飼い主と飼い猫

 今日は高校生になって3回目の春。
 桜の木が春を祝うように満開だ。

 この学校は毎年クラス替えがある為、私はクラス替えの表を見ていた。


「何組になった?」
「…さあ?」


 自分のクラスを探していると後から聞き慣れた声が私に問い掛けてくる。

 振り返ってみるとそこには思った通り、長身のトサカ頭の幼馴染が居て私は生返事をしながらクラス替えの表に目を戻した。


「さあ…て、お前ね……同じクラス?」
「同じクラスがいいのかな?君は〜」


 私の適当な返事に腑に落ちなかったのか彼は呆れた声で言葉を続ける。


 同じクラス?


 なんて聞かれたから私は思わず意地悪くにやりと笑って、下から顔を覗き込むように問い掛け返した。


「っ、…まあ、2年間同じなら3年同じの方が面白いしな」
「ふーん…じゃ、そんな君に朗報だ!また同じクラスだよ!」


 彼は何故か手を手前から回して自分の首に触ってそっぽ向きながら、言葉を紡ぐと私は彼の予想外の反応に少し驚きながらも満面の笑顔で言葉を返した。


「なんだ、結局一緒か…」
「これでかれこれ12年同じクラスだね、クロ」
「年数にするとやばいな…」


 私の言葉に表情を和らげた彼は憎まれ口のように言葉を呟く。

違うクラスだと思ったのかもしれないけど、私は指を折りながらクロ…黒尾鉄朗と同じクラスになった年数を数えて言葉にした。

 クロは笑いながら言葉を返すとお互い言葉にせずとも自分たちの教室へと歩き始める。


「家も近いし、もはや腐れ縁ですね」
「ははっ、違いねー」
「…そういえば、部活はどんな感じなんですか?主将さん」


 クロの言葉に私も笑っては眉を下げて大げさに言うとクロも同意する。

 ふと気になった私はクロに部活の様子をわざとらしく聞いてみた。


「どんな感じっていつもと変わらない……が、マネージャーは欲しい」
「……なに、その目は」


 私がわざとらーしく言った“主将”の言葉も軽くスルーされて普通に部活の様子を語るクロ。

 少し間を空けて…というか、わざとらしい間を空けては言葉を続けチラッと私の方を見て主将としての欲なのか、マネージャーが欲しいと言い出す。

 何故そんな目で見られるのか分からない私はクロに意図を聞く。


 嘘、本当は分かってる。
 どうせ君は…


「いやー、なまえさんにマネージャーとかやって欲しいなーと思ってですね」
「あはは、却下」
「即答かよ」


 彼は私の思ったとおりの言葉を放つ。
 感情がこもってるともこもってもないとも言えない何とも言えないニュアンスの言葉だった。

きっとそれがクロなりの思いやり。重く聞こえない様にわざと軽く言ってくれる。

 でも、私はあっさり笑いながら、即答で却下すると突込みが返って来る。


「分かってるくせに…私は気の向くまま写真取りたいのー」
「知ってる」


 私は頬を膨らましてクロに抗議の声を上げると知ってるとただ一言だけ言葉を返してきた。

 もう何年もいるからかお互いのことはほぼ何でも知ってるに近い。
 最近はもう1人の幼馴染・研磨とクロの方が一緒にいることが長いから研磨には負けるけどっ。


「だから、“きゃー!黒尾せんぱーい!かっこいー!” …って言ってくれるすごーく可愛い後輩を勧誘しなさい」
「……。」
「変な顔」


 私は良く分かってるクロに頷いてふざけて頑張って声を作っていつもの私なら絶対言わない台詞を言いながらこういう子を探せというとクロは私の言動が予想外だったのか足を止めて目を見開いて驚いてぽかんと口を開けていた。

 あまりにも珍しいアホ面だったから私は思わず憎まれ口を叩きながらカメラを構えてシャッターを押す。


「ワンモア」
「変な顔」
「そっちじゃねえよ」
「ざんねーん、今日限り1回限定でしたー」


 シャッターを押したところでクロはまたもう一度同じことを言えと催促するものだから私は先ほど言った言葉…憎まれ口叩いた言葉をもう一度言うと“そっちじゃない”と否定された。

 私はにひひと笑いながら限定商品が売り切れたように言葉を紡ぐとあっという間に私たちの教室3-5へたどり着いていた。


 どっちを催促されてるかなんて分かってたけど…冗談じゃない!!


 これ、意外と恥ずかしいんだぞっ…!


 私は逃げるように座席順が書いてある前の黒板へと逃げると黒板には出席番号が席に記入されていて、私は自分の出席番号の席…一番後ろの窓側の席に座ると隣の席は運命のようにクロが居て逃げられるはずもなく…“言って”とせがみつづけるクロ。


 恋する乙女としてはこの席、運が良すぎる!

 そう、実は私はこの幼馴染が好きなのだ。
 ……けど、先ほどの発言がふざけてやった“可愛い後輩の真似”は私の中で今更ながら羞恥が生まれてそれ所じゃなかった。

 私は“言わなきゃ良かった”…と心の中で反省会を開いては反対側の窓から外の風景を眺めることにした。
 キャラじゃないことをやるといいことないと改めて思い知ったそんな朝だった。



◇◇◇



 始業式ってこともあって今日は午前中で全てが終わる。
 それでも部活がある子は残ってお昼を食べてから部活動に励むのだ。
 そんな中、私は仲の良い亜紀とお昼ご飯を中庭で食べる。


「3年も同じクラスになれて良かったわ〜」
「ホントだよね」


 亜紀は美味しそうな弁当を頬張りながら同じクラスでよかったと安堵の笑みを溢すと私も釣られて笑いながら返事をした。

 今日は天気が良くて思わず見上げるとそこにはとても綺麗な青と丁度いい加減の白の空が目に写ると写真が撮りたくてうずうずし始めた。
 

「…撮れば?」
「え!いいの!?」
「撮りたくてうずうずしてたくせに…」


 私が撮りたそうにしていたのがバレていたらしく亜紀はいつもならご飯食べてからにしなさい!とか言うのに珍しく呆れた顔しながらも私に優しい言葉を紡いでくれる。

 予想外の言葉に私は目を見開いて亜紀をじっと見てると深いため息をついて更に言葉を紡ぐ。


「じゃ、遠慮なく!」
「って!あんた何寝転がってんの!?汚いじゃない!」
「だってこっちの方が好きなんだもん」


 私は目をキラキラと輝かせては地面に寝転がって空の写真を撮り始めると亜紀はぎょっと驚いた目で私を見ては声を上げて注意する。

 でも、私はさらっと言葉を流しながらレンズから見える空をみてはシャッターを押していた。


「…全く写真バカ……写真部に入ればいいじゃん」
「やだー…私、時間に縛られるの無理〜」
「ネコか、あんたは」


 私が写真を撮っている姿を見ながら、ぽそりと貶してるような言葉が聞こえたが、あえてスルーする。

 “写真部に入ればいいじゃん”と言われると私はげんなりした顔をして首を横に振った。

 限られた時間の中で活動するって窮屈でしかない。
 しかも、部活ある日に撮りたいものがなければ時間が勿体ないじゃないか。
 また逆も如かれり。

 私の言動全てにおいてそう思ったのか“ネコ”という比喩を使ってくる亜紀。


 いいじゃないか。
 ネコになりたいよ、私は。

 そう思いながら仰向けになってカメラを構えてレンズに覗き込んだ。


「なまえ?」
「あ、研磨」
「あら、研磨くん」

 
 覗き込んだ先に居たのは綺麗な青空…ではなくプリン頭になっている幼馴染…研磨だった。

 まさかのドアップに少し驚いたけど、研磨はいつもの変わらない飄々とした顔で覗き込んでいた。

 亜紀も続いて研磨の名前を呼ぶと研磨はペコっと頭を下げる。


「…何してるの?」
「見て分かるでしょ、お昼ご飯中断して写真撮ってたの」
「……そんな格好で?」


 不思議そうに研磨にとっては…というか傍から見たら何やってるのか謎なのかな?

 見たまんまのことをやってると説明すると怪訝そうな顔をして首を傾げる研磨。


 え、そんなにダメ?


「ダメ?」
「……クロに怒られるよ」
「なーんで怒られにゃいけないのー…あいつは私の保護者か!」
「飼い主ね」


 私は不思議そうに首を傾げて問い掛けるとまさかの答えが研磨から返ってきて不貞腐れた。

 なんでそこでクロが出てきて、何故クロに怒られなきゃいけないのか…思わず“保護者か!”と突っ込みを入れると亜紀がしれっと“飼い主”と私の突っ込みに返答してきたのだった。


  いや、待って!
 私、クロに飼われた覚えはない!!


「飼い主ってあんたね…」
「…………。」
「あ、飼い主登場」
「……僕は忠告したからね」


 心の中で突っ込みを亜紀に入れたけどそれだけじゃ満足しなかった私は亜紀に眉をひそめて文句を言いかけると太陽の陽を受けていたはずの私の上半身は何かの影で日陰が出来ていた。

 誰だよって思ってそちらを見たらただただ黙って怖い笑みを浮かべるクロが立っていた。

 亜紀は無関係の人のようにクロの登場に言葉を吐いて研磨はというとぼそりと忠告したから知らないとでも言うようにクロの後ろにさっと逃げた。 


 確かに忠告してた…してたけど、遅くない!?


「………。」
「や、やあ…下から見てもイケメンくん!」
((苦しい発言…))


 笑顔で全てを語っているように見えるクロ。まだ何も一言も話していない。
 私はこの空気を変えるべくパシャリと写真を撮っては引き攣った笑みを浮かべて意味不明なことを発言していた。

 側に居る亜紀や研磨が冷ややかな目で見ていたから心の中で突っ込んでいるのはわかったけど、私は目の前にいるクロが威圧的でそれどころじゃなかった。


「なまえ…お前、女だよな?」
「男に見えるなら眼科を紹介するよ」
「そういう意味じゃなくて…お前は女だって自覚をもう少し持てよ」


 黙っていたクロが口を開いたと思ったらまさかの発言に十数年幼馴染やってて性別を聞くのかと思った私はクロを少し睨みながら、嫌味を言うとクロが深いため息をついて失礼な発言をしてくる。


「何が」
「普通の女子はスカートで地べたに寝転がりませんー」
 

 向こうの意図が分からず私は問い掛けると嫌味ったらしくクロは言葉を言い放ってきた。


 言い方が本当にむかつくな…。


「……ごめんなさいねー、特殊仕様で」
「やめろって言ってんの」


  私は負けじとばかりにクロと同じような言い方で言葉を返すとクロが求めていた言葉はそれじゃなかったらしく急に真剣な顔して“やめろ”とか言い始める。

 その顔に少しドキッとしてしまった自分が居る。


「ほーら、黒尾にも言われてるじゃない。やめなさいよ、なまえ」
「うー…だってローアングルって最高だよ?それに下、短パン履いてるし」
「クロ、なまえみたいなマニアには一般常識通用しないよ」
「それ、フォローになってない!」


 クロに釣られたかのように亜紀もクロと一緒になって地べたに寝転がることをやめるように言うと私は納得いかずにローアングルの良さを力説すると共に皆が気にしているだろう事を言ってみたが説得は出来なくて研磨は私に言うことを諦めたかのように一言言うが、それは全く持って私のフォローになってなくてというかわたしにとって失礼な発言過ぎて思わず突っ込んでいた。


「……なまえ?」
「極力やらないように気を付けまーす…」
「やっぱり、飼い主と飼い猫ね」


 いつもより低いクロの声にそろそろやばいと思った私は起き上がって目をそらしながら小さい声で返事をするとうふふと笑い声が漏れているほうを見ると亜紀が笑いながら“飼い主”と“飼い猫”だという。


  ちょっと…“ネコ”から“飼い猫”に降格してるんですけどっ


「亜紀…笑ってるのはいいけど、早く食べないと部活始まっちゃうんじゃ…」
「大変!!もう行かなきゃ!じゃね!なまえ!黒尾!研磨くん!!」
「あ、うん…また明日ね〜」


 笑われていることに不服だった私は拗ねた顔をしながら時間を見たらもうすぐ部活が始まる時間帯になっていたお弁当がまだ残っている亜紀に時間が大丈夫か聴いてる途中で亜紀は私の言葉を遮り、急いで弁当箱を閉じて颯爽とその場を去っていった。

 クロと研磨は何も言うこともなく私もかるーく挨拶をして終わってしまった。
 こういうときに思う。


 私の友人は嵐のような人物だなーと。


「なまえの友達って嵐みたいな人だよね」
「だな」
「同意」


 やはり私の幼馴染だからなのだろうか…三人とも思っていることは同じだったらしく研磨の言葉に私とクロは亜紀が去って行った方向を見て同意した。


「研磨、先に部活行っててくんね?」
「…分かった」


 クロはいきなり研磨に先に部活に行くように言うと研磨は何かを察したように首を縦に振って体育館へと歩いていった。


「主将さんが遅刻は良くないんじゃないのー?」
「俺は用事があるんですー、夜久に言ってあるから問題ねえよ」
「用事って告白タイムー?」


 クロが部活を遅刻するなんて珍しいなと思いながら冷やかしのように問い掛けるといつものノリで言葉を返されると首を傾げてまた問い掛ける私。


 告白タイム?


 頭を過ぎったのはその言葉。
 すっかり忘れてたけど、ここ中庭は定番中の定番の場所になっている。


「……。」
「あー…ごめんごめん。それじゃ私も移動するねー…」


 黙っているクロを見る辺り自分の完が当たってると思った私は少し気まずい気持ちになりながら当たり障りのない言葉を並べてその場を去ろうと歩き始める。

 これから告白されるんだー…なんて思ったら少し悲しくなったり自分勝手な感情だなと心の中で苦笑する私。 


 誰かの告白タイムなんて見てて気持ちよくないし。
 しかも、相手がクロなら尚更。
 ちょー複雑。


 そんな事を考えながら歩いていたら誰かに腕を引っ張られて歩みを止めるしかなかった。


「……。」
「…クロ?」
 

 振り返ると神妙な顔をしたクロが黙ったまま私の腕を掴んでいた。
 訳が分からず私はクロに声を掛けるがピクリとも動かないし、下を向いてるせいか表情も見えない。


 こんなに反応しないってお地蔵さんにでもなりたいの?


「おーい、てつろーさん?」
「……。」
「クロテツ!」
「も○テツ見たいに言うなよ」


 いつもの彼じゃないみたいで心配になり声を掛けたけど、全然返事がなくて…でも、腕は離さないでそのままでいるから私もどうしたらいいのか。

 分からなくなってとっさにあだ名で呼ぶと呆れた声で突込みが返ってきた。 


「お、良かった。反応した」
「お前ね…」
「どーしたの?何かあった?」

 
 やっと反応したクロを見て私は安堵の笑みを溢すとクロは呆れた顔をして私を見下ろしていた。

 珍しいくらい黙っていたクロを私は本心で心配して少しあった距離を縮めて近寄り声を掛ける。


「…好きだ」
「はい?」
「だから、……好きだ」
 

 クロは唐突に言葉を溢す。
 私の予想外の言葉で私は驚いてもしかしたら聞き間違いかもしれないと思って聞き返してしまった。

 きっと私の顔は素っ頓狂な顔をしてるんだろうと思う。
 クロは私が理解してないと思って同じ言葉を言おうとしてるのか。

 深い息を吐いて息を吸ったなっと思ったら、掴まってたままの腕を引っ張られて耳元で囁かれた。


 う、そだ…ってか、ずるい!!
 何!耳元って!?耳元は卑怯だ!!


「っ、…な、なに…言って…」
 

 冗談でしょって言おうと思った言葉は口から放たれることはなかった。

 クロの顔を見て言うつもりだった言葉はクロの顔を見た途端冗談じゃないことが明白だった。


「……クロ、顔真っ赤」
「それ思ってても言っちゃ駄目でしょ」
「っ、」


 そう、あのクロの顔が真っ赤だったんだ。あのクロがだよ!?


 私は思わずぽつりと思ったことを口にしてしまってそれに対してクロに突っ込まれた。

 そして、私は彼から言われた二文字に徐々に自覚して頬が赤くなっているだろうと思った。
 だって、体温上がってるもん。

 
「で、返事は…?」
「まさかクロの告白タイムってそっち側だったんだ…」
「おーい、時間巻き戻ってる?」


 返事の催促をする彼に私は実感が湧かないのか現実逃避なのか。
 大分前に振った話題を自分で掘り返しているとクロが今度は私を心配して手を振って現実に戻そうとしている。


「だ、だって…いつもされる側じゃん。する側になると思わなくってつい…」
「いや、俺のその話はいいから…返事くれね?」
「…急かす男はモテないぞー」
「………。」

 
 私は天パリながら言い訳を述べているとその話はいいと強制終了させられてまた催促される。

 私は少し黙って拗ねたように憎まれ口を叩くといつもなら返してくる言葉もなく黙って私の返事を待っていた。


「……クロ、屈んで」
「何で?」
「いーから!」


 私は覚悟を決めてクロをまっすぐ見つめると屈むことを要求する。
 だって、身長高すぎだもん。

 なんで今このタイミングでその要求するのか疑問のようで首をかしげて問い掛けるクロに私は急かすとしぶしぶかがみこんでくれた。
 私との距離がいつもより縮まる。


「おわっ……っ!?」
「………。」


 私は勢いよくクロの胸倉を掴んで引っ張って顔を接近させると驚いたクロの声が聞こえる。
 でも、途中でクロの声は何かで遮られた。

 何かってもちろんそれは私の唇。

 軽く口付けてはそっと離すとクロは驚いた顔して呆然と私を見つめていて私は恥ずかしくなって掴んでいた手をぱっと離して自分の積極的な行動に今更照れて黙ってしまった。


「なまえ…それって、どういう意味?」
「……にゃー…」


 ここまで行動すれば分かるでしょ!?


 クロがずるいから私も予想外のことしようとしたらこうなったんだけどなんで平然としてるの!?
 いや、顔赤いけどさ!!

 なんて心の中で文句をつらつら言いながらジト目でクロを見て猫の鳴き真似をする。


「俺、なまえから言葉で欲しいんだけど」
「…好きだよ、ばーか」


 頬に手を添えられて顔背けるにも背けられないようにされた私はもう観念するしかなくて…素直な気持ちを伝える。

 絶対、さっきより顔赤い。


「よく出来ました」


 なんて嬉しそうに笑いながら、クロは私の唇に口付けを落とす。


「……恥ずかしい」
「あんなに積極的だったのにか?」
「い、言わないで!!」


 恥ずかしくて自分の頬を手で隠してるといつもの調子でクロが私をからかう。


「…クロ」
「何だよ」
「私、野良猫から降格して飼い猫になりました」
「は?」


 私はクロを呼ぶとクロは返事して私を見る。

 私は唐突に降格したと宣言すると意味が分からないって顔をするクロは首を傾げていた。


「飼い猫になったからちゃんと首輪付けないと逃げちゃうよ」
「…!!」


 私はクロを手招きして耳元で囁いてみた。
 告白された時の仕返しも、少し含めて。

 クロは目を見開いて驚いた顔をして私はしてやったりと笑う。


「首輪買わないとな…それとも」
「…それとも?」
「害虫除けの虫さされ?」
「っっ〜〜〜!!」


 私の冗談にニヤリと笑って同意したと思ったら言葉を更に続けるクロに私は首を傾げると耳元で遠回しな言い方をしてるけど私が思った答えはきっと正解で…再び引いた顔の熱が上昇する私に勝ち誇った顔をするクロ。


 …きっとクロには適わないんだよね。


「私は首輪の方がいいでーす!」


 なんて大声を出してクロから逃げ出した。
 彼は嬉しそうに微笑んでいた。



飼い主と飼い猫。
(ところで、早く部活行きなさい!主将!!)
(…見に来ねえの?)
(私は写真撮るのっ!…でも、終わるの待ってる、かも)



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