傑は僕の善心で、ストッパーだった。でも、道を違えた。半身がなくなって虚無感は覚えたけど、焦燥感は何もなくて。
改めて人として欠落していると実感した記憶がある。
何かが抜け落ちたまま、一年が経とうとした時に出会った。
人のためだけに生きる善心に。
そいつの瞳は全てを諦めているように見えて、なんて不安定な娘なんだろうと思った。
横を向けば、力尽きて寝息を立てるその少女が隣にいる。涙の跡がくっきり残る頬に吸い寄せられるように、手を伸ばすとピクリと微かに眉が動く。けれど、人の体温に安心したのか、また表情を柔らかくさせた。
「……随分、気持ちよさそうに寝てるなぁ」
会ったばかりの人間が横にいるってのに平然と寝てるその姿に関心さえ覚える。
弾力があるのにしっとりした感触のある頬が妙に手にフィットしてるせいか、離しがたくて撫でた。それでも、彼女は起きる気配はない。
まあ、気絶させたようなもんだから起きれないのは知ってるけど。
「愛とかそういうの信じないタイプなんだけどなぁ」
何もかも諦め、正論で自分を制した大人の顔をしていたコイツが快楽に溺れまいと必死に自我を保ってる姿は正直、そそられた。流されたその姿にもクる物があった。欲が湧いて出る、なんて経験は初めてだが、きっとあの時のことを言うんだろう。
誰かを好きになることは一生ないと、自分には関係ないと思ってた自分が、だ。
でも、確かにあの時、コイツを欲した。欲しいと、思ってしまった。
どこにでもいる普通の女ならば、勝手に惚れてくれるだろうけど、彼女はそうじゃない。
むしろ、離れていくだろう。僕のことを思って関わらないように。上層部に嫌われ、処理されてようとしている身の上だから、と。
それじゃあ、僕の望んだものは手に入らない。
「……外堀から埋めるか」
ずっと触れている手が煩わしく思えてきたのか、彼女は眉をひそめた。その顔も愛らしいと感じるから重症かもしれない。
正直言って誰かと共に寝ることすら、好きじゃない。
そんな僕が自分からこういう行動をしている。その事実がおかしくて、笑える。
文句を言わせないように。上手く言いくるめるために。
密かに企てながら、彼女を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めて眠った。
親友と道を違えた日以来、久しぶりによく眠れた気がした。