イタチとにゃんこ。




『イタチさんって、たまに猫っぽいよね。』


とある日常の昼下がり。

うちはサスケと二人で、池の畔で日向ぼっこをしていた時、ふと彼女かポツリと零した。


「あー…。イタチはなぁ……。」
『え、それひどくない?実の兄だろ、サスケ君よ。』
「別に。兄だからって遠慮しなくて良いし。それより、イタチと居るなら、気を付けといた方が身の為だぞ。」
『何で…?』
「うちはが猫っぽいのは確かだが…イタチも男だぜ?オスだよ、オス。噛み癖あるから、まっ、気ぃ付けるこったな。」
『マジでにゃんこみたいだな、イタチさん…っ!』


驚きの事実を知り、ちょっぴりときめいた律。

―すっかり陽も暮れた時間。

夜の帳が降りた頃…。

鈴虫が鳴く秋の夜長を縁側で過ごしていた、イタチと律の二人。

のんびりと静かな刻の流れに身を任せていると…。

隣に座っていた彼が、のそりと動いて、脚の上に頭を乗せてきた。

まさに、ひざまくらーんな状態。


『イタチさん…?』
「ん…。」
『眠いんですか?』
「…いや、そうではない…。」
『じゃあ…甘えたがり…?いや、お暇ですか…?』
「…律は、俺と違って、柔らかくて気持ち良いな。」
『んー…。それは、私が女だからじゃないかな…?まぁ、筋肉ガチムチにはなんないよねー。なりたくねぇし。』
「うん…。」


適当に、横になった彼の髪の毛を弄くって遊んでいると…。

ふいに、指を食まれ、はむはむされた。


『おぅふ…っ。』
「ん…?」
『甘噛みってか。にゃんこだなぁ、本当…。イタチさん、それ可愛過ぎますよー。』
「可愛いのか…?」
『もう遅いので、そろそろ寝ましょうか〜。』


そっと起き上がった彼を横に、もそもそ立ち上がった律は、部屋に布団を敷き、就寝の準備を始めた。

ぽふんっ、と広げてから、ぺひぺひと叩きつつ、綺麗に皺を伸ばしていく。


『イタチさんのも敷きましょーか…。』


自身の布団を敷き終え、彼の布団に手をかけた時、ふいに首の後ろを食むられたかと思えば、そのま体重を掛けられ、べしょりと敷いていた彼の布団の上に倒れた。

まるで、発情期の雄猫が雌猫に好意を抱いた時にする、マウントのようだった。


『…………。』
「………?」
『………いや…。』
「どうした…?」
『いやいやいや…そりゃ無いでしょ、イタチさん…っ!?完璧猫じゃないですか、それ!マウント状態ですよ!』
「マウント…そうか。」
『え…っ。』


何を納得したのか、一つ頷いた彼は、彼女へさらにのし掛かった。

『あのっ、イタチさん…重い…っ。』
「………律と居ると落ち着く…。良い匂いだ。」
『はぁ…。あの…それは良いんですが、重いです…。』
「……寝る。」
『…さいですか。…って、えっ?このまま……?』
「おやすみ…。」
『お、おやすみなさい…っ。』


何故か上にのし掛かられたまま、腹に腕が回ったかと思うと…。

そのまま寝入る体勢に入ったイタチ。

律は、肩口に顔を埋められ、抱き込まれたまま、固まっている。


―正直、乗っかったまんまは重いし、キツイですよイタチさん…。


しかし、身動きが取れない為、そのまま寝入るしかない律である。

自分の布団も敷いていたが、意味も無く…彼の腕の中で夜を過ごした。

朝方、目を覚ましたら、端正な顔付きが目に入り驚いた。


「おはよう、律。よく眠れたか…?」
『…お、おはようございます…。よく眠れました…。』
「昨日はすまなかったな。結局あのまま寝てしまったからな…寝づらかっただろう?」
『あ、いや…えと、そこまでではなかったと……。』


まさか、朝チュンまで彼の腕に抱かれたままだったとは…。

何気に熟睡してしまっていた自分が恐ろしい。

どうして、人肌の温もりに触れていると、こんなにもぐっすり眠れてしまうのか…甚だ不思議である。


執筆日:2016.09.19

|
…BackTop…