仲良しプリン




ふと、社会人になる前の学生時代の頃の想い出を思い出して、コンビニへ行った。

偶々、気まぐれに「プリン食べたいなぁ〜。」なんて思ったからだ。

丁度、仕事先からの帰り道に一、二軒コンビニがあるから、いつもよく寄る方へと寄ってみた。

入って早速、お菓子コーナーを巡って、スイーツコーナーへと回り、並んだ商品を眺めた。

そして、目的のプリンを見付け、人気商品なのか最後の一つとなったそれに手を伸ばした。


「ラスイチ、俺のプリン…!」


途端、誰かの声と自分の手に知らない手がぶつかる。

「え?」と思って、伸ばされた手の先を見遣ると、背の高い男の子が居た。


「ん…?何、アンタも王様プリン欲しいの?」
『え…っ?いや、久し振りに食べたいなぁ〜なんて思った程度ですから、良いですよ。君に譲ります。コンビニのプリンぐらいなら、何時でも買えますから。』
「そうなの…?やったぁーっ!最後の一個ゲットー!!あ…でも、アンタも食べたかったんだよな?ごめん。」
『い、いえ…っ!気にしないでください…っ!!偶々、仕事帰りに寄っただけですから…!』
「んー…でも、アンタも食べたくて買いに来た訳だし…。」
『良いんですよ、私は…!甘いスイーツなら、他にもありますから、甘い物が食べたければ他のを買えば良いだけですし!それに、ただ甘い物が食べたいだけだったので…っ!このプリン、お好きなんでしょう…?なら、君にあげます。』
「うーん…。それだと、何かアンタに申し訳ない気がする…。」
『大丈夫ですって…!君に譲ります。だって、君、たぶん学生さんでしょう?』
「え?あ、うん…。何でんな事分かったの?俺、今制服着てなくて私服なのに…。」
『んーっと、こう言っちゃあ失礼かもしれないけど、言動と服装かな…?社会人の人は、知らない人に対しては大抵敬語で話しかけてくるから。それで、もしかしたら学生さんかなって。学生さんなら、私より年下になるからね。優しくしなきゃ。』
「へぇ…。よく見れば、アンタ、スーツ着てるな。まぁ、譲ってくれるって言うんなら、ありがたく俺が貰うよ。」
『うん、どうぞ。』


そう言って、灰色のパーカーを着た男の子にプリンを譲って、隣にあったミニの抹茶ケーキを手に取ってレジへと持っていく。

同じく、嬉しそうにプリンを手に取った男の子も、空いていたもう一つのレジに並ぶ。

そうして、目的の甘い物とは違ったが、しっかりとスイーツを購入して帰路に着こうとコンビニを出たら、さっきの男の子から話しかけられた。


「なぁ、アンタ、ちょっとだけ訊いて良いか…?」
『はい…っ、良い、ですけど…?』


何だろうかと不思議に首を傾げて男の子の方へと向き合う。


「あのさ、何で今日プリン買おうと思ったの…?」
『え…っ?』
「あ、別に、言いたくないなら言わなくても良い…。単に、俺が何か気になっただけだから。」


そう言って、男の子は気まずそうに後ろ首に手を当て、目を逸らす。

何だか、不思議と可愛く思えた。


『私が、今日プリンを買おうと思ったのは、昔の事を思い出したからです。』
「昔の事…?」
『ええ。まだ私が学生だった頃、体調を崩して学校を休んでしまった時、お見舞いに来てくれた先生がプリンをくれたんです。その時、凄く嬉しかったのと、食べたプリンが凄く美味しかったから…またあのプリンを食べてみたいなぁって思ったんです。それで、帰り道にあったコンビニに寄ってみたんですよ。まぁ、あの時食べたのもたぶんコンビニで売ってた物かな?って感じの気持ちぐらいでしたから、君に譲ったんです。コンビニのプリンだったら、また買いに来れますからねっ。』
「…やっぱ、コレ、アンタにやるよ。」
『ええっ!?い、良いですよ!私のはちょっとした気まぐれに思っただけですから…っ!!』
「本当に良いのか?俺が貰って…。」
『はい…っ!私は、もうケーキという別の甘い物がありますから!』
「うーん、分かった。この王様プリンは俺が貰う。けど、今度逢った時は、御礼させて。」
『え、い、い良いですよ…!!御礼される程の事してませんから!』
「でも、このままじゃ俺の気が済まない…。次逢った時、俺が王様プリン一個奢ってやる。それで良いだろ?」
『え…でも、学生さんに奢らせる訳には…っ。それこそ申し訳ないですよ…!』
「俺が良いって言ってるんだから、良いんだよ。それでなんだけど…アンタの名前、訊いても良い?俺、まだ訊いてなかったから。」
『あっ、はい…!えと、私の名前は、黒柯律って言います!君の名前は…?』
「俺は、四葉環。アイドルやってる。」
『え…っ!?アイドル!?』
「うん、そう。まだデビューしてないけど…ライブ活動とかしてるから、良かったら見に来てよ。あ、そういやチラシ持ってたな…何処やったっけ。えーっと、あ、あったあった…。はい、コレ。今度やるライブのチラシ。まだあんまり名前知られてないから、知らないかもしんないけど…“IDOLiSH7”って言うんだ。良かったら、来て。俺、ダンス超頑張るから…!」
『アイドリッシュセブン…。うん、分かりました!仕事があるから、行けるかどうかは分かりませんけど…時間に余裕があれば、見に行きます!環君が歌って踊るところ、楽しみに待ってますね!』
「おう…!そんじゃ、またなー!」


そうして、不思議と結ばれたご縁で、知り合いに、学生さんなアイドルの男の子が加わったのであった。


「あ…!あの時プリン譲ってくれた人だ…!!」
「え…?プリン…?」
『こんばんは、環君。今日のライブ、素敵だったよ!皆格好良いね!ダンス凄かったよ…!!』
「へへへ…っ。見に来てくれてありがとな!あと、敬語無い方が話しやすくて良い。」
『え?あ…っ!?ご、ごめんなさい…!!年下だって思ったから、ついタメ口に…!!』
「いや、この間の時より、そっちの方が良い。喋りやすいし、あと何か可愛い。」
『へ…っ!?』
「おい、コラ!どさくさに紛れてお客さん口説いてんじゃねーよ、馬鹿!!」


その瞬間、背の小さいお仲間さんにどつかれる環君だった。


執筆日:2018.05.21

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