合法的にホップ君のお義姉さんとなる権利を獲得した!!




※此れを書いた作者は、ニワカ知識にて執筆しております。
※基本的に二次創作から得た知識と捏造諸々で構成したお話です。
※細かいところには目を瞑る、もしくはスルーして頂けましたら幸いです。
※尚、履修済みアニメシリーズはAG/BW/BW2/XY/XYZのみ、原作ゲームは一切履修しておりません(一応、剣盾のみ実況動画を視聴済み)。
※以上を踏まえた上で、どうぞ。


 とある日のお日柄も良い昼下がりの事だ。
 手持ちポケモンのお散歩がてら街を歩いていたら、現チャンピオンであるダンデ氏と遭遇した。飛んでもない有名人と偶然にも遭遇するとか、こんな機会滅多に無いだろう。勇気を出して声をかけてみれば、なんと彼は絶賛迷子中との事であった。
 そういえば、の凄い人は、天性の方向音痴なんだとかいう話を何処かで見聞きしていたっけか。仮にどのくらいのレベルなのかと言うと、同期のジムリ仲間であるキバナ氏が“壊滅的”と評価する程に酷いんだとか。成程、確かに言えている。
 今自身が居る現在地はナックルシティ寄りの通りだったが、彼が目指している方向は真逆だ。恐らく、このまま放置してはあらぬ方向へと進み兼ねない。というか、疑いすら持たず此処まで来てしまったところを見るに、近くまででも良いから誰か道案内を買って出た方が良さそうだ。でないと、ほぼ確信している事だが、間違い無くこの人は間違いに気付かぬまま真反対の方向を突き進み続けてしまう。
 何の身分も持たない庶民の自分なんかが買って出るのも烏滸がましい気がするが、「良かったら途中までご案内しましょうか……?」とおずおずと申し出てみたら、彼は破顔して「其れは助かる! 是非お願いするぜ!!」と快活なお返事をくれた。笑顔が何処までも眩しくて、一瞬目が潰れたかと思った。

 そんな出来事があってから、度々彼の方向音痴に出会しては道案内をするという機会が不思議と重なり。顔を会わせる回数が重なる毎に会話も増えたので、その内親密度もいつの間にか上がっており……。気付けば、友人と称すに等しいくらいには親しい仲となってしまっていた。本来、コミュ障でそんなに会話は弾まない方なのだが、彼とは何故か話しやすい気がして、いつもなら話さないであろう事までも話してしまっている感じである。其処で思う……。
(流石、コミュ力お化けやん……っ。コミュ障患ってるせいで対人すると極度に緊張しちゃう筈なのに、その緊張と警戒をあっさりと解いちゃうなんて……コミュ力お化けは凄いなぁ〜)
 そんなこんな、彼と初邂逅を果たして知り合ってから早くも幾月が経ち。
 またもや道に迷ってしまった彼の道案内役を担っていると、ふとこんな会話になった。
「恐らく、君も既知の事とは思うが、俺には弟が一人居てな! 此れが可愛くて仕方ないくらい自慢の弟なんだ! ちなみに、名前は“ホップ”と言って、君の事を話したら是非とも会いたいとの話になったんで、今度時間のある日にでも良かったらウチの弟と会ってくれないだろうか? 俺としても、こんなに何度も世話になっておきながら何も返せずのままというのも心苦しい。近い内に何か御礼をしようと考えているんだが、其れとはまた別に……毎度懇切丁寧に道案内してくれる君に紹介したいと予てより思っていてな! ……その、君さえ良ければ、なんだが……っ」
「えっ。一介の庶民たる私なんかがお会いしても宜しいので? というか、本当の本気で仰ってらっしゃる……??」
「ああ! 俺は何時いつでも本気だぜ!!」
「はぁ……っ。じゃ、じゃあ……今度そちらの時間がある時に……。私は基本何時いつでも空いてますが、チャンプはお忙しいでしょうからね。お互い都合の付く日に、という事で如何でしょう……?」
「良いのかっ!?」
「えっ? 良いも悪いも、そちらが言い出した事でしょう……? 私は別に構いませんよ。何方かと言うと、弟さんにどのように私の事を話していたのかの方が気になりますし」
「有難う!! ホップの兄として良い顔が出来そうで俺も嬉しいっ!! では、次の日曜の午後、今と同じくらいの時間に、いつも会う場所で会おう!! はははっ、今から楽しみで仕方ないなっ!!」
「現在進行形で会ってるのに、もう次の会う日を楽しみにするなんて子供みたいな人ですね、チャンプって……」
「おっと、呆れさせてしまったかな?」
「いえ、一周回ってチャンプらしいかと。貴方は、そのままで居れば宜しいのでは……? その方が屹度きっと、自然体らしく在りの儘の貴方として映って好ましいと思いますよ。まぁ、飽く迄私個人の意見です故、参考にすらならないかと思いますが。いや……言っときながら今更ですが、今のは流石に出過ぎた真似でしたかね……? 私なんかが口出しするような事でもありませんでしたね。忘れてください」
 うっかり口が滑って思った事をそのまま口にしたら、彼はポカン……ッと口を開けたまま一寸の間呆けたかと思うと、次の瞬間には何時いつぞや見た時みたいに眩しい笑みを見せて破顔した。相変わらず、彼の笑顔は太陽みたく眩しくて慣れない……。
 そうこういつも通り目的地の近くまで送り届けてから別れ、約束の日までの時間を普段とは少し違う心地で過ごす。
 尚、いつもは道案内しながら軽く駄弁るだけで終わる時間が、この日だけは違って、別れ際に彼と連絡先を交換するというイベントが起きた。身内と数少ない友人と遣り取りをするのに使っているメッセージアプリのIDを交換するというヤツだ。其れも、偶にしか使っていないレベルだったが。この日、初めて有名人である知り合いの連絡先を手に入れてしまった。しかも、ただの有名人とは格が違う、現チャンピオンという称号を持つど偉い人との連絡先だ。何度も登録画面とメッセージ画面を見返しては夢なんじゃないかと目と記憶を疑った。取り敢えず、定番のほっぺをつねる流れは疑う度に試して痛い目を見た。つまり、夢じゃない。コミュ力お化け凄いの一言に尽きる。

 ――そうして、あっという間に時間は流れ、約束の日の当日。
 何故かいつも迷子になった彼と必ず遭遇する場所へ行くと、相棒であろうリザードンと仲睦まじい様子で待っていた。此処にレフ眼カメラがあったなら、迷わず被写体として収めていたくらいには目の保養になる絵だった。何なら、動画でも回していたかったくらいには最高のムービーが撮れただろう。後で誰かカメラ回していなかったかSNSを検索しよう。
「お待たせしました。今日は迷われなかったんですね」
「ああ! 今日は相棒のリザードンが居たからな!」
「其れなら、いつも連れ歩けば迷子癖も解決出来て困らないのでは……?」
「あ゛〜……ッ、其れは……ちょっと困るんだぜ……! 迷わなかったら、君とは会えないだろうからな……っ」
「はて。私と会えないと困る事でもあるので?」
「あるっ!! 君と会えないとなると、俺的には凄く困る!! 何故なら、俺は君の事が好きだからなっ! 此処だけの話なんだぜ……っ!」
 なるべく不自然にならないようにと意識して、軽く挨拶からの会話を投げたつもりが、飛んでもない爆弾を食らわされた。驚いて二の句が継げないどころか、暫く宇宙猫と化して放心するくらいにはおったまげた出来事である。
 この人、誰にでもこんな風に喋っているのだろうか。其れは其れで逆に凄い。勘違いからの炎上とか、主にそっちの方面で心配になりそう。まぁ、この人は良くも悪くも裏表の無い人だから、誤解さえ生まなければ何とかなるのだろうか……。否、周りの保護者が何とかするんだろうなぁ。
 気付けば、放心したまま目的地へと到着しており、彼の住まいだと言うご自宅へお邪魔する事となった。えっ、そんないきなりお宅訪問しちゃっても良いのか??
 彼の押しの強さに圧倒されるまま家の中へと上がらされ、その上リビングにまで通されてしまったのだが。えっ、今日は命日か何かか?? “自分、今すぐ死ぬのかな?”との感想を抱いたのは許されても良いだろう。其れくらいには大層驚いたのだ。まさかのご自宅に連れて来られるだなんて思ってもみない事だろう。
 自分は、ただの迷子チャンプを一時的に保護した流れで安全な場所までお連れしているだけであって、其れ以外は何の繋がりも無い存在だ。身分も何も持たない一介の庶民の自分が、何故彼のご自宅なぞに招かれているのか、とんと分からない。いや、目的がある事は知っている。彼の弟さんであるホップ君とやらと会う為だ。しかし、其れ以外は何が……??
 先程からずっと混乱し続けている自分を放って、彼は話を進めていく。
 リビングのソファーで大人しく待っていたと思しき、彼とそっくりなお目々をした少年が立ち上がるのと同時に彼より紹介を受ける展開となる。
「ホップ、紹介しよう! 此方が先日話した、いつも俺が迷子になったのを助けてくれる心優しい女性の律さんだ!」
「初めましてこんにちは、律さん! いつも兄がお世話になってます!! 弟のホップです! 今日は、俺の我が儘を聞いて来てくださって有難うございます……っ!!」
「こ、此方こそ、ご丁寧にどうも……っ。何故か不思議とお兄さんをお世話させて頂いております、律と言います……っ?」
「はははっ! 律さんは緊張しいだから時々言葉に詰まる事があるが、とっても優しくて愛らしい人なんだぜ! 俺の自慢の友人さ!!」
「あのぉ、兄が迷惑な事したりとかしてませんか……っ? 嫌な時は嫌って言ってくださいね!」
「おいおい、そりゃ無いぜホップ〜! 俺は、いつもちゃんとしてるぞ!!」
「本当にちゃんとしてたら、毎度毎度迷って律さんのお世話になったりなんてしないだろっ!」
「はははっ! 其れを言われちゃあお終いだなぁ!!」
「ったく、その迷子癖どうにかしろよなぁ〜っ? 何の為のリザードンだよ?」
「ッシィー!! 其れは俺達の間だけの内緒だって言ったろう!?」
「いや、今更……っ。たぶん、バレてると思うぞ?」
「そうだったのか!? 俺は、まだ何も言われてないから、てっきりバレていないものと……っ!」
「相手が良い人で良かったな!」
 ふわふわもこもこのウールーを抱いて喋る弟さんは、端から見ても其れは其れは大層可愛らしい光景であった。よって、ご兄弟間での軽口を叩いたりとの流れを見守りつつ、内心はカメラを構えて動画を撮りたい気分に陥っていた。何だ、この可愛い生き物。可愛いが可愛いを抱いて喋っている。最早可愛い以外の語彙力を失う。尊さ極まれりとは、この事だったのでは……?
 仲の良いご兄弟の会話がなされている手前で言葉を失って口元を覆い隠していると、最初の挨拶以降口を利かず黙り込んでいる此方を気遣ってか、チャンプがオロオロと少し慌てた様子で顔色を窺ってくる。
「ど、どうしたんだ……っ? 気分が優れないのか? 大丈夫か?」
「だっ、大丈夫ですので、お気に為さらず……!」
「しかし、何かあっては大変だ! 此処まで其れなりの距離を歩かせてしまったし、今日は日差しも強かったから気分を悪くしてしまったかもしれない……っ。すまない! つい、君に会える事が嬉しくて一人舞い上がって、浮かれ過ぎていたな……っ」
「あ、いえっ、本当に体調の方は大丈夫ですので、ご心配為さらず……っ! ちょっと、動揺を抑え切れずが故の無言ムーヴをかましてしまっていたというか……っ、そんなアレですんで、兎に角ご心配には至りません!」
「そっ、そうか……っ! 其れは安心したんだぜ! 初めての相手に緊張していただけだったんだな! 其れなら、徐々に慣れて行けば良いだけの事だから心配無いな!!」
 何やら力一杯な励ましと応援のお言葉を頂いたが、別に弟さんとの距離感を悩んでるとかそういう問題では無かった為、曖昧な笑みを浮かべる事で誤魔化した。違うんだ。誤解を招くような態度を取ってしまって申し訳なく思う。
 取り敢えず、早急に誤解は解いておいた方が良かろうと、もしょもしょと本当に言いたかった事を口にしてみる。
「あ、あのっ……僭越ながら申し上げたい事があるのですが、宜しいでしょうか!?」
「うんっ!? 構わないが……何だ? あと、先に言っておくが、そんな堅く畏まらなくっても良いぜ! 俺と弟相手だしな! もっとリラックスして話して欲しい!!」
「ひょえッ……で、では、お言葉に甘えて一つお願いしたい事があるのですが……っ!」
「俺に出来る事なら何なりと言ってくれ!」
「あっ、あのっ……! お宅の弟さんを一度ギュってハグしても良いですか!? アッ、セクハラとかそういう意図は全く無く……っ!! お話には聞いておりましたが、実際にお会いしたら、あまりの可愛らしさにちょっと情緒が爆発してしまったと言いますか……っ! 兎に角可愛いが渋滞してしまって、漏れ無く語彙力消失してしまうくらいにはメロメロ状態に陥ってしまったんですが……っっっ!! ……ど、どうしたら良いのでしょう??」
「あーっと……友好の証にホップをハグしたい、という事なら全然構わないが?? 寧ろ、そんな丁寧に許可を取らなくっても、ホップも言えば普通に許してくれると思うぜ??」
「あっ、有難うございます有難うございます……っ! まずは、お兄様たるチャンプにご許可を賜った方が宜しいかと思った次第でして……! ホップ君、いきなり出会い頭にハグとか御免ね!! 嫌なら突き飛ばしてくれて構わないから……っ!!」
「えっ!? いや、突き飛ばすなんてそんな、女性に失礼な事しないぞ……っ!」
「う゛ぅっ……! ご兄弟揃って優しいのね、尊い……っ!!」
 動揺から何か色々と口から零れていった気がするが、構わずホップ君を優しくギュってさせて頂いた。彼の相棒だろうウールーを抱っこしたままの状態でギュってしたので、ウールーは腕の中で押し潰されるみたくなってしまって申し訳ないが、取り敢えず現状に満足した。
 一先ず御礼を言って離れ、どさくさに紛れて一人と一匹の頭も撫でさせて貰い、元の位置まで戻る。すると、一部始終を見守っていた兄のダンデ氏が朗らかな笑みを浮かべて問う。
「どうだ? 俺の弟は可愛い奴だろう!」
「えぇ、其れはもう……っ。超絶可愛過ぎて弟に欲しいと思ったくらいです!」
「そうか! 其れは予想外の感想で驚いたが、凄く嬉しいんだぞ!! 其れだけ俺の弟を気に入ってもらえたという事に他ならないからなっ!! その、これから俺が口にする事は、一つの提案として聞き流してもらいたいんだが……! 俺と結婚したら、事実上君はホップの“義理の姉”という事になり、ホップは君の弟にもなる訳なんだが……君はどう思うっ?」
「何ソレ天才か?? 私なんかがホップ君のお義姉さんになっても良いと?? 合法か?? 合法なのか??」
「何やら混乱しているようだが、今の言葉は“イエス”という返事として受け取って良いものなのか?」
「合法的にホップ君のお義姉さんになれるのでしたら、喜んで……!!」
「本当かっ!? ならば、正式に交際を申し込まなくてはな……っ!! 君さえ良ければ、俺と結婚前提のお付き合いをしてくれないか!?」
「不束な者ではございますが、何卒宜しくお願い致します!!」
「良かったな、アニキ!! 何か展開が早い気もしなくもないけど、取り敢えずはおめでとう!! 此れで晴れてカップルだぞっ!!」
「嗚呼!! ホップの助力のお陰だ!! 有難うっ!!」
「という訳なので、ホップ君、これから私の事は“姉さん”でも“アネキ”でも好きに呼んでね!」
「うん! 取り敢えず、慣れるまでは“律さん”って呼ぶ事にするよ! これからアニキの事、末永く宜しくお願いします!!」
「よく出来た弟さんぎゃわいいッッッ!!!!」
 斯くして、私しがない一般庶民こと律は、合法的にホップ君のお義姉さんになれるという条件から、ダンデ氏の婚約者ポジションに昇格致しました。
 可愛いは正義! 此れは絶対だ、良いね?


執筆日:2023.08.10
加筆修正日:2023.09.22

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