If…-彼女が浅野姉だったら-

「こら!赤羽くん!また制服が乱れてるじゃない」
「……毎朝、よく同じことで怒れるよね〜」
「怒らせてるのは誰かしら……?」


 校門の前に立って風紀という文字が入った腕章を付けたオレンジがかった明るい髪をハーフアップさせている女子生徒はペンとクリップボードを持ていると門をくぐろうとする生徒に目を付けると眉間に皺を寄せて注意をする。

 注意を受けた男子生徒…赤羽業は彼女の声かけに足を止めては呆れたように言葉を返すが、その言葉に彼女はにっこり笑いながら彼に問い掛けた。


「ははっ、俺だね」
「もう……ネクタイは?」
「家」


 カルマは悪気もなく笑っては彼女の問い掛けに答えると彼女は反省の見えない彼にため息を付いては首元に見られないネクタイの居所を問いかける。

 カルマから返って来た返答はたった一言だった。

 
「……せめて第一ボタン閉めましょうか」
「えー……窮屈だから嫌なんだよね」
「……ふふ、そんなに反省文を書きたいのね?」


 彼から返って来た言葉に彼女はふぅーと息を吐いては思い頭を支える様に自身の額に手を添えながらカルマに注意をする。

 彼女の忠告にカルマは気だるそうに従いたくないと抵抗を見せると彼女は輝かしい笑顔をカルマに向けて首を傾げながらほとんどの生徒が面倒なことだからやりたくないと言うであろう必殺技を出して問いかけた。


「はぁ……閉めればいいんデショ」
「言われる前から閉めておくと更にいいわね」
「真面目なとこは弟そっくりだね」


 彼女の笑みにカルマは頬を引き攣らせるとため息を付いて渋々第一ボタンを閉めると彼女は言うことをやっと聞いたカルマに更に小言を言う。

 呆れた顔をしたカルマは嫌味を言う様に彼女の弟とそっくりだと言葉を零した。


「血筋は争えないのかしら……ふふ、良く出来ました」
「っ、……子供扱いしないでくれる?」
「あら、つい」


 カルマの言葉に困ったように首を傾げて自身の頬に手を添えて眉を下げるとちゃんと第一ボタンを閉めたカルマに笑みを零すと背伸びをしてカルマの頭を撫でて子供に言う様に彼を誉める言葉を掛ける。

 まさか頭を撫でられると思っていなかったのかカルマは言葉に詰まっては半目になりながら素っ気ない態度で彼女に問いかけると彼女ははっとした顔をして彼に言葉を返した。
 

「ついって……」
「姉さん」
 

 彼女の言葉に呆れて目を逸らしてため息交じりで言葉を零すと彼女を“姉”と呼ぶ男の声が2人の耳に届く。


「あら、学秀。おはよう」
「おはよう……姉さんに1つ忠告」
「……?」

 
 声のする方へ顔を向けると彼女の弟…浅野学秀が眉間に皺を寄せて突っ立っており、彼女は弟に挨拶をする。

 学秀は眉をぴくぴくと動かしては姉である彼女に忠告するとばかりに言葉を投げかけると何事かと思っているのか彼女は首を傾げて学秀の言葉を待つ。


「朝からイチャつくのはどうかと思いますよ」
「失礼ねっ!ちゃんと風紀委員の仕事をしてるじゃない」
 

 学秀はちらっとカルマに目を向けては彼女に忠告の言葉を掛けると彼女は学秀の言葉に納得できなかったのかむっとした顔をして風紀委員としてちゃんとやってると反論をした。


「僕にはイチャ付いているようにしか見えない」
「別に問題ないデショ」
 

 姉の反論に学秀はため息を付いては更に言葉を返すが、そのやり取りにカルマは横やりを入れて学秀に言葉を返し始めた。


「赤羽くん……?」
「俺たち付き合ってんだし」
「っ、ちょ、は、恥ずかしいから離れて!」


 カルマの言葉の意図が分からなかった彼女はカルマを見て首を傾げているとカルマは彼女の腕を引っ張ると彼女を背中から抱き締めてわざとらしく弟である学秀に見せつける。

 公共の場で抱き締められると思っていなかった彼女は目を見開いて顔を真っ赤にさせてカルマに離れる様にじたばたするが腕を解こうにも力が敵わなくされるがままになっていた。


「え〜〜……俺、最近センパイに構って貰えてないんだけど」
「っ、今日…の放課後なら、空いてるから……離れて、下さ…ぃ……」


 腕から逃れようとする彼女の頭に自身の顎を乗せながら文句を言うカルマに彼女は彼の発言に言葉を詰まらせて彼の機嫌を直して解放してとばかりにとぎれとぎれに言葉を紡ぐ。


「約束だからね、なまえ」
「っ!?」


 彼女の言葉に満足したのかカルマはニヤっと笑っては彼女の耳元に口を近寄らせて彼女しか聞こえない声でぼそっと囁いては耳のふちに口付けた。

 彼女はまさか耳元で囁かれ、名前を突然呼ばれ挙句の果てには耳のふちに口づけられたことに驚いたのか目を見開くと先程から赤い頬を更に赤くさせていた。
 

「じゃーね、浅野センパイ」
「〜〜〜!!」


 彼女の照れている表情が見れて満足したのかカルマは口角を上げて笑うと手をひらひらと振りながら校舎へと入っていく。

 彼女は文句を言痛げな顔をしていたが叫び声にならない声を発していた。


「ごほんっ、……やっぱりイチャついてるじゃないか」
「学秀!そう見えるのは貴方のクラスメイトのせいよ!」


 2人のやり取りを間近で見ていた学秀は空気と化していたが、姉と姉の恋人がイチャついてる姿に戸惑っていたが、先ほどの空気をぶち壊すように咳払いするとじと目で姉を見ながら言葉を掛ける。

 学秀の咳払いではっと現実に返った彼女はまだ赤みの引かない頬をしながら弟の名前を叫ぶとカルマのせいだとばかりに反論をした。


「……姉さん、顔を真っ赤にして反論しても意味を成さないですよ」
「っ、不意打ち過ぎるのがいけないんだわ!」

 学秀はまるで乙女のように顔を真っ赤にさせて反論する自身の姉に戸惑いながら目を閉じて呆れたように言葉を返す。

 彼女は弟の言葉が正論に聞こえたのか押し黙るがイチャ付いているように見えるという件に関しては自分のせいじゃないと必死に言い訳をし続けた。


「はあ……それより、風紀委員の仕事放置していいんですか?」
「はっ!学秀、ありがとう!」


 言い訳を続ける姉に学秀は深いため息を付いて風紀委員の仕事を放置している姉に忠告すると彼女は学秀の言葉にはっとしては気を取り直して門の外へと歩いていった。


(もう……風紀委員なのに風紀乱してどうするの、私……ああ、もう…いつも赤羽くんに振り回されてる……)


 学秀に言われて自身を心の中で叱りつけるとため息を付いて彼女を振り回すカルマの存在に眉を下げながらも登校してくる生徒達に挨拶をしては制服検査をしていた。


「……とんでもない奴に好かれたな、姉さんは」


 学秀は顔を真っ赤にして戸惑い、振り回されていた姉の背中を見ては姉に同情するような表情を見せてぼそっと呟いたが、それは誰の耳にも届かなかった。



 IF…〜もし、カルマの彼女が浅野姉だったら〜 

―兄弟揃って彼に振り回されてる予感―


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