の目の前に文が打ち込みされているスマホを不愛想に見せた。


「曲かい?それは作曲家の君のやるべきことだろう?」
【歌いたい曲調とか、苦手な音域は?】
「それを聞かないと君は出来ないのかな?それとも…オレと一緒にいたいだけかな?」


 彼女の問いかけに彼は少しとげのある言い方で彼女に逆に問いかけ返す。
 彼の言い方に違和感を覚えた明莉は眉を潜めてはすぐさまスマホに次に聞きたいことを打ち込んで見せたが、彼は彼女の欲しい答えは答えず、違うことばかりを言ってきた。


【もういいです。さようなら】
「物分かりがよくて助かるよ、これからレディ達とデートだからね」


 彼の笑顔なのにとげがある言葉、そして瞳を見て何を言っても無駄だと感じたのか、諦めてその場を去るため、一言をスマホに打ち込むと彼は周りにいた女子たちと共にクラスを出て行ったのだった。


『なんだろ…マジでぶん殴りたくなる奴だな』
「お、おい…大丈夫か?」


 レンのやる気のない態度…というのだろうか、それらを見ていた明莉は真顔で背を向け遠くを歩いている集団を見てはぼそりと恐ろしいことを口にしていた。
 その様子を見かねた金髪の小さい子が明莉に話しかけてきたのだった。


【なんなの、アイツ。空手くんはどー思う?】
「まあ、あいつはあんな感じだからな…って、何だよ、空手くんって!」
【自己紹介の時、空手見せてたから】


 まさか話しかけられると思っていない明莉は少し驚いた顔をしてからさっきの出来事を思い出し、怒った顔してスマホを小さい男の子に見せた。
 すごい形相の明莉を見ては少し冷や汗をかいては彼女の質問に答えたが、名前ではなく、変なあだ名のようなもので呼ばれたので突っ込む男の子。
 明莉はすごく真面目な顔して授業の一番最初、クラスメートの自己紹介の時のことを言い出した。


「おま…名前覚えてないのか」
【そのとーり】
「レンの時もそうだったな…よし、もう一回言うぞ?俺様の名前は来栖翔!覚えろよ!」


 男の子は肩を落としては苦笑いしながら明莉に問いかけると自信満々に明莉は答えた。
 男の子は遠い目をしてパートナー決めの時の彼女のそぶりを思い出していた。
 そして、男の子は気を取り直して改めて彼女に満面の笑みで自己紹介をし彼女に握手を求めた。


【うん、頑張る】
「いや、そこ頑張るところかよ。ったく、…そういや、悪かったな」
【何が??】


 明莉はこくこくと頷きながら彼の手を握り、握手を交わしてはもう片方の手でスマホを彼に提示していた。
 そのスマホを見て翔はふと笑っては突っ込みを入れていた。
 翔は少し間を空けてから明莉に謝ってきた為、彼女は何のことかわからず首を傾げてスマホを提示した。


「何がって…自己紹介の時だよ。お前の事情も知らずになんか突っかかっちまったから、さ」
【別に気にしてないよ、私もムカついて反論しちゃったし、お互い様。こっちこそごめん】


 何だか気まずそうに翔は頬を掻きながら謝っている理由について話すと明莉は納得したようにスマホにまた文を打ち込み彼に見せる。


「お、おう。サンキューな。…それとさ、普通にしゃべらねぇ?お前も毎回打つの面倒だろ?」
【…声借りてもいいの?それなら話すけど】
「まあ、仕方ねぇよな。お前だって事情あるんだし」


 すんなりと彼女が許してくれると思わなかった翔は戸惑いながら返事をし礼を言った。
 また翔は彼女に“声”を出して話すことを提案すると明莉は予想外のことに少し戸惑いを見せたが、翔の“声”を借りてもいいならと提案した。
 すると彼はすんなりあっさり承諾をしてきた。


『まさか…すんなり承諾すると思わなかったよ。来栖くんの“声”は借りないから大丈夫。月宮先生の声借りる許可もらってるから。…そう言ってくれて、ありがとうね』
「おま…試したのかよ」
『ごめん…大抵の人はこういうと消えるからね。まあ…一人くらい話し相手がいてもいいと思っただけ』


 あっさり承諾した翔の反応が予想外だった為、明莉は目を見開き驚いていた。
 彼女は諦めたのか林檎の声を借りて話すと翔は少し拗ねた顔をして明莉に文句を言いつけた。
 そうすると彼女は眉を下げて翔に謝り、悲しそうな瞳をしてぽそりと現状を話す。彼女は目を閉じて次の瞬間目を開けると先ほど悲しみを帯びていた瞳は消えて優しい瞳で翔に微笑んだ。


「そーいうもんか?」
『そーいうもんですー』
「お前、なんか変わってるな」
『え、普通だと思う』


 翔は不思議そうに首を傾げて明莉に問いかけると気の抜けたような声で彼女は彼の問いかけに肯定する。
 何だか面白いと感じたのか翔はふっと笑いかけながら話しかけると明莉は不思議そうに真顔で“ふつう”だと言い張る。


「まあ、いいけどよ…ってやべ!パートナーと打ち合わせだった!また明日な!」
『しっかりしろよ、友達1号くん。…また明日』


 少し話したつもりが結構長話になっていたことに気が付いた翔は急いで自分のパートナーがいるレコーディングルームへと鞄を持って走って行った。
 それを苦笑しながら見送る明莉は今までいうことに縁のなかった言葉を紡ぐのだった。



仲直りと思いがけない友達一号




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