「―父上、何故……ヨナとスウォンのことを反対されるのですか?」
「……ユエ」
ユエは先ほどのいつも以上に否定的な言葉を紡いだイルの姿に違和感を感じて、イルがいるであろう政務室に尋ねる。
イルは何とも言えない顔で彼女を見つめていた。
「……私が、この城から出て行ってしまったからですか……?」
「いや、そうじゃないよ。そうじゃない」
「でも、何故……あの子に好きな方と恋愛をして結婚させてはくれないのですか?私がいればさせて頂けたんですか?」
「……そうじゃない」
ユエは言いにくそうにイルから目を逸らして問いかけたが、イルは否定する。そんな父親にユエは自分のせいでヨナが苦しい思いをしているようにしか感じれなかった。
どんなに彼女がイルに問いても首を振り、否定する言葉しか返ってこなく、自分が求めている言葉は一切返ってこなかった。
「はあ……、そうですか。分かりました。遅い時間に失礼しました。これで失礼します」
イルと話にならない。そう、諦めてユエは政務室を後にする。
「……私の10年前の決断は間違っていたのかしら」
ヨナの護衛の仕事も終わり、自室に戻ったユエは服を脱ぎ始めた。
結んでいた髪留めを解き、髪を解放したユエは蝋燭に火をけた。そして、火を見つめながら瞳を揺らして誰もいない部屋で呟く。
「あの子の幸せを……願ってただけなのに……」
何が正しくて何が間違っているのか全く分からない。いや、誰にも未だ分からないのが現状だ。
それでも、ユエは憎たらしそうに蝋燭の火を見つめていた。