――5日後
緋龍城では16になるヨナの誕生祝いの宴が行われた―


「うっうっう……16かっ。ヨナも立派になったなぁ」
「そうですね……」

 号泣しながら娘の誕生日を祝っては嬉しそうに見つめるイル。の隣ではつられたように涙しているユエの姿があった。
 たくさんの人たちに祝福の言葉を受けていたヨナはイルの傍へと近寄っている。


「父上、やっぱり髪がハネるのよ。今日は結い上げたかったのに、ヒドイわ」
「駄目だ、この娘……髪のことしか頭にない…みんなにごあいさつしなさい」
「あははは……」


 綺麗に着飾ったヨナはイルに一発目に言った言葉はやはり髪のことだった。
 くねくねと自らの髪を弄って拗ねた顔をしている。イルはそんな娘の姿を見て落胆したのか首をがっくりさせていた。
 ユエはというと2人の会話を聞いてただ苦笑してその場を過ごすしかない。そんなイルにヨナは構わず、スウォンを見つけてすぐに駆け寄った。


(……何だか、おかしい……)
「ユエ?どうかしたの?」
「イル陛下。いえ、何でもありません」


 祝いの席だというのに何故だか妙な違和感を感じ周りを見渡す。そんな彼女に気づき、イルは##問いかけるが、王に無用な心配をかけさせまいと判断し首を横に振った。


「すみません、ハク将軍に用がありますのでこれで失礼します」
「うん、分かった」


 彼女は妙な違和感のことを同じ護衛仲間のハクに相談しようと思い、イルに一礼してからそばを離れる。

「――……身分わきまえてますから」
「寂しいなぁ、ハク将軍」
「…人のこと言えないじゃないですか」


 前に聞いた、というよりもユエがハクに言い放った言葉をスウォンに言ってる姿を発見し、それが気に入らなかったようで彼女は眉間に皺を寄せていた。

「あ、ユエ。どうしたんですか?」
「いえ……何か違和感を感じて……ハク将軍に言おうかと思って」
「お前も感じてたのか?」


 ユエに気づいたスウォンは首を傾げてどうしたのか問いたが、当の目的だったことを思い出し、それを2人に伝える。どうやら、ハクも同じように感じていたらしい。彼女を見下ろして聞き返した。


「はい、妙な……違和感ですけど」
「そういえばヨナ、そんな事を言っていた」
「何……っ」


 ユエは気配を探るような鋭い目をしながら周りを見渡す。スウォンは思い出したように同じことをヨナが言っていたと彼女に伝えるとハクは少し驚いたように聞き返していた。


「……今日出入りする人間を見張っていた方が良いかもしれませんね」
「そうだな、スウォン様は姫を頼んます。……行くぞ、ユエ」
「え?は、はい」


 ユエは顎に手を当てては慎重に考えて案を伝えれば、ハクは頷き、見張りにつこうとその場を去る。

(尋常じゃないくらいに嫌な予感がする……今まで以上に)

 朝から胸騒ぎが消えなくて戸惑いが隠せなかった。



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