腹ペコリーヌと中秋の名月




※此れを書いた作者は、ニワカ知識にて執筆しております。
※一応、アニメの一期と二期は穴空きで履修済み、原作の方は一・二巻のみ履修済みです。
※尚、当作品は、作者の自己満且つ俺得構成より成り立った作品です。
※以上を踏まえた上で、どうぞ。


 季節は秋めいて、あんなに暑くて萎えていた食欲も増し、食べ物という食べ物が美味しく感じ始める頃。とあるマジロも食欲の秋を満喫するかのように、今宵も主人が作った料理を食していた。
「お〜、何だか美味そうな物食べてるじゃないかジョン。其れ、ドラルクが作ったんだろ? お月見団子とは風流だねぇ」
「ヌシャヌシャ」
「美味いか?」
「ヌーッ!」
「ドラルクは私と違って料理上手いもんなぁ〜。今日も美味しい料理食えて良かったなぁ、ジョン!」
「ヌヌンッ!」
 此処だけを切り取れば穏やかな場面で終わったのだろう。しかし、腹ペコリーヌな彼女相手では、そうも行かなかったのである。
 大好きなご主人様が作ってくれた料理をご機嫌な様子で舌鼓を打つジョンに向かって、ニコニコとした笑みを浮かべて言い放つ。
「うーん。何か、美味そうに食べるジョン見てたら……ジョンが美味そうに思えてきたわ」
「ヌ゙ゥ゙ーッ!?」
 サラッと飛んでも発言をかました彼女に危機感を覚えたジョンは、悲壮感漂う悲鳴を上げた。其れを聞き付けた飼い主がキッチンからひょこりと顔を覗かせて訝しげな表情で呟く。
「うん? ジョン……キミ、もしやまた太ったんじゃないかい? お腹回りが前回確認した時よりもふくよかになっているような……っ」
「ヌ゙ァ゙ッ……!?」
「そういや、律の奴がジョンの事見て美味そうって発言する時、いつもジョン丸くなってるよな……腹が」
「ヌ゙ッ……!!」
「最近は寧ろ、律君が“美味そう”発言したらジョンのダイエット期が来たんだな〜と把握するようになったぐらいだ。よし、ジョン、今日はもう其れぐらいにしておきなさい。其れ以上ポチャって本当に律君に食べられてしまっては敵わんからな」
「ヌ゙ヌ゙ーッ!!」
「あ゙ぁ゙、コラッ、ジョン! 良い子だから、私の言う事を聞きなさい! 明日またとびっきり美味しい御飯作ってあげるから……っ!!」
「ヌ゙ゥ゙ーッ!! ヌ゙ォ゙ヷァ゙〜……ッ!!」
 折角せっかく楽しんでいた料理を取り上げられると分かった瞬間、良心に訴えかけるような悲壮な声を上げて抵抗するジョン。だが、其処は脳筋な相棒の出番である。意外と力の強いジョンに勝てないドラルクの代わりに、ロナルドがあっさりお月見団子の盛られた大皿から丸い塊を引き剥がした。そうして、ご主人様たるドラルクへと返還されるまでがテンプレなのだ。
 手渡されたジョンのボディーを触って確認すれば、成程……コレは明らかに肥えてしまっていると分かるくらいにはモチモチボディーと化していた。こんな状態では、彼女に“食べ物認定”されてしまっても仕方あるまい。
 ドラルクの手に渡っても尚食べ物を目の前にした獣と同様に爛々と眼をギラつかせている律を落ち着かせるべく、大皿にまだ大量に残っていたお月見団子を片手で取れるだけ鷲掴んだロナルドは、そのまま彼女の口へと押し込んだ。所謂、応急処置的なヤツである。空腹状態に陥っている彼女を大人しくさせる方法は、ズバリ何かしらの食べ物を与えておけば良いのだ。そうすれば、幼子同様に途端に大人しくなるのだ。
 「モガッ!」と些か乱暴に押し込まれたにも関わらず、ドラルクの美味しい手料理を口にした途端、花を飛ばして蕩けた笑みを浮かべる。その様子にガッツポーズを決めたロナルド、横で彼の手腕を傍観していたドラルクは感嘆の声を上げて評価した。
 一方、食べていた物を取り上げられたジョンは、悲しげに涙を流してドラルクの胸元で彼のスカーフをしゃぶっていたのであった。


執筆日:2023.09.18
公開日:2023.09.20
加筆修正日:2023.09.20

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