「控えよ、下郎共。今より緋龍城の主となった、スウォン陛下の御前なるぞ」
「……誰か、何の主だって?」
スウォンの近くにいた偉そうな男がハクとユエに言い放つ。その言葉に疑問を持ったハクは睨みつけながら問いかけた。
「どうも……嫌な予感がするんですがね、スウォン様。イル陛下はどこにおられる?」
「―――私が先程、地獄へ送ってさしあげた」
「……っ、」
少し冷や汗をかきながらスウォンに問いかける。スウォンは少しの間を開けてからユエが視た未来を…スウォンがした罪を、口にした。
#現実になってしまったイルの死は覚悟していたとしても辛いものだったらしく、ユエは言葉をなす。
「――酒にでも酔っておいでか?戯れ言にしては度が過ぎますよ」
「……ヨナ姫に聞いてみるといい。その目で王の死を確かめられたにだから」
大刀を地面に思い切り叩きつけて殺気を体から出し、スウォンを睨みながら更に問いかけるハク。スウォンは目を細め、しかし、ハクとユエから目を逸らさず真っ直ぐ見て話した。
証言者であるヨナの名前を挙げていた。
「真実を言え……!」
「偽りじゃない」
「スウォン!!国王を弑逆しただと<…!?お前が!あの優しい王を……!」
(……何て……目をしているの……?スウォン……どうして……)
スウォンが言った言葉に殺意目覚め、言い切ったのちすぐにハクは大刀でスウォンに切りかかる。スウォンは冷静にハクの攻撃を受け止めてハクの言葉に否定した。
怒りのままハクは攻撃を止めることなく、言葉を紡ぐ。
ユエはスウォンのいつものにこにこしてほんわかした雰囲気しか知らない。スウォンはすました顔で変わりなくハクと対峙していた。
そんな2人の姿を見て、ユエはスウォンを怒りと悲しみの目でただ見ることしかできなかった。
「っ、スウォン!何故……こんな馬鹿げてたことをっ……!!」
「……」
我慢できなくなった彼女はハクを入れ違いに攻撃を仕掛ける。スウォンは相変わらず顔色を変えずにただユエの攻撃を受け止めていた。
「スウォン様、ここは私が……」
「下がっていなさい、近づけば首が飛びますよ」
ユエが刀を振り切るとスウォンは吹き飛ばされる。うまく避けた彼に近寄る兵はスウォンの前へ立とうとしたがそれは止められた。
「目の前にいるのはこの緋龍城の要。五将軍の一人、ソン・ハクとヨナ姫専属護衛のユエです」
「ハクとユエ……!?」
「あの2人が高華の“雷獣”と“白虎”と噂される……」
スウォンはハクとユエから目を逸らさずに近くにいる兵に2人について語る。兵はざわめき、2人の名前を驚いた顔をして呼んだ。
周りにいた兵たちも噂の2人にざわめきは増す。
そんな事を気にせず、ハクはスウォンへの攻撃をし、ユエは周りに寄ってくる兵たちを次々へと薙ぎ倒していった。
しかし、とうとう兵たちに3人は囲まれてしまった。
「スウォン、俺の視ていたスウォンは幻だったのか?」
「……貴方なら姫を任せてもいいと……思っていたのに……」
ハクは兵に囲まれながらも見えない表情のまま、スウォンに問いかける。
##NAME1##もハクの言葉に続くように顔を暗くしながら、紡いだ。
「……貴方達の知っているスウォンは最初からいなかったのです。道を阻む者があれば切り捨てます……誰であろうとも」
スウォンはハクの問いに能面のように何を考えているのか分からない顔をして、とても幼馴染と思えない冷酷な言葉が口から出る。
空気を読んでいないかのように、1本の矢が飛んできた。
「矢!?一体どこから……」
タイミングよく飛んできた矢に兵たちは驚き、辺りを見回す。逃げる隙を見つけたハクはヨナを抱え、ユエに目で合図しその場から去った。