ヨナはお茶を誘いにスウォンの部屋へ向かったが、すでに姿なく、いたのはミンスだった。彼からハクとユエと外にいるとヨナに伝えられ、とヨナは急いで外へ向かう。


「〜〜ハクとユエ、ずるい。この私をさしおいてスウォンと遊ぶなんて」
「まあまあ、あの3人も久々に会ったんだし、同い年だから気も合うんだろう」


 そんな3人の姿を見たヨナは悔しそうに頬を少し赤めて拗ねていた。イルはそんな拗ねている自分の娘を宥め、3人が騎射をしている姿を眺める。


「私もスウォンと弓やる!」
「なっ、なんだと!?」


 スウォンが弓を弾いている姿を見惚れているヨナは何を思いついたのか、急に弓をやりたいと言い始めた。国の皇女が急に何を言い出すのか滑稽だが、イルは焦った様子でくわっと自分の娘を見る。


「ダメだダメだ。武器など持たせられるか。本当はあの3人にだって持たせたくないくらいなのに」


 父心なのか猛反対で怒涛の勢いで必死に止めているイルの姿があった。


「じゃあ、父上やってよ」
「怪我しちゃうじゃないか」


 ヨナは自分の代わりに父が3人とやってと真面目な顔をしてこれまた無茶を言う。イルもまた真面目な顔をして怪我するから嫌だと断っていた。


「まー、臆病!」
「ヨナ」


 何とも気の弱い父の言葉にヨナは呆れては“臆病”だと叫んでいた。そんな2人の元に届く青年の声はヨナを呼ぶ。


「いらっしゃい、馬に乗せてあげます」
「スウォン!」
「大丈夫です、馬に乗るだけですから」


 2人が声がする方向へ顔を向けるとそこには馬に乗ってはにこにこしながら近づいてくるスウォンの姿があった。
馬に乗せると言い始めるスウォンに珍しく強い口調でスウォンを止めようとしたイルだが、スウォンに丸め込まれたイルは何も言えない。ヨナは嬉しそうにスウォンの元へと駆けていき、スウォンとハクの手を借りて馬に乗っていた。


「ふう、じゃ、私はこれで失礼しますよ」
「何でだよ」
「何でって……ヨナ様がいらっしゃるなら幼馴染3人の時間を作ってはいかがかと思っただけですが」


 ようやく騎射が終わり、ヨナが無事に馬に乗り終えた姿を見てから##NAME1##は馬から降り、馬を馬小屋へと連れて行こうとしてハクに邪魔される。彼ははその行動の意図が分からず、即答で聞き返した。
 即答で問われていまった##NAME1##は気を使ってるんだからと伝える。


「お前も似たようなもんだろ、8年も一緒にいんだから」
「相変わらず、適当」
「それ以上文句言うなら、俺の馬に乗せるぞ」
「それは勘弁してください。男同士が何故、1匹の馬に2人で乗らなければならないのです」


 “何言ってるんだ、こいつ”とばかりに冷たい目線をハクはユエ送った。彼女は下を向きながらため息をつき、ぼそりと呟く。
 どうやら、それは彼にも聞こえていたようで、ユエの腕を掴み今すぐにでも馬に乗せようと雰囲気になった。
 尋常じゃない拒否の仕方をしている彼女はだんだん早口で納得させるように力説する。


「わっ、私にだって縁談くらいあるわっ」


 そんな会話をしているところ、大声でそんな内容が聞こえてきた。


「……ヨナ様に縁談なんてありましたか?」
「嘘に決まってんだろ。スウォン様の気を引く為だろ、どーせ」

 疑問に思ったユエはハクに聞いてみたが、呆れた顔をしてありえないとばかりに首を振る。
 従者として如何なものだろうか、と思うが、この男はそういう男だ。


「ハクとか!」

 ムキになったヨナがスウォンに言い放った言葉はよく知っている名前、だった。


「……へぇ、おめでとうございます。ハク将軍」
「馬鹿野郎」


 ヨナから聞いた言葉は初めて聞いたものだったため、ハクに対して祝福の言葉が遅れてしまう。祝福の言葉を述べるユエに対してハクは思い切りデコピンをし、低い声で失礼な一言を投げた。

「ば、馬鹿ではありません!」
「じゃ、阿呆か」
「意味が変わってません!!」

 痛みを受けた額に手を当ててユエはハクに食ってかかる。彼は平然としながら言い換えたが、それが癪に障ったのかユエはムキになっていた。
 ヨナがスウォンと話している間にハクとユエはずっと言い合いになってしまい、知らない間に日が暮れていた。


 夕暮れ時、ヨナは言ってしまった縁談の話にスウォンが信じてしまったことにショックを受け、落ち込み、ハクは迷惑だと呆れていた。
 2人の言葉に耳を傾けては苦笑しているユエは複雑な感情を抱くが、イルは嘘にならないだろう、と急に言い出した。
 ヨナはそれに否定してスウォンへの好意を父に伝えたが、何故か“駄目”の一点張り。ヨナは父に反対されるとは思っていなかったのか、イルの言葉に呆然としていた。



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