照れ屋なキミと

「ねぇ、カルマ君」
「渚君、どーしたの?」

 今日も平和に暗殺教室が行われたE組の教室は放課後になっていた。

 渚はカルマの席まで行き、彼に声をかけるとカルマは声をかけられて気だるそうに渚に問いかける。


「この前言ってたお店が今日からオープンなんだって、今日行かない?」
「あー、あそこ今日からなんだ?いいよ」
「2人して何話してるのー?」

 渚は嬉しそうに微笑みながら、以前楽しみにしていた店がオープンしたことを述べてカルマを誘うとカルマは思い出したようにひとつ返事をした。

 突如カルマの後ろから抱きつく女の子は二人の会話に加わる。


「っ、!」
「あ、みょうじさん。前話してたケーキ屋さん行こうって話をしてたんだ」
「いーな!私も行っていい??」
「僕はいいけど…」


 突然後ろから抱きつかれた事にカルマは驚き目を見開くがそれのりも抱きつかれた事で体を強ばらせ、少し頬を赤く染めていた。

 渚はみょうじにも話していたお店のようで先程カルマに話した内容を伝えると明るい声で羨ましがって加わっていいかと問い掛けると渚はカルマを見て彼の様子を伺う。


「ねね、カルマくん。いーよね?」
「……」
「あらら、冷たくなーい?」
「…………じゃま。どいてくれない?」


 なまえはカルマの顔を覗き込むように問いかけるとカルマはそっぽ向いて素っ気ない態度をとった。

 彼女は拗ねた顔をしてそっぽ向いた方に顔を移動させてカルマの顔を見ながら文句を言う。

 カルマは逃げるに逃げられなくなった顔の方向に少し固まって、何も言わず黙っていると頬を赤く染め眉間に皺を寄せて嫌々という態度を取った。


「えー、何でよー」
「っ、…顔近い」
「うー……」
((カルマを翻弄させるなんてなまえにしか出来ないよな…))


 なまえは拗ねた顔をしてどけと言う理由を求めて顔をカルマに近づけるとカルマはぎょっとした顔をしてなまえの顔面に手を押し付ける。彼女はわざとらしい声を出してカルマから離れた。

 この2人のやり取りを見たクラスメイトたちはいつも飄々としているカルマが取り乱している姿を暖かい目で見守っている。


「……渚君、いこ」
(あーもー…、くっつき過ぎ…!!)


 ガタッと席から立つとカルマは渚に声をかけては鞄を持ってスタスタと歩き出す。

 彼は先程より頬を赤く染めながら心の中でベタベタとくっついていた彼女に文句を言った。


「あ、うん」
「私はいいのー?ダメなのー?」
「大丈夫だから、一緒に行こう」
「…ふふん、じゃ、おっかけなきゃっ!…かーるーまーくーん!!」


 カルマはわざと渚にだけ声をかけると渚はひとつ返事をした。

 なまえはカルマが可or不可を答えずに廊下に出た為、拗ねた顔をして疑問の言葉を零すが、渚がふわっと笑いながら、カルマの代わりに可の言葉を紡ぐ。

 その言葉を聞いた彼女はにやりと笑ってカルマの背中を追いかけるように走っていった。


「…というか、僕が邪魔だよね。どうしよう…」
「あはは、私もついて行こうか?」
「茅野…すごく助かる」


 走っていくなまえの後ろ姿を見ていた渚は目を落として肩を落としていると苦笑しながら、茅野は渚に協力的な言葉を紡ぐ。

 その言葉にほっとしたのかはにかみながら、渚は言葉を返した。


「つーか、あれだけ言葉数少ないカルマも珍しいよなぁ」
「まあ、それだけ緊張してるんだろうけどね」
「分かりやすいよな、あいつ」


 頭の後ろで腕を組みながら前原が眉下げて言葉を零すとクラスメイトたちは同じことを思っていたようでうんうんと頷く。

 片岡がふっと笑いながら前原の言葉に続いて言葉を紡ぐと磯貝は腰に手を当てながらふっと笑った。


「というか、お前ら早く追いかけなくていいの?」
「「あっ!」」
「茅野、いそご!」
「う、うん!」


 杉野がふと疑問に思ったのか渚と茅野に問い掛けると思い出したかのように渚と茅野は声を上げて急いでカバンを持ってカルマとなまえを追いかけた。


「カルマもカルマだけどさ。なまえって、薄々カルマの気持ちに気付いてるよな、あれ」
((とんでもないやつを好きになっちまったな、カルマ……))


 渚と茅野が教室を出て行ったあと、前原がふと思い出したように言葉を漏らすと彼の言葉はやはりクラスメイトたちも思っていたことらしい。

 彼らはカルマを思って憐れんだような生暖かい目で教室の窓から見えるカルマの背中を見つめていた。



◇◇◇



「美味しかったー!!」
「うん!ショートケーキのスポンジのふわふわ感がさいこーだったね!」


 両手をあげて満足そうに茅野が声を上げると満足そうに笑いながら、茅野に同意して先程食べたケーキを思い出して言葉を漏らす。


「…2人とも目がキラキラしてたね」
「……」


 渚は困ったように笑いながら茅野となまえを見てケーキを食べてる姿を思い出しながら、言葉を零すとカルマは渚の隣で黙って興奮している2人を見ていた。


「…ねね、渚!この間お願いしてたやつ、今日行ってもいい?」
「え…?」
「忘れたの?一緒に買いに行ってほしいって言ってたヤツ!」


 茅野は思い出したかのように渚に声をかけると両手を合わせてお願いとばかりに首を傾げる。

 彼女が何を言っているのか理解出来なかった渚は不思議そうな顔で短く言葉を返す。

 まだ言っている意味が分かってないと悟った茅野はまるで"設定"を説明するように渚に話を始めた。


(ああ…そういうこと)
「ああ…あれね。いいよ」
「じゃ、カルマ君。なまえのこと送ってあげてね!」


 茅野の意図がやっと渚に伝わり、渚は微笑んでひとつ返事をすると茅野はニコッと笑ってカルマになまえを送り届けるよう伝える。


「はあ?何でそうなるの?」
「暗くなってきたのに女の子一人で帰す気?」
「……」


 まさかそこで話を振られると思っていなかったのか。

 カルマは驚いた顔をしながら、茅野に反論の声を上げると彼女ははニコッと笑って反論を許さないとばかりの言葉を返した。

 事実、日は既に沈んでいたため、正論を言われているのも同然だったからかカルマは黙り込むしかない。


「じゃ、任せたからね!なまえ、また明日ね!」
「バイバイ、カルマ君。みょうじさん」
「え、あ、うん…また明日〜」
「…ほら、行くよ」


 反論がないカルマを見て茅野は満足そうに頷くとなまえに手を振った。

 渚もカルマとなまえに向かって手を振り、別れを告げる。

 流れるように行われた会話に思わず呆然としていたなまえは2人に向けて手を振っていると隣にいるカルマはぶっきらぼうになまえに言葉をかけて歩き始めた。


(はぁ…俺、まともに話せたことないんだけど)
「ねね、カルマくんはどんな子が好きなのー?」
「…ぶっ!!」


 カルマはため息をついて自分の隣にいる女の子をちらっと見ては二人きりで帰っている状況に緊張した顔をしていると突然なまえはカルマの方を向いて爆弾を投下した。

 唐突の問いかけにカルマは思い切り吹いてしまう。


「くすくす、そんなに面白かったー?あ、もしかして、いるの?好きな子??」
「……」
「ねえねえ、ほらほら!教えてよー!」


 思い切り吹いたカルマになまえは笑っているとはっとした顔をしたと思えば、ニヤニヤ笑いながら好きな子がいるのかと問い詰めた。

 カルマは照れた顔をして黙秘をしているが、そんな彼の反応が面白いとかぐいぐいと近寄ってカルマの好きな人を問い詰めた。


「…みょうじさん、は?」
「んー?」
「……みょうじさんは…いる?」


 カルマはポツリと小さく言葉を零くが、みょうじの耳に届かなかったのか。

 彼女が首を傾げるとカルマは言葉に詰まりながらもずっと気になっていた言葉を彼女に問いかける。


「んー…気になってる人はいる、かな」
「っ、へぇ…」

 カルマの問い掛けになまえは顎に人差し指を当てて考えながら、答えた。

 カルマは興味なさそうに返事をしているが、彼女に気になっている人物がいると知り、ドキッとしたのだろう。

 声音が硬い。


「私のこと多分好きなんだと思うんだけど…素っ気ないし、ぶっきらぼうなんだよね〜」
「…ふーん」
「でも、照れた顔とかすごく可愛いんだよ」


 なまえは更に言葉を続けてどんな人が気になっているかをカルマに教えるとカルマの声は若干低くなるも生返事をする。

 そんな彼に気付いているのかいないのか。

 なまえは更に笑いながら、気になる相手の惚気をし始めると次第に人の流れは少なくなり、いつの間にか周りには誰もおらず、二人きりになっていた。


(イライラしてきた…何でこんなの聞かされてるわけ?)
「へー…」
「それでね、いつも飄々としてるのに私と話す時だけ奥手なの!もー、ギャップ萌えっ!」


 彼女の惚気を聞いていたカルマは眉間に皺を寄せてイライラしながら生返事をしていると自慢話のように気になる人物のことを話すなまえの表情はまるで乙女だった。


(…気になる奴っていうより、好きな人じゃん)
「………」
「あれ?カルマくん、機嫌悪い?」


 なまえの乙女の顔を見た時にカルマは嫉妬心を抱き、機嫌が悪くなって先程まで生返事をしていたが、黙ってしまうとなまえはカルマの顔を覗き込んで問い掛ける。


「…別に」
「はあ……ねえねえ、カルマくん」
「何………っ!!?」


 カルマはまたぶっきらぼうに言葉を返すとなまえは深いため息をついてカルマの前へと回り込んで彼の名前を呼ぶ。

 横にいたなまえが突然目の前に現れて足を止めて言葉を返そうとするが、なまえはカルマの襟元を掴んでぐいっと彼女の方へと引き寄せて口付けをした。

 突然の彼女の行動にカルマは目を見開き固まっていたが抗うことはしなかった。


「……ほら、照れた顔が可愛い」
「っっ、……何それ」


 啄むように口付けをしたなまえはそっと唇を離すとふわりと微笑んで頬を真っ赤に染めているカルマを見て言葉を零すとカルマは顔を隠すように手を自身の顔に覆って憎まれ口を叩く。


「ねえ、カルマくんの好きな子は?」
「分かってて聞くとか、いい根性してるよね」
「だって、これ以上待てないもん」


 なまえはにこにこしながらカルマに分かりきっているような問いかけをするとカルマはむっとした顔をして文句を垂れる。

 しかし、なまえはさらりと彼の文句に言葉を返した。


「…っ、みょうじさんが好きだよ」
「ふふ、私もカルマくんが好き」


 気持ちがバレているにも関わらず言葉にするのは照れがあるのか彼は照れながら、なまえに想いを告げると彼女は満足そうに微笑んでカルマに彼女の想いを告げた。


「……っ、」
「ふふ、また照れてる?………っ!?」


 カルマは彼女の笑みに頬を赤く染めて言葉に詰まっているとなまえは嬉しそうに微笑んで彼に問い掛けるが突然唇を奪われ目を見開いて驚く。


「………やられっぱなしは趣味じゃないから」
「ふ、不意打ちだぁ…」
「へぇ、照れた顔も可愛いね」


 カルマは唇を離すと頬を赤く染めたまま憎まれ口を叩くとなまえはやられたとばかりに顔を赤く染めて言葉を漏らした。

 珍しく頬を赤く染めているなまえを見て優越感を覚えたのかカルマは不敵に微笑んで彼女を褒めるような言葉を紡ぐと彼はなまえの手を握って帰路につく。

 繋がれた手はもちろん、世間で言われるところの恋人繋ぎだった。



 翌日…カルマとなまえが教室に入るとニヤニヤ笑いながら生暖かい目で見守られていることに気付き、不思議に思っていると殺せんせーは涙をハンカチで拭きながらカルマにお赤飯を渡していた。

 カルマはそれがどういう意味かを理解すると照れ隠しで殺意を見せ殺せんせーに向けて銃を発砲したのだった。



照れ屋なキミと

―次の段階ステージに進みたいんです―


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