#8




「五十嵐さあん、ちょっといいかなぁ??」
【……なに】


 作曲コースとアイドルコースが別々の授業の為、教室を出て移動をしている途中。後ろから声を掛けられた明莉は振り返って文を打ったスマホを相手に見せる。


「ちょっと話したいことがあるのぉ。…こっち来て?」
(……だるいなあ)


 後ろを振り返るとアイドルコースだと一発で分かるほど綺麗な女の子が一人立っていた。
 明莉はその女の子に手招きされて気だるそうな雰囲気を漂わせながら彼女の元へと足を運んだのだった。


「…あんたさ、何なの」
『は?』
「レン様に毎日のように付き纏って、それに一ノ瀬さんや来栖くんにも媚び打って…」
「そうよ!何べたべたしてるのよ!」


 呼び出されたのは裏庭。そしてそこには複数の女子が待ち構えていた。そして、先ほど声をかけてきた少女が後ろを向きながら明莉に話しかける。
 先程とは打って変わって鼻にかかる女特有の話し方ではなく、冷たい声だった。
 “何”と言われて、意味が分からない明莉は思わず、声を出す。すると加勢するように待ち構えていた女子たちが言いたい放題明莉に文句をつけてきた。


(ちょっと待って…それ言うために連れて来られたの?)
「ちょっと、聞いてるの?」
「その耳は飾りなのかしら??」


 茫然と文句言っている彼女たちの姿を見ていた明莉は頭を片手で押さえながら考え込んでいた。
 その様子に苛立った少女たちは明莉に馬鹿にしたように問いかけてきた。


「そもそも、才能ないのにこの学校に入るのが間違いだったのよ」
「そうそう、自己紹介の時なんて何も出来なかったじゃない?」
「でも〜、人のことを馬鹿にするのは才能あるよねぇ。声真似とかふざけてるじゃない〜?」


 どんどん言うことがエスカレートしていく彼女たちはケラケラ笑いながら、明莉を馬鹿にしていた。
 明莉はただ黙って彼女らが楽しく明莉を馬鹿にしている姿を眺めていた。


『…で、満足した?』
「「「は?」」」
『だーかーら、満足したのかって聞いてやってんだけど?あんたの耳はなんだ?飾りか?』


 呼び出しを食らってからずっと黙って彼女たちの文句を聞いていた明莉はやっと言葉を発した。
 その姿は怯えてやっと絞り出した言葉ではなく、呆れたような…いや、それこそ馬鹿にしたような顔をして。
 流石にその姿の明莉を見ることになると思わなかった彼女たちは一瞬固まって、明莉を睨みつけた。
 明莉はわざとらしくため息をついて、さっき彼女たちが明莉に言っていたセリフを投げやりに言い返す。
 声は月宮林檎の声であり、怒っているため、声のトーンも低い。


「…っ、」
『何、さっきの威勢の良さはどーした?というか、くだらない事にわざわざ呼び出さないでくれない?ちょー迷惑』
「なっ、あんたがレン様たちに関わらなければいいのよ!」


 明莉の態度に気圧されたかのように彼女たちは息を呑む。
 馬鹿にしたように明莉は笑い、どんどん出てくる彼女たちへの文句。
 言い返された言葉にカチンと来た一人の少女は怒鳴りつけて明莉の頬へ平手打ちした。


『っ、…あんたたちはアイドルになる気あるの?』
「な、なによ…」
『別に…私はただ作曲したいだけ。だから、あんたらの“レン様”にほぼ興味はないよ……じゃあね』


 じんわりと頬の痛みを感じながらも横目で叩いてきた相手を見つめて明莉はふと思った疑問をぶつけた。
 叩いてきた少女は少し後ずさりながらも明莉に言い返すが、
 明莉はふと視線を下げて話を変え、今明莉が思っている感情を伝えてその場を去った。


女からの呼び出しなんて

初体験だっての、いや男もないけど




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