(お父さんを殺してしまった……おじいさまは違うって言ってるけど私のせいだ……)
葬儀を終えた奴良家はあわただしく妖怪たちが廊下をバタバタと駆けまわっている。
優希はショックを受けて貰っている自室に籠って茫然しながら涙を流し自分を責め続けていた。
「思い出したのに……忘れてたきおくも……力も……何も出来なかった……」
誰も聞いていないたった一人しかいない彼女の部屋で零した言葉は空気に溶けて消えてしまった。
そう、彼女は母の残した文に書かれていた自分の能力を思い出したのだ。しかし、その記憶も役に立たずに涙を流し続けた。
(奴良組から……おじいさまから……お母さん、リクオからお父さんを取り上げてしまった……)
たった5歳の少女が背負うものでは決してないが、実の母親を亡くした彼女にとっては“誰かの死”は大きいものなのだろう。
自分の生まれのせいで鯉伴を死なせてしまったと思っているようだ。
「もう、ここに……いれない……自分の身は自分で守らなきゃ……リク、ごめんね…<約束守れないや……」
彼女は机の前に座って置いてあった筆を手に取ると何かを書き始める。
紙には彼女の涙が落ちて書いた文字をにじませていくと彼女はぽつりとリクオに対して力なく笑いながら謝罪の言葉を紡ぐ。
「……約束は守れないけど……強くなったら会いに来るかもしれない…<でも、私のこと忘れててね……」
優希は誰にも届かない言葉を紡ぎながら書き終わった手紙を三つ折りにして丁寧に机の上に置くと彼女は立ち上がり、彼女の部屋だった場所から去っていった。
(さよなら……奴組のみんな……ありがとう)
誰にも見つからずに奴良家から出た優希は少し遠くにある奴良家の門構えを見て頭を下げると涙をこらえて歩き出した。
伍話
『幼き子の覚悟』