キミを振り回す人に
(んー、鳥と戯れようと木に登ったはいいけど…タイミングバーッ!!)椚ヶ丘中学校A組にはちょっとだいぶ変わった女の子がいる。
五英傑の次に頭がいいとされる黒髪セミロングの彼女はみょうじなまえ。
どうやら彼女は木に登って鳥と遊ぶ予定を立てていたようだが、彼女が木に登り切ったと同時に二人の男女の影がなまえの視界に入る。
「あの、浅野君…私、ずっと浅野君のことが好きだったの…!」
「…気持ちは有難いけどごめん。君の気持ちにこたえられない」
どこかのクラスの女子と3年A組を代表するであろう人物…浅野学秀がなまえの登っている木の下に立ち止まると女の子は勇気を振り絞るように学秀に告白をするが、学秀は困ったように微笑みながら丁寧に断りを入れた。
「…そ、うだよね…聞いてくれて、ありがとう…」
彼の答えがどういうものになるか分かっていたのか女の子は複雑そうな顔をし、泣くのを我慢するように言葉を漏らしてその場から立ち去った。
(結構かわいい子だったのに…もったいないなぁー…って言っても安心してる自分もいるんだけどね)
降りるにしても鳥と遊ぶにしても難しい状況になったなまえはポケットに入ってた飴をとりあえず食べて学秀が降った彼女の見た目の感想を心の中で呟く。
この本校舎の中で10本指に入るほどの美貌だと思うがそれを断る学秀をなまえはどこかほっとしたような心境で見ていた。
「…で、君はいつまでそこにいるんだい?」
「あーれれ、バレてたの」
告白女子の姿が見えなくなったのを確認してから木の上にいるなまえに問いかけるように学秀は声を掛けるといるのがばれてたと思ってなかったなまえは呑気な声で驚いたように言葉を返す。
「…覗き見とはいい趣味だね」
「私の方が先にいたから不可抗力じゃなーい?」
学秀に嫌味全開で蔑むように言われた言葉になまえは困ったように笑いながら言葉を返す。
「それで君はここで何してるんだい?」
「キミには関係ないと思いまーす」
「……」
学秀はなまえを見上げながら木の上で何をしてるのかと問い掛けるとなまえはツーンとした態度をしながら言葉を返すと彼は黙ってじっと彼女を見た。
「…な、何…あ!惚れちゃった?」
「バカか、君は」
「キミよりはねー」
なまえはじっと見つめられてどもりながら学秀に問いかけようとするがはっとして意地の悪い顔をして別のことを問いかけると呆れた顔をして学秀はたった一言で一刀両断するとつまんなそうな顔をしてなまえは彼の言葉に同意する。
「浅野くんはさー…つまらなくないの?」
「何がだい?」
「んー…人が思い通りに動くさまーって言うのかな?」
「思い通りに動く駒がいたほうがいいだろう」
なまえは器用に木の上で胡坐をかいて学秀に突然問いかける。
彼女の問いかけには主語がない為、何のことを問いかけてきているのか学秀には伝わっておらず問いかけ返されるとなまえは飴を口の中で転がしながら空を見上げて問い掛けの内容を口にした。
その内容を聞いた学秀は何を言ってるんだとばかりにため息を付いて言葉を返す。
「そっかー、残念残念。私と真逆だね」
「思い通りに動かないことほど時間の無駄はないだろう、効率が悪い」
「まあ、そういう考えもあるけど…思った通りと違った方がなんか生きてるって感じしない!?」
「しない」
なまえは学秀の返答に残念そうに頷きながら真逆の思想であることを告げると怪訝そうな顔をして学秀はもっともらしい言葉を吐く。
なまえはその考え方もあるとどういするが、にっと笑って人差し指を掲げてキラキラした目で自分の考えを言って問いかける。
しかし、彼女の考え方は学秀にバッサリ否定されると彼女はかっくりと頭を垂らした。
「じゃ、浅野くんを振り回せる人はどんな人かなぁ」
「ふっ、ボクを振り回す?そんな人物がいるならお目にかかりたいな」
バッサリ否定されたのがなまえにとってつまらなかったのかむっとした顔をしながらとんでもないことを言い始める彼女に学秀はふっと蔑むように笑っては言葉を返す。
そんな人物はいないと言いたいようにも聞こえる。
「ふーん……あ!わ…っちょ、!!」
「な…っ!」
学秀の言葉を聞いてたなまえは生返事をしてかいていた胡坐をやめて木に掛けるように座ろうとするが、バランスを崩して木の上でバランスを崩さないように声を出して揺れていたが、その努力もむなしく木の上から落ちる。
落ちた先は丁度学秀のいる真上のため、突然落ちてくるなまえに驚いて目を見開き彼はぶつかる様に受け止めた。
「「………」」
受け止めて倒れ込んだ学秀、その彼の上に押し倒すように倒れ込んだなまえ。
2人はただ黙ってお互いを見つめ合っていた。
何故なら、なまえが落ちてくる時にふいに唇が重なってしまったからだ。
「……。」
「はやく、ど…っ!?」
なまえは黙ったまま間近な学秀の顔をじっと見つめており、唇を離すそぶりも見せなかったからか学秀は少し唇を離して怪訝そうに自分の上から退く様に言葉を掛けようとしたがそれは途中で遮られてしまう。
何故ならなまえが彼の首に腕を回してまた彼の唇を今度は故意的に塞いだからだ。
「ん!ん!!」
「んー…」
まさかの彼女の行動に驚いて焦って声を上げるが口が塞がれて籠った声しか出ず、薄く開いた口から先程から舐めていた飴を彼の口へと移した。
「!!」
「……あは、浅野くん顔真っ赤」
まさか突然口付けられてその上自身の口に甘いものを移されるとは思ってなかった学秀は驚いて顔を赤くさせる。
なまえはそっと唇を離して彼の顔を見ると真っ赤にしている姿に満足そうに笑った。
「な、なにしてるんだ!!」
「ん〜…実は、キミが好きなんだよねって話」
「言葉にすればいいだろ!!」
学秀は眉間に皺を寄せてなまえに怒るように言葉を彼女に投げかけると彼女は呑気に悪気もなく考えてはにっと笑いながら告白をする。
そんな告白に学秀は彼女に顔を赤くしたまま突っ込みを入れた。
「だって、それじゃ意識してくれないでしょ?」
「っ!!」
なまえはくすっと笑いながら問いかける姿に学秀は言葉に詰まる。
反論できないところを見ると彼女の言葉を肯定しているの同然だった。
「それに、私…キミを振り回す人になりたいなぁって思って」
「……」
なまえは不敵に微笑みながら学秀の上から退くと彼を見下ろして爆弾発言をするが、何も言葉を返せない学秀は黙って彼女を見つめる。
「これからガーンガンアタックするからよろしくねっ♡」
なまえはニシシと悪戯顔をしながら学秀に宣戦布告をした。
キミを振り回す人に
―立候補してもいいですか?―
Request 2018.5.27