どうやら彼は

「どこかから歌が聞こえると思ったら、どうやら俺は鼻歌を歌っていたらしい」
「………………………………え、酔ってるの?それとも頭ぶつけた?それともボケたつもりなのかな?降谷さん・・は」
「俺は至って真面目に言っている」
(………顔若干赤いし、珍しく酔ってるな、これ)

 少し頬を赤くさせて真面目な顔をしながら彼の同僚であるなまえに言葉を掛けるが降谷の言葉は彼女にとって予想外の言葉だったのか頬を引くつかせて問い掛けてわざとさん付けして彼の名前を呼ぶ。
 しかし、降谷は顔色変えずになまえの問いかけに答えると彼女は深いため息をついて彼の状況を把握する。
 無事ひとつの山が片付き、先程まで他の同僚たちと飲んでいたようだ。

「因みに聞くけど」
「ん?何だ?」
「今日何徹目?」

 なまえは頭を抱えて降谷に言葉を掛けると降谷は首を傾げて彼女に問いかけるとなまえは彼に徹夜何日目なのかを問う。

「……4徹だな」
「あー、なるほど…そりゃ酔いも回るわ」

 降谷はなまえの問いかけに少し考えてから返答すると彼女は納得した。徹夜4日目にしてお酒を飲んだのだから酔いが回るのも当然だからだ。

「何の話だ」
「どこかから歌が聞こえると思ったら、どうやら俺は鼻歌を歌っていたらしい…って言ってるけどそれはアンタの幻聴」
「嘘だろ?」

 なまえが納得した意図が掴めず、降谷は彼女に問い掛けるとなまえは目を閉じて冒頭に言っていた彼の言葉に対して真実を告げると彼は信じられないとばかりに眉を寄せて言葉を返した。

「本ト。鼻歌歌ってすらしてないからね?」
「……冗談はやめろ」
「冗談やめて欲しいのはこっちのセリフ!!」

 彼の言葉になまえを眉間に皺を寄せて言葉を返すがまだ納得のいかない降谷は彼女の冗談にしようとするがなまえは頭を抱えたまま言葉を少し荒らげて返した。

「そう怒鳴るな」
「アンタのせいでこっちのHPはもうすぐ無くなりそうよ…」

 少し声を荒らげただけなのに降谷はなまえに対して怪訝そうな顔をして注意を促すとその言葉に納得のいかない彼女は文句を言う。

「はは…っ!」
「えっ、ちょ、ちょっと降谷!本トに大丈夫??」
「あ、ああ…飲み過ぎたようだな」

 なまえの言った文句に降谷は思わず笑うが足取り悪くよろけるとなまえは驚いて彼の名前を呼んでは彼の心配をする。
彼は何とか踏みとどまっては困ったように笑いながらなまえに言葉を返した。

「全く…いつもの降谷はどこにいったのよ」
「……今日…たまたまうたた寝した時に」
(こいつでもうたた寝することあるんだ…)

 深いため息をついてなまえは降谷に文句を言うと彼は少し影を落とした顔をしてぽつりと小さく呟く。そんな言葉を何とか聞き取るなまえは意外な言葉に驚いてはただ黙って彼の言葉を聞いていた。

「アイツらが出てきたんだ」
「っ、…………」
「…悪いな」

 小さく苦しそうに呟く降谷の言葉になまえは目を見開いて悲しそうな顔をして黙ったまま彼を見つめる。
 なまえから言葉が返ってこないことに彼女をふっと見る降谷は悲しい顔をしていた彼女に眉下げて謝罪の言葉を告げた。

「どいつもこいつも早死しちゃって困ったもんよね」
「……みょうじ?」
「よいっしょ…アンタももうアラサーなんだからあんまり無茶しないでよ」

 なまえは目を閉じて深いため息をつくと警察学校の同期だった4人に対して毒を吐くとその言葉に降谷はキョトンとして彼女の名前を呼ぶ。
 なまえは酔ってる降谷の腕を自身の肩に掛けて彼が歩くのを手伝ってはむっとした顔をして降谷に忠告をした。

「はは…お前も同じだろ」
「私は無茶しないもの…それに降谷は私より大きい案件抱えてんだから」
「……そんなことないさ」

 彼は力なく笑いながらなまえに言葉を返すが彼女は彼の言葉を否定して少し不安そうに瞳を揺らしながら言葉を紡ぐと降谷は目を閉じて彼女の言葉を否定した。

「お願いだから私を置いて逝かないでよ」
「お前もな……」
「って、ああ〜もう!重いっ!…あ!タクシー!止まってくださーい!!」

 なまえは見えない表情で降谷に本音を言うと彼は少し切なそうな顔をして彼女の発した言葉をそっくりそのままなまえへと返すと意識を手放す。
 まさか意識を手放すと思ってなかったなまえはそれに驚いては文句を言いながらタイミングよく現れたタクシーに思い切り手を振って止めてもらうとそのまま彼女の家へと車は発進した。

◇◇◇

「ん……んん?」
(ここは一体…どこだ)
「あ、おはよ?」

 うつ伏せになりながら朝日を感じて目をゆっくり開ける降谷は見知らぬベッドの上で寝ている状況に寝ぼけている頭で考えていると身支度をしているなまえが彼が起きたことに気がついて言葉をかけた。

「…なまえ……っ!?」
「……その様子じゃ覚えてないみたいね」
「お、覚えてないって…何をだ?」

 声を掛けてきたなまえに気が付いた降谷は彼女の名前を呼ぶと覚醒したのか目を見開いてガバッと起きて状況を確認する。
 なまえは呆れた顔をしながら腰に手を当てながら降谷にこの状況について話すと彼はひとつの推測がついたようでやらかしてしまったのではないかと冷や汗をかきながら彼女に問いた。

「え〜…知りたい?」
「……。」
「昨日…私がどんなに辛い思いした、か……」
「す、すまない…」

 なまえはもったいぶりながら彼に問い掛けるが降谷は黙ったまま彼女を見つめる。なまえはベッドの縁に座り、妖艶に微笑みながら意味深な言葉を言葉にすると降谷は自分の推測通りに彼女に手を出したと思って謝罪の言葉を口にした。

「……ぷっ、因みに一線は超えてないわよ」
「………は?」
「つまり、男女の関係は持ってないってこと。意識失ってるアンタをタクシーに乗せて私の家まで運ぶのな辛かっただけよ」

 彼のやらかしたことに対するショックを受けている顔を見ては思わずなまえは吹き出して笑いながら彼に言葉を掛けると降谷はその言葉に固まって間抜けな顔を彼女に見せる。
 なまえは不敵に微笑みながら彼が知りたかった真実を降谷に教えた。

「………お前な」
「ふふ、焦った?」
「ああ、焦った」

 教えられた真実に安堵して肩の力を抜いてなまえに文句を言いたそうに睨むと彼女はニヤニヤしながら降谷に問掛けると彼は深いため息をついて言葉を返した。

「これでおあいこねっ」
「みょうじには適わないな」
「あら、それは光栄だわ………今日はよく眠れた?」

 悪戯笑顔で辛い思いした分降谷を騙したことで帳消しとばかりに言葉をかけると彼は困ったように笑って彼女に言葉を返すとなまえは褒め言葉を受け取り、少し間を開けてから真面目な顔をして問い掛ける。

「……?あ、ああ…」
「…それなら良かった!」
「………」

 なまえが急に真面目な顔をして問い掛けてきたために降谷は不思議そうな顔をして戸惑ったような声音で肯定の返事をすると彼女はほっとしたように笑って言葉を返す。
 その表情に降谷はじっと見つめていた。

「…あっ!私もう出るから鍵はポストに入れて置いてね!お風呂と冷蔵庫の中は適当に使っていいから!じゃーね!」
「嵐のような奴だな…」
(でも……あいつのおかげで優しい夢を見た気がする)

 なまえは時計を見て出る時間が迫っていることに気が付き、降谷に言葉をマシンガンのように投げかけては寝室から出ていった。
 言葉を返す隙を与えなかったなまえに降谷は呆然と見つめながらぽつりと言葉を零すと彼は膝に肘を乗せて頭をくしゃとかきながら微笑みながら優しい目でベッドを見つめていた。

(…普通に出来たよね……?)

 なまえは少し頬を赤くして玄関で靴を履きながら降谷との会話に違和感がないか自信に問いかけていた。

(ベッドに寝かせたはいいけど腕引っ張られて抱き締められて胸に顔埋められるわ…馬鹿力過ぎで抜け出せないわ…で大変だったし恥ずかしかったぁぁぁ)

 先程降谷に話した真実には更に追加事項があったようで彼を家に運んでジャケットを脱がし、ネクタイを外してベッドに寝かせて布団をかけようとしたらそのまま腕を引っ張られて抱き締められてしまったようだ。どうにか抵抗しようとしたようが力尽きてそのまま降谷の抱き枕になって寝たようだ。
 昨日の出来事を思い出したなまえは靴を履き終わると玄関口でしゃがんて羞恥で顔を手で覆う。

(…傷付いても苦しくても泣けないのが降谷だもんね……)

 そっと顔から手を離すと昨日苦しそうに寝ている降谷に思わずあやす様に彼の頭を撫でて眠りについたことを思い出したなまえはため息をついて立ち上がりながら降谷のことを思って切なそうな顔をした。

「器用なんだか不器用なんだか…困った奴ね」

 なまえは玄関の扉の開けて外に出ると困った顔をして不器用な同期のいる寝室を見て一言…彼には聞こえない声でぽつりと言葉を零した。


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