木蓮のように
この本丸に来て5年が経った。審神者としてはそれなりに経験を積み、中堅と言ってもいいかもしれない。
そんな私ですが、実は未だに慣れないことがあるんですよ。
それは何か、と言いますと。
顔面偏差値高い男の人です。
エフェクターもないのになんで、あんなにキラキラさせられるの??
漫画やアニメは全然普通に見れます。
だって、そういう物じゃないですか。
主人公とか顔整ってないと物語進まないじゃないですか。
俳優さんや女優さんだって、顔が整って演技力があって、人気があったりで、ドラマに出て演じてらっしゃるじゃないですか。
同じ人間か不思議に思うこともありますが、関わることの無い人種なので正直どうでも良いです。
だって、テレビの人だから関わることないし。
ごほんっ…話が逸れてしまいましたが、私の悩みは身近にいて、尚且つ、関わらなければならない顔面偏差値高い男の人です。
何を隠そう……いや、隠さなくても分かりきってることなんだけど、刀剣男士は非常に顔が整ってるんですよ。
短刀たちはまだ幼さを残してるのでちゃんと目を合わせられるんだけど、それ以外の刀剣男士たちは顔を向けるのも極力避ける事態なんです。
直視したら、気絶してしまうからことは深刻です。
そんな私を理解してくれてる
最早、家族同然の仲です。
目を合わせて会話したいとは思ってるんですが、なかなか合わせられないのが、悲しい現実でして…。
でも、
それが目の端から見えると申し訳なくて、罪悪感で一杯なんです。
だから、その罪悪感から
……正直、直視できるか不安でしかないんですけどね。
◇◇◇
軽装の服が届くと本丸はにぎやかな声が聞こえてくる。
刀剣男士達も新たな服装に照れくさくも嬉しくしているのが、声から分かるのだろう。
庭にある池を茫然見ていた審神者は視線を空へと移すと柔らかく口角を上げた。
「なーに、見てんの?」
「ひゃっ…!」
後ろから聞こえてくる優しい声。
しかし、ずっと一人でここに居たはずなのに、突然声をかけられたことに驚いたらしい。
小さな叫び声を上げると両手で自身の口を隠すようにして息を止めた。
「ふ……くく……っ、」
「……気配を消さないでよ」
次第に笑いを噛みしめるような声が聞こえてくるが、全然噛みしめられていない。
彼女は頬を膨らませてゆっくりと後ろを振り返るが、声をかけた人物の顔を見ることはなかった。
「ごめんごめん。驚いた?」
「驚きました……どうしたの?」
彼女の前にいる人物は赤く、ゆるやかなツリ目、口元の左下にほくろを持ち、耳にはダイヤ型のイヤリングを付けている。
そして、黒髪の襟足の一部を伸ばして胸元で結わえていた。
彼女の初期刀であり、近侍の加州清光。
彼は眉を寄せ、柔らかく微笑みながらも謝罪の言葉を零すと首を傾げ問いかけた。
なまえはふぅ…と息を吐き、目を閉じてはコクリと頷く。しかし、どうしてここに来たのか分からなかったのだろう。
彼女は視線を清光の胸元に向け、顔を見ないようにしながら、問いかけた。
「んー、軽装姿を見せに来た。ど、似合う?」
「に、似合ってるよ」
清光は腰に手を当て、彼女の問いに答えると今度は彼が問う番らしい。
なまえはぎこちなく、それに対して答えた。
彼女は清光の顔を見ることなく、加賀五彩の臙脂、黄土、草、古代紫の四種の色に椿をあしらった着物は彼女の目に移す。
美形は何を着ても似合う。
それが分かっているからだろうか。
いや、ただ単にイケメンに目が向けられないだけだろう。
「ちょっと俺のことちゃんと見てる?」
「み、………見てる」
彼は眉を寄せ、じと目をなまえに向け、言葉をかけるが、彼女はちらっと一瞬、清光の顔を見てはすぐさま顔をそらした。
一応、一瞬だが、見たことには間違いないだろうが、それで納得するものなど果たしているだろうか。
「……やっぱり、まだ俺のこと見れそうにない?」
「………頑張ってはいるんだけど……イケメンすぎて…!!」
悲しそうな、少し残念そうな表情を浮べながら、清光が問いかける。
なまえは視線を泳がせると両手で顔を覆いながら、嘆くように言葉を吐き出した。
「はぁ……それは知ってるけど、いい加減…初期刀の俺くらい見れるようになって欲しいんだけどなぁ」
「常々、私もそれを思ってるんだけど…出来たら、苦労してないのだよ。清光くん」
彼は腕を組み、軽く息を吐き出しつつ、冗談ぽく言葉を漏らすと彼女は遠くを見つめるながら、悟ったかのように言葉を返す。
「……ねぇ、主」
「何?」
清光は何かひらめいたのか。
目を見開くとニッと口角を上げ、なまえに呼びかけると彼女は不思議そうにこてんと傾げた。
「俺の手を見てて」
「ん?う、うん??」
「いいから、いいから」
「…………!!」
彼がぎゅっと握った右手を自分の足元目の前に出すと彼女は唐突なことについて行けず、頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、差し出された右手をじっと見つめる。
清光は右手に視線が向いてることを感じながら、ゆっくりとそれを自分の方へと引き寄せた。
どんどんと上がる右手はいつの間にか襟巻の元まであがっていることに気が付くと彼女は驚いて、目を見開く。
彼女が驚いたのは無理もない。
涼風今まで胸元まで見たことはあっても首元まで視線を持っていけたのは初めてのことだ。
「ねぇ、見れない?」
「………」
少しの成長にふっと笑みを浮かべると清光はもう一度、問いかける。
それは切なる願いにも聞こえる問いかけだった。
彼女は緊張からごくりと固唾を飲み込むとゆっくりと、襟巻のそばにある右手から上に視線を上げていく。
「……やっと、目が合ったね」
「………うん、やっと、見れた」
瞳に映し出されると彼は優しく、嬉しそうに頬を赤らめて言葉を紡いだ。
彼女は気絶しないようにすぐそらしてしまうが、今は目をそらすことなく、彼を見つめ続ける。
ずっと願っていたことが達成され、嬉しさから目頭を熱くなっているせいか、瞳をゆらゆらと揺らしていた。
「へへっ、どう?似合う?」
「うん……似合う、似合うよ」
目を細めて、笑う彼はもう一度、問いかける。
五年。
長い歳月を共にしてきた仲間に目を合わせることが出来ずにいた彼女は初期刀である清光に一番、罪悪感を感じ続けていたのだろう。
克服できた。
それが彼女の胸をじわじわとあたたかいもので満たすとうんうんと頷きながら、彼の顔をじっと見続け、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「ふふっ……」
「え、何?どうしたの?」
「清光の後ろに木蓮が咲いてるからなんか絵になるなって思って」
なまえは瞳に映るものに思わず、笑みを零すが、どうして笑っているのか分からない彼はきょとんとした表情を浮べ、問いかけた。
咲いている淡い赤い色をした木蓮を背景に襟巻の元に手を近づけたまま、首を傾げる清光が綺麗に見えたのだろう。
「え?そう??」
「うん、ずっと待ってくれてありがとう」
「どーいたしまして」
思ってもいない感想が飛び込んでくると彼は不思議そうにより一層首を傾げると彼女はその姿が可愛らしく見えたのか。
口元に手を寄せ、頷くと清光にお礼を口にする。
ずっと変わりたくて、変われなかった自分を変えてくれたのは初期刀として、近侍として支えてくれている清光。
木蓮のようにじっと忍耐し続けた彼はこの本丸に顕現して、一番綺麗な笑みを浮かべて自身の主の感謝の言葉を受け止めたのだった。
Twitterコラボ作品
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<あとがき>
Twitterで仲良くさせて頂いているフォロワーさんにイラストを描いて頂き、それに合わせて小説を書くという素敵コラボをさせて頂きました。
その時に書かせて頂いた小説になります。